ハナの夢
孤児院に預けられて7年が経ち、10歳となったハナ。彼女は雫の騎士団直営のレスティーンスクールに孤児院から通っていた。しかし、未だ母親に会えない始末だった。
レスティーンスクールの10歳学級で、学徒達は自分の夢について順番に発表をしていた。剣闘士になる夢や農家や漁師になる夢に雫の騎士団に入団する夢等様々であった。
「はい、ありがとう。次はハナの番です。」
担任の女性教諭はハナに教壇に立つよう促した。ハナは作文を手に教壇の前に立ち、読み始めた。
「あたしの夢は、金持ちと結婚する事です。金があると将来が安心だからです。あたしは幼い頃、スラムで生まれ、ママと二人で貧しい生活を送ってました。ママはあたしが寝ている夜に金を稼いであたしを育ててくれました。しかし、ママが帰ってこなかった日、あたしは雫の騎士団に保護され、孤児院で暮らす事になりました。あたしはあの日から一度もママに会ってません。だから、今は色んな事を学んでいつかママに成長した自分を見せてあげたいです。終わります。」
ハナの発表が終わり、教室に拍手の音が響き渡った。
学務を終えて孤児院に帰ってきたハナは掲示板に目を通した。
『ハナへ、学校から戻り次第応接室に来るように。院長』
と掲示板には書かれていた。ハナは応接室に向かった。
ハナは応接室の扉をノックした。
「ハナです。」
「お入りなさい。」
「失礼します。」
ハナが入室すると、マキュリーナと院長が座っていた。院長は老年のシスターでベテランの風格を持っている。
「お久しぶりね、ハナ。お元気だったかしら?」
マキュリーナはハナに挨拶をした。
「…はい…、マキュリーナ様…。おかげ様で…。」
ハナは戸惑いながらも返事した。マキュリーナは彼女に席に座るよう促し、彼女は席についた。
「ハナ…、あなたの母から手紙よ…。」
マキュリーナは書簡をハナに渡した。
「はい…。(ママ…。)」
ハナは書簡から手紙を取り出し、読んでみたのだった。