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異世界で魔王と呼ばれた男が帰って来た!  作者: 山口遊子


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30/111

30.中川春菜


「おはよう」


 一仕事いや、二仕事終えた日の翌朝。


 今日は朝のニュースをじっくり見た関係で、教室に入ったのはいつもより少し遅かった。自席に座って、教室に「おはよう」と言いながら入ってくるクラスメイトに「おはよう」と返していたら、俺の隣の席の中川春菜が「おはよう」と上機嫌で教室に入って来たのだ。だれも気に留めていなかったようだが、俺だけ気が付いたようだ。そのまま中川は、自分の席までやって来た。


「霧谷くん、おはよう」


「お、おう。中川、おはよう」


 見た感じ、金曜までの中川と別人のように明るい雰囲気ふんいきが有る。


「???」


 中川に何かいいことでもあったのだろうか? わからないが、隣人が機嫌の良いのはいいことだ。いつもの冷たい雰囲気よりも、今日のように明るい雰囲気の中川の方が美人に見える。


「霧谷くん、今日の朝のニュース見た?」


 初めて、中川が俺に話しかけてきた。一体こいつはどうしたんだ?


 俺が、怪訝けげんな顔をしていることなどお構いなしに、中川が続ける。


「金村建設のビルが傾いて出入り禁止になったでしょ。あのニュースのことよ」


「ああ、あのニュースなら今朝けさのテレビで見た」


「フフ。あの会社、自社ビルが傾くようじゃ、建設会社としてはおしまいよね。あの傾いたビルは修理できないから解体するみたいよ。フフ、フフフ」


 金村建設のビルがダメになったことが嬉しいらしい。どうしたんだ? こいつ金村建設に恨みでもあったのか? 他人ひと詮索せんさくをしても仕方がないのだがこうもあからさまだと非常に気になる。


 授業中も中川の上機嫌はかわらず、積極的に先生の質問などにも答えていた。ここまで来ると、クラスのみんなも中川の変わりように気がつきはじめたようだ。


 午前中の授業も終わり、例のごとく俺は、弁当箱を持参して村田と学食にきている。相変わらず、村田は油揚げ攻勢を続けるようで『稲荷寿司』と『きつねうどんセット』を注文している。俺の方もいつも通り豚汁だ。俺も人のことは言えないな。


「なあ、村田、今日の中川どうしたんだろうな?」


 村田と向かい合った席について持参した弁当を食べながら話しかける。


「中川さんがやけに明るくなったことだよね。霧谷くんは知らなかったのか。僕もまた聞きだから詳しいことは知らないんだけど、……」


 そこから、中川のことについて村田が知っていることを話してくれた。


 中川はK大付属中に行くだけあり、そこそこ裕福な家庭の子女だったらしいが、昨年、父親が連帯保証人となった友人が多額の借金をしたまま行方不明となった。

 その債権はどういう訳か、すべて金村建設が回収しており、中川の父親は経営していた会社を売却するも、借金の返済には到底足らず、浪岡町にあった自宅の土地、建物、その他が差し押さえられ今では小さなアパートで暮らしているそうだ。父親は、それでも新しい勤め口を見つけ就職したそうだが生活は楽ではないらしい。母親は、夫と娘を置いて家を出て行ったそうだ。


 まあ、ここまで聞くと、中川が金村建設に対して特殊な感情を持つことは理解できるし、金村建設が痛手を受けるようなことが有れば快哉かいさいをあげる気持ちも理解できる。


 とはいうものの、俺の身勝手な感想だが、15、6の女子が他人ひとの不幸でザマァというのは少しいただけない。


 浪岡町というと、叔父さんの家のあったあの建設現場。ひょっとすると、あの土地の一部が中川の家のあった場所かもしれない。今まで何度も叔父さんの家に遊びに行ったし、中学もあの近くだったけど、中川を見たことはなかったなー。あれほど美人だったら出会っていれば覚えていそうだが、7年以上も前だと忘れることもあるか。


 金村建設がどうなろうと、中川の生活が楽になるわけではない。しかし、村田のヤツ詳しいことは知らないと言いながらずいぶん詳しいな。


 村田とそんな話をしながら食事をしていると、昼食を載せたトレイを持った中川が一人突っ立ってどこに座ろうかと迷っているようだ。先週まで弁当持参で教室で食事していたと思ったが今日は学食に来たらしい。


「中川、嫌じゃなかったら俺たちと一緒に食べるか?」


 見かねて声をかけた。


「霧谷くん、いいの?」


「こっちが誘ったんだからいいに決まってるだろ。なあ村田?」


「は、はい」


 村田が妙に緊張している。中川に意識しすぎだろ。


「それじゃあ」


 そう言って、中川が俺の隣に座った。別に意図したわけでなくただ俺の方が中川に近かっただけだ。中川のトレイの中には、フライ定食が入っていた。結構なボリュームのある定食だが、いつも目にする中川の可愛らしい弁当箱とのギャップが大きいように思う。


「霧谷くん、どうしたの?」


「結構ボリュームのあるモノ食べるんだなーと」


「いつもは、お弁当を作って持って来てたんだけど、ちょっとわたし的には足りない感じだったの。今日は朝のニュースを見てたらお弁当を作る時間が無くなっちゃってね。それで、初めて学食に来たんだけど、知ってる人がいてよかったわ」


「言ってくれれば、最初から誘ったんだがな」


「ありがとう、これから、お弁当を持ってこない日は昼食誘ってね」


「ああ、問題ない。村田、いいよな」


「は、はい」


 村田のヤツ、はいしか言わないよ。オタクは純情だというのは本当らしい。




拙作をここまで読んでいただきありがとうございます。

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