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中途半端な者同士の膠着状態

「なななな、なんで?なんで幽霊??僕悪いことしました???」


自分の教室、自分の机と椅子の後ろ、席と席の間の空間から息を潜めていた。叫び声をあげたのは丁度30秒ほど前。


未知との邂逅。頭の中はその言葉だけが支配していた。それもそうだろう、今僕が目の当たりにしたものは人の形をしていながら、宙に浮かぶ物体なのだから。


学校の文化祭は11月上旬であり、その準備のために何か教室に運ばれたということは記憶にない。勿論、誰かがイタズラ目的で持ち込んだ可能性は0%ではないにせよ、あれは風船などといった類のものではないというのが、脳内協議における結論であった。


いや、アレはそんな無機物ではない。教卓の後ろには確かに何らかの気配を確かに感じる。そしてそれは、()()()()()。いや、生きていないかもしれないが、人間のような存在は間違いなくある。


(いやいや、見間違えたって可能性も・・・)


よくあることだ。例えば、幽霊と思われていたものが、実は様々な物の影が重なり合って出来ていたというのはあまりにも有名な話だ。学校における七不思議というものは、そんなものが大半だというのが僕の中の結論。


ラノベを読んでいても、本当に幽霊でしたなんて展開は・・・なくなはいな。いやいや、あくまでそれは創作でのお話に過ぎないのであって、現実世界でそんな事は起こらない。それに僕自身は特別霊感が強いわけでもないのだから、そんな物を実際に見るなんてありえない。


そう思って椅子の背もたれから顔を少しだけ出す。すると、件の幽霊らしき物も同じ考えであったのか。



目と目が合う、瞬間ーーー



(いやいや。この場合は「呪われると気づいた」ですよね・・・。)


慌てて顔を引っ込める。悠長に歌を思い浮かべている場合ではない。ゴルゴンよろしく、目が合っただけで石化されたらたまったものでなはい。


さて、この場合はどうするのが正解なのか。考えられる選択肢はひとまず3つ。


 1:逃亡中の開始。

 2:闘わなければ生き残れない。

 3:ひとまず戦線を維持して膠着状態。


追いかけられれば、今の自分で逃げ切れる自信はない。


とは言え、いくらラノベオタクをしていたとしても、実際に幽霊に対抗する方法なんて分からないし、そんな魔術みたいな力があるわけないし、第一できるわけがない。


それならこのまま見回りを待つべきなのか? 時間は18:15。見回りが来てもおかしくはない時間である。誰か一人でも来れば、幽霊といえども行動に抑制がかかるだろう。


だけど、もしアレがそんなことを気にしないモノだったら・・・


いくら思考を巡らせても結論は出ない。


だが、思考を巡らせることがいかに浅はかな行為であったか。僕は失念していたのだ、この隙に向こう側が行動を起こしてしまうという可能性についてを。


「あの〜、ちょっといいかな・・・」


頭の上から声がする。恐る恐る顔を上げると、再び先程の幽霊。緊張か、はたまた金縛りか、反応できずに身体は固まってしまう。


その無言無反応の状態を、言葉を続けていいというサインとして受け取ったのか、幽霊は話を続けた。


「もしかして、私の姿、見えてる・・・?」


そこで初めて、その幽霊の全身を視認することができた。ただ、その姿の特徴を詳しく理解する余裕はない。


「・・・(コクコク)」


声は出ない。ただ首を縦に振って反応は示す。無視すればこの幽霊の機嫌を損ないかねない。少しでも可能性を低くしておくに越したことはないでしょう。


ただ、この肯定への返しは自分の予想の範疇に無いものであった。


(じわっ)


「な、泣いっ!?」


「やっどみづげだぁぁぁぁ!!!!」


突然泣き出し、縋るように抱きついてくる。


「〜〜〜!?!?!?!?!?」


声にならない叫びとともに、僕は意識を手放していくのだった。

そこまででもすでに起こっている異常な事態に、まだ気づかないまま。

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