中途半端な者同士の出会い
平凡。普通。
もし周りの人たちが彼のことを評価したら、10人中5人くらいがそう評価するでしょう。
根暗。陰キャ。
もし周りの人たちが彼のことを評価したら、10人中4人くらいがそう評価するでしょう。
本の虫。読書家。
もし周りの人たちが彼のことを評価したら、10人中1人くらいがそう評価するでしょう。
そんな中途半端な存在といえる人物が僕、羽場翼の特徴。
「特徴がないのが特徴」
この世にはそんな名言があるが、それをこの世において現実化しているのが自分だと思っている。
そんな僕は、その特徴を肯定するかのように、今日も図書室で本を読んでいた。ただ、決してその事を意識しているわけではない。あくまで僕自身の趣味であり、中学三年生のとある時期からの習慣である。
とは言っても、一般的に読んでいて賞賛の対象になる、自己啓発系の本や小説などではなく、隠れラノベオタクとして、自分で持ち込んだものであったり、図書室に常備されているものを読んだりしている。図書室にラノベが置いてある、これは僕が高校生になって数少ない喜ばしい点であった。最近読んでいるのはスペースオペラ小説。
『ガタガタ』
座っている席のすぐ後ろの窓から、風が窓を揺らす音が聞こえる。季節は秋。二学期が始まって少し経った9月の中旬。まだまだ暑さが残っていて、日照時間もまだまだ長めの時期。にもかかわらず、窓の外が暗いのは、きっと積乱雲が発生して、今にも雨が降り出しそうだから。
そのせいか、図書館の中もかなり暗くなっていた。
『ザー』
その予感は、銀河の歴史を数ページめくったときに的中した。黒雲から、その体重を少しでも減らそうと言わんばかりに、大粒の雨が降り出した。
だが、窓を叩く音も本の世界に入ってしまえば僕には関係ない。そうして再び銀河の歴史をめくり始めようとしたとき
「ごめんなさい。そろそろ図書室を閉めるので・・・」
と、背中から声を掛けられた。本から顔を上げると、そこにいたのは図書委員の人だった。この図書室は、基本夕方の18:00には閉まることになっている。腕時計を見ると、時刻は17:58。
「すみません、すぐに帰りの準備をします。」
そう返事をして、立ち上がった。机の横に置いてあった鞄を机に置いて、読んでいた本に栞を挟み、鞄の中へ。そんな時、鞄の中に違和感を感じた。
(筆箱がない?・・・教室に忘れちゃったかな?)
帰る前に、一つ寄らなければならない場所ができたようだ。とは言え、どうせ外はまだゲリラ豪雨の嵐、傘などを持っていないので帰ることは出来ない。雨が止むまで教室で読書の続きをしていよう、そう考えて図書室を後にした。
階段を昇りながら、スマホを操作して、雨のレーダーを確認。あと10分もあればこの雨は止むだろうということを確認して、自分の教室へ。
誰もいなかったため、消してあった教室の電気をつけて、自分の席に向かう。席は窓側から二番目の列の、前から三番目にある。
机の中に目的の品である筆箱を見つけて、鞄の中へしまった。これでこの場所における第一の目的は達成した。
そのまま当初の考え通りに、第二の目的である読書をしようと、椅子に座って読もうとしたとき、
『ガラガラッッッドカーンッッッ!』『バチンッ!』
と、耳を傷めるような二つの大きな音が立て続けに聞こえ、教室の電気が消えた。
「び、ビックリした・・・。停電・・・。」
驚くそのままに、呟いていた。一瞬にして闇に包まれ、視界は奪われる。窓から差し込む稲光が、今の状況にいて唯一の明かりであった。
でも、少しすれば目が暗さに慣れてくる、段々と視界は回復していった。しかし、活字を追うには心もとない明るさ。仕方なく本を読むのは諦めスマホをポケットから取り出す。ゲームでもしていよう、そう思った矢先のことだった。
「ッ!?」
ふと何か黒板のほうで何か動いた感じがした。
僕は周りの環境の変化に機敏だと思う。それが他人の認識の中にあろうが、外にあろうが、気づいてしまう事がある。
(カーテンが揺れた?)
画面をつける前のスマホから顔を上げて、前を向いた。見えるのは暗闇。しかし何か蠢くものがある。
瞬間、窓の外から光が差し込み、教室がそれに包まれる。そして顔を上げた先に見たものは。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!???」
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!???」
平凡。普通。
もし周りの人たちが僕のことを評価したら、10人中5人くらいがそう評価するでしょう。
根暗。陰キャ。
もし周りの人たちが僕のことを評価したら、10人中4人くらいがそう評価するでしょう。
本の虫。読書家。
もし周りの人たちが僕のことを評価したら、10人中1人くらいがそう評価するでしょう。
そんな中途半端な存在といえる人物が僕、羽場翼の特徴。
「特徴がないのが特徴」
この世にはそんな名言があるが、それをこの世において現実化している、それが僕だ。
そんな中途半端な存在である僕だからこそ、出会ってしまったのかもしれない。この世において、自分以上に中途半端な存在、この世において存在自体が曖昧なものである。幽霊に。