表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/30

プロローグ

 全身が熱い。

 そう感じるのは痛みのせいだ。

 痛みも度を過ぎると「痛い」という感覚から、「熱い」という感覚に変わる。

 不思議なものだ。

 血は流れ、徐々に体温は低下していくというのに、熱さを感じる。痛みが意識を繋ぎ止めている。

 今、この瞬間以上に「痛み」について深く分析したことがあっただろうか?

 己はなぜ「痛み」について研究したのだろうか?

 すべては、なんのためだっただろう?

 いや、意味なんて求めたところで無意味だ。

 意味を与えたところで価値なんてない。

 一、二と数えられる価値なんかではない。

 研究なんてそんなものだ。

 理解されなければ無意味で無価値。

 そんなものに己は人生を捧げた。ただそれだけだ。後悔はない。

 ひたすらに欲望を満たすために研究を続けた。 

 なぜ作ろうと思ったのか、今では理由はあやふやだ。出発点は遠い過去のことになってしまった。もうじき、終着点に着くはずだった。たぶんだ。はっきりした確証はない。

 痛みと熱の後にやって来たのは寒さだ。

 凍えるような寒さ。

 そして、とにかく瞼が重い。

 これが最後の眠りというものなのだろうか。

 生ある者にはいつか死が訪れる。

 生み出された物にもすべからく死はくるのだろうか? 終わりがあるのだろうか?

 壊れて動くなれば、それは「終わり」を意味するだろうか。

 誰かが修復して、再び動かしたら「再生」と呼べるだろうか?

 こんな痛みは、一度だけでいい。

 人間は再生しなくてもいい。

 精一杯生きる意味が、なくなってしまうから。


   *


 デウス・エクス・マキナとは、機械仕掛けの神、もしくは女神という意味で用いられているが、それは実態を持たない概念的存在だ。

 神、その存在を例えるならば、物語を書き綴る創作者だ。

 創作者は己の作りだした世界において、果ては他者が作り出した物語世界をも作り変えることが可能だ。

 この機械仕掛けの神は、そういった創作者のしもべのようなものだ。

 創作者よりも下位。しかし、物語においては絶対神であり、覆すことのできない存在だ。

 そもそも、覆すことが彼、彼女の専売特許なのだ。

 機械仕掛けの神は時にアンフェアで、その世界を見守る読者たちを混乱に貶めたりもする。

 しかし、そんなものが実際に存在したら世界はどうなるのだろう。

 すべてを超越せしもの。

 世界を繋ぎ止める設定という軛を断ち切るもの。

 運命さえも簡単に捻じ曲げてしまう。

 物語の外に、デウス・エクス・マキナは存在する。

 だが、物語の中に存在したら?

 実体を持って姿を現したら?

 その物語は――


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ