まわりが強すぎて無双できない異世界転移
深夜2時のテンションで書いた作品です。
なんだろう。異世界に来たらチートとか、無双できると思う。私の場合は、チートはありませんでした。勇者でもありませんでした。
でも、いろんな冒険をして強くなれば、すこしだけ無双できると思いました。でも、無理でした。だって、周りがつよすぎるからだ。
「ぐぁあああああああああああああああああああああ」
悪魔が泣いている。大きな爆発ともに、勇者も真っ青の悪魔が吹き飛ばされていた。原因は、私の仲間の一人だ。私に対して異常な愛を向けてくるロゼッタが悪魔をいじめていた。
「あなた、衣玖をけなした時点で、死か死よ」
それ、最終的に死んじゃいます。
「ろ、ロゼッタさん、な、泣いているから、やめてあげましょう」
私は悪魔がかわいそうなので、ロゼッタを止める。
「……ん、もぅ、あなたは優しいんだから」
でれでれしながらロゼッタは言う。その顔は、とてもかわいいです。けど、やっていることは悪逆非道な爆発を起こして悪魔を吹き飛ばしているだけの美女です。
「ふぉっふぉっふぉっ、衣玖様は慈悲深いですな」
もう1人の仲間ジェームズが話しかけてきた。私は声のするほうを向くと……ナイフで無双していた。
「……」
悪魔の腕がナイフで解体されていた。
「ジェームズ、こ、ころさないでね」
「ええ、わかっていますよ。この程度では死にませんが、おっと、失礼。ご主人様にはいささか刺激が強すぎましたね」
強いというレベルを超えていますよ。あ、内臓が……綺麗に取り出されている。あなた、何者なのですか?
普通、おじいさんで、執事と言えば、穏やかでやさしくて、紅茶持ってくるほのぼのな人だよね。スタイリッシュじじい執事無双とかしないよね。
「さて、ここはカーテンでも使いましょう。また、ご主人様のためにも、悪魔さん、ここから先は立ち入り禁止でございます」
ジェームズは、そう言うと指ぱっちん。どこからともなく、白いカーテンが出現。ジェームズと悪魔を囲い込む。
カーテンの先では、はげしい戦いが繰り広げられ、悪魔の悲鳴が聞こえる。うん、その先の光景を見たら私のSAN値現象は防げない気がする。
たださえ、カーテンの奥から憩える悲鳴に加えて、2人の暴れっぷりに……疲れてるのだ。これ以上は……
「た、助けてくれ、我が悪かったから、助けてくれぇええ」
泣きながらやってくる悪魔。だめ、それ、明らかにまずいから。それに、怖いから。泣いてる顔がすごく怖いから。
「近寄るな。触れていいのは、わらわだけよ」
「ぎゃあああああああああああああああ」
「……」
ものすごい勢いで、私に助けを求めた悪魔が空に舞い上がった。というか、アニメのように空へと飛んでいくが……あれで殺してないらしい。
かなり派手な爆発とか、火花とか、血しぶきとか見えるけど、しなないらしい。どんな、ダイナミック不殺だ。
「あははははははははあは」
「ふぉっふぉっふぉっ」
ロゼッタもジェームズも楽しそうに暴れている。ああ、どうみても、これ無双できない。
一応、太古の時代に1つの文明を壊滅させた悪魔たちで、その封印を解かれてこの世の終わりと言わんばかりの展開だったはずだ。それで、街がやばい。もうだめだという悲観的な話だった気がする。
それが……目の前で紙吹雪のように吹き飛んで、悪魔の威厳(笑)である。
「……ふぅ。この程度かしら」
一通り、悪魔をぶちのめしたロゼッタは満足そうに私に歩みよってくる。
「衣玖。誰もころさなかったわよ。ね、すごいでしょう」
なんか、すごく褒めて、褒めてという顔で私の腕に抱きついた。ロゼッタの柔らかな胸が押し付けられ、女の私にもどきどきする。そして、どうやったら、こんななに豊になるんだろう。
それに、比べて……私は。自分の胸は枯れていた。
いや、それよりも……。
「う、うん。そうだね」
私はロゼッタをほめて、頭をなでる。ロゼッタは目を細めて、とても幸せな顔をしていた。どうして、この人が私にこれだけの好意を寄せているかいまだに理解できないが、私の旅に欠かせない仲間の1人であることは間違いない。
「無事に悪魔を撃退できましたな」
「そうだね、ジェームズ。そして、解体すきだね」
ジェームズは、どこから手に入れたかわからない悪魔の腕を解体している。
「素材として売れますからな。お金はあって困らないでしょう。それに、この壊れた街を復興させるのにも必要ですからね。いろいろやりすぎましたからね」
「そうですね……」
そう、いろいろ街の建物が壊れている。これもすべて、そう、これもすべて……ロゼッタが原因だ。いや、おいかしいから、普通。悪魔が街を壊す展開じゃない。
「……ご、ごめんなさい。殺さないようにしても……どうしても、街は壊しちゃうみたい」
街を破壊するだけの威力のある不殺爆発て、どうやってやるのか小一時間問い詰めたいと思った。だが、それをしたら……ロゼッタにはただのご褒美にしかならないような気がするのでやめておこう。
「ふぉっふぉっふぉっ、それでも誰も死ななかったからよしとしましょう。そうでしょう、ご主人様」
「ええ、力があるなら、きっと誰も悲しまない道を選べるはずだから」
誰も悲しまない結果であってほしい。それは、この世界でのささやかな抵抗だ。この先も、これからも、そうでいたい。
私に力はない。だけど、ロゼッタとジェームズは、私に絶対の忠誠と言わんばかりの信頼を置いて、私の指示に従っている。言い換えれば、私の手元には動かせる強大な力があるのだ。
ならば、その力を持つ責任が伴うような気がする。アニメやライトノベルのように、正義の味方として生きるのもありかもしれない。だけど、そんな気にはなれない。
少なくとも……、正義の味方として誰かを幸せにしても、それは相手の敗北があってこそ手に入れられる幸せだから。
だからこそ、私は2人にこう言う。
「2人とも英雄にも獣にもならないでね」
これが2人を守るための最大の策。そして、私の願い。
「慈悲深いご命令。つつがなく、承りました」
ジェームズは、丁寧なお辞儀をする。
ロゼッタは。
「あなたが望むことは私の願い。だから、叶えるのは当り前よ」
と言って綺麗ですべすべな腕を首に絡めてくる。密着度が上がっています。あと………ロゼッタさん、私、女。たしかに、綺麗な女の人に好意寄せられるのはうれしいけど……女だからね。
「御主人様と、ロゼッタ様は、今日も仲が良い。本当にいいことですな」
「ええ、わかっているじゃない」
「執事ですから」
笑顔で悪魔の足を解体する執事がどこにいる。
「ふぉっふぉっふぉっ、ん、これは……ほぉ、今では幻となってしまったロゼーネへの鍵ではないですか」
ジェームズは1つの短剣を見て言う。
「うそぉ、ロゼーネの鍵?」
ロゼッタはやや興奮気味だ。
「ん、何それ?」
「ああ、昔はあったんだけどね。よくわからないけど、ある日ね、滅んじゃったの。でもね、でもね、衣玖」
「……う、うん」
ロゼッタさんは、ロゼーネの存在を知っているのね。時々、思うけど……この人……何歳だろう。年齢のことを聞いたら、喜んで答えてくれる気がするけど。いや、やめておこう。怖くて聞けない。
私は首を横に振って、ロゼッタに尋ねる。
「ロゼーネて、どんなところなの?」
「そこね、種族も、性別も超えて子孫を残した国なの。今の龍人や獣人はそれで生まれたと言われているの」
はい、私、地雷踏み抜いた。思いきって、踏んで、爆発したよ。そんな太古の街なんかに、行ったら、ロゼッタが暴走するから、暴走しかしないから。とにかく、ストップ。行っては行けない。
「ね、ね、行きましょう。そこに行けば、きっと、きっとね」
やばいよ。黒い瞳の中にハートが見えるよ。頭のなかがきっと、ピンク色に染まっているよね。ねぇ、染まっているよね。
「ふぉっふぉっふぉっ、御主人様。すこし躊躇われているようですが。一見する価値はあるかと思いますよ。高度な文明を持った国ですから、元の世界に戻る鍵が見つかるかもしれません」
「そうよ。それで、見せて、欲しいの。あなたを生み出した世界を……」
「……ロゼッタ」
まっすぐで何の淀みのない声でいう。彼女は、学ぶことに貪欲だ。だからこそ、長い年月を生き続けられるのかもしれない。
それに、元の世界に戻れる可能性も気になる。少しだけ……R指定な展開がありそうでこわいが、なんとか……なるよね。
うん、何とかなる。何とかなった、この先もいろんなことがあるはず。
これが何時まで、いつまで続くかわからないけ。けど、この旅は、いつか思い出になるはずだから。
だから……私は、ロゼッタとジェームズに向かって、
「そうだね。行ってみようか」
と言った。
その答えに2人も嬉しそうな反応をした。そして、2人の嬉しそうな表情がとても愛おしいと思ったのだった。
ここまで、読んでいただき、本当に、本当に、ありがとうございます。
役に立たないまめな登場人物のお話
・主人公
枯れたブドウ畑の胸
チート能力を得ているかもしれない。けれど、その力を使うことは叶わず。周りが強すぎて、突っ込み役なポジションに落ち着いている。だが、時々死んだ目でまじめな時があり、まわりの空気を一瞬で固まる天然成分を持っている恐ろしい存在。
・ロゼッタさん
ろぜったさん、にじゅうさい。よくできました。
まじめな話をすると、主人公にとある理由から好きになった人。恋愛を超えた感情を超えて、もはや……狂気を超える域に達している。美乳で、美人で赤いドレスが特徴。過去は割と孤独すぎる悲惨な状況だが、今はそんなこともない人。
・ジェームズ
スタイリッシュじじい
主人公に仕えている執事。ナイフによる戦闘を得意としており、紅茶の入れ方が上手。昔は、超偉い人らしいのだが、どうして、執事なんてやっているのかは不明。
ただ、執事らしく、主人である主人公に有用な知識やアドバイスをするなど、執事として一級品。主人公の旅をものすごく快適にしている人。
・敗北した悪魔さんたち
太古の時代に、1つの文明を滅ぼした程度のすげぇやつら。でも、ロゼッタさんとジェームズさんの前には紙屑同然だった。そもそも、太古の文明には星の生命を死滅させるような兵器を作っちゃう人間のほうが悪魔なので、彼らが涙して負けるのは必然だったのかもしれない。
ちなみに、ぼこぼこにされた悪魔たちは、ロゼッタによって壊滅寸前の街の修繕作業を手伝っており、子どもたちのアイドルとなったらしい。ちなみに、そのあとは警備会社を設立して、滅ぼそうとした街の警備をおこなっているらしい。