ソニックメイド! 第一章 1話 召喚(1) キャラクターエディット
洞窟を少し進んでくと、かなり奥まで続いている道が続いていることが分かった。また、一本道ではなく、あちこちに分岐点が存在しているのが分かったので、一先ず迷子にならないよう、入り口の比較的広いエリアを拠点に行動することしよう。
「よし! まずは仲間を召喚しよう」
『THE SPRED WORLD』では、領土を増やす時と同じくDPを消耗することで配下となる魔物を召喚することが出来る。しかし、ポイントがあればどんな魔物でも召喚出来る訳では無く、
1、一度倒したことのある種族
2、自身の配下に一度でもなった種族
3、『想像主』であるプレイヤーと同系統の種族の一部
4、初期で解放されている最低レベルの種族
のいづれかに当てはまる魔物を召喚することが出来る。
ちなみに、3の『想像主』と同系統の種族には、ステータスや召喚コストにボーナスが掛かるので、非常に重要な選択になる。また、セレナディーネは知らなかったが、スライムは4の初期で解放されている種族に入っているので、別に『想像主』として選ばなくてもスライムを手に入れることは簡単に出来たのだった。しかも、『想像主』のボーナスがついても戦闘力の低いスライムでは焼け石に水であり、コスト面でのボーナスも元々最低レベルの少なさで召喚出来るのでやはり意味がない。セレナディーネは、盛大に不遇種族を選択していた。
では、なぜセレナディーネはそんな地雷種族を選んでしまったのか?
話は、セレナディーネのキャラクターエディットまで遡る。
「ふむふむ。つまり選んだ種族がかなり優遇されるんですね」
「ぞうよ。だからとても重要な選択なの。弱い魔物を選んでしまったら、いくら強化されるといっても厳しくなるし、逆に強すぎる魔物を選んでもコストが合わずに苦労しちゃう。だから、よく考えて決めてね」
そう教えてくれるのは、ガイドのメリッサさん(ドラゴン)だ。それはもう王者の貫禄を感じさせる姿に反して、ゲーム初心者の私に苛立ったりせず、懇切丁寧に優しく教えてくれる。これまでの会話で私はすっかりメリッサさんのことが大好きになってしまった。
「私ドラゴンにしようかな。そしたらメリッサさんともお揃いだし」
「もう! 嬉しいけど、よく考えて? ドラゴンだとコストが高過ぎて最初は何も召喚できなくなっちゃうわよ? そんなの寂しくない?」
「そ、それは確かに……」
「ね、そうでしょ。だからちゃんとよく考えて決めてね。大丈夫よ! 種族が違ったって私達は友達でしょう?」
「っ、はいっ」
あぁ、友達。友達って言ってくれた! 何かすっごい嬉しい! 何かますます、メリッサさんとお揃いのドラゴンにしたくなっちゃったけど、せっかく色々教えてくれたんだからもうちょっと頑張って考えよう。
「うんうん。じゃあ、これ見て決めてね。分からないことがあったら何でも聞いてくれていいから」
そう言ってメリッサさんは、一冊の本を巨大な指先で器用に摘まんで(!)私に渡してくれた。
中身をみると沢山の魔物が載っていて、どうやら私が選べる種族が全部載っているようだ。
「ふおぉ~。何かすっごいいろんなのがいる」
本当に物凄い沢山の種族が載っていた。ドラゴン、妖精、キメラ、トレント、アラクロワ、ゴーレム…多種多様な生き物がそこに描かれていた。正直見ているだけで胸がワクワクする。あれもいい、これもいい。たまによく分からない所はメリッサさんに聞いて本を読むことしばし。私はとあるページで動きを止めた。そこに描かれていたのは半液体状の球体。まごうことなきスライムだった。
「どうしたの? 何か良い子が見つかったかしら」
「っ、はい! この子! この子にします!」
メリッサさんに声を掛けられて、私はおもいっきりページを開いてスライムを指差した。
モフモフできるビーストタイプの魔物やちっちゃくて可愛い妖精さん何かもいいけど、スライムのプルプルしてそうな触感とか現実ではきっと得られないだろう。それになんか……何て言うか可愛い! 単純に私の好みにドストライクなのだ。
しかし、メリッサさんは、珍しく渋い表情(実際はあまり変わって無かったけど、なんか雰囲気が)をして、
「うーん。スライムかぁ。あんまり強くないし出来れば他の種族を選んだほうが…」
「でも、私、この子がいいです。大変でも頑張ります。駄目ですか?」
ダメって言われたらどうしようと、若干涙目で言うとメリッサさんは、若干戸惑った声で返事をしてくれた。
「うん。そうね。結局本人の意志が一番大切だものね。分かったわ。セレナディーネちゃんの種族はスライムに決定! …頑張ってね」
「っ、はい! 頑張ります!!」
不安げに心配してくれるメリッサさんに胸を張って応える。
こうして私はオリジンスライム・セレナディーネとなった。同時に、この時に後の『神速の破壊神』セレナディーネの第一歩が始まったのだった。