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スケルトンの冒険者 異世界生活記 ~人化の術で冒険者やってます~  作者: 肉巻きおにぎり
1章 スケルトンとゴブリン
6/60

5 進化

7/10 誤字修正&加筆修正。

 ホブゴブリンとの戦闘から離脱した俺は、進んできた道を戻りながら、出会うノーマルゴブリンを狩り続けた。

 もうどれくらい、そうしてるのか分からない。

 1日や2日では無いと思う。

 この広い遺跡のゴブリンを根絶やしにする勢いで、俺はひたすらにゴブリンを狩り続ける。


 だが、まだだ。

 まだ今の俺のステータスでは、あのホブゴブリンには勝てない。

 例え今挑んでも、次にあいつと戦う時に、また逃げ切れる保証もない。


 ホブゴブリンとの戦闘時、俺の攻撃はあいつにダメージを与える事すらできなかった。

 

 だが、Lvがもっと上がれば、俺のステータスが奴に近づければ、今度こそ倒せるかもしれない。

 他に強くなる手段も思いつかない俺は、確かな手ごたえを確認するまでは、とにかくLvを上げ続ける事に専念する事に決めた。


 

 蟻の巣の様な、広大なこの遺跡。

 その探索も、既に終わりが近くなってきたようだ。

 今進んでるこの通路以外は、恐らくもう、あのホブゴブリンが居た所以外に、先に進める場所がないだろう。

 それ以外の道は全て見てきたが出口は見つからなかった。

 もし出口があるとしたら、一番可能性が高いのは、やはりホブゴブリンの守ってた通路の先か。

 やはり、ここから出るためにも、俺はあのホブゴブリンを必ず越えなければならない。


 そのためにも、今は、少しでも多くのゴブリンを狩る。

 それが今の俺に唯一できる事だと信じて。


 しながら通路を進んでいると、小さな小部屋に出る。

 この部屋は俺が目覚めた場所と同じく、天井に穴が開いているようで、月明かりが小部屋の中を照らしている。

 そして、その部屋の隅に、屈んでいるノーマルゴブリンを発見した。

 どうやら地面水溜りがあるようで、そこから水を飲んでいるみたいだ。

 俺の存在には、まだ気付いていない。

 俺は、そのゴブリンにこっそりと忍び寄り、その背後から素早く手にしたナイフで、喉を掻き切った。


「ギィアッ…!?」


 短い悲鳴を上げゴブリンが水溜りに倒れその水面を青黒い血で染める。

 我ながら随分と、命を奪う事に手慣れてきたものだ。


 ちなみに、俺はショートソードを失ってしまっているので、今はこのナイフが俺の武器だ。

 前の武器に比べて、更にリーチの短いこの武器では、正面からの戦いには向かない。

 残念ながら剣術の補正も無いようなのだ。

 武器のカテゴリが違うからかもしれない。

 なので今は、こうやって背後からの奇襲をして安全マージンでLv上げをしている。


【経験値を15獲得しました】

【修得経験値が一定値に達しました。Lvが9に上りました】



 こちらも、最早すっかり慣れてしまったLvUPを知らせる声が頭に響く。

 今のゴブリンで俺のLvは9か。

 そろそろ成長限界が近いか。

 後は、何処かにもう少しいい武器でもあれば、言うことは無いんだけどな。

 もし見つからなかったら、このナイフであのホブゴブリンと戦うことになるが……。

 正直厳しいな……。

 ここは古い遺跡なんだし、この先に何か使えそうな武器が落ちてる事を期待しよう。


 

 そして更に数時間。

 ゴブリンを探して彷徨い歩き見つけたら討伐を繰り返す。

 そしてまた1匹。

 動かなくなったゴブリンを物色しては次の獲物を探す。

 ショートソードの代わりが有ればと思ったが……。

 本当にこいつらはまともな武器を持ってないな。

 

 それにしても、倒した相手から物資を漁ってると、なんか強盗みたいで嫌だな……。


 とか少し考えもしたが、こうでもしないと物が手に入らないんだから仕方ない。

 ゲーム的に考えたら、ドロップアイテムって奴だ。

 死体は宝箱って、昔遊んでたあるゲームでもよく言ってたしな……。



 再び出会ったゴブリンを、特に感情を出すこともなく淡々と倒し、経験値を稼ぐ。

 多分転生してから100匹近い数を倒してきた気がする。

 今までの経験から、そろそろLvが上がる頃だと思うのだが……。


【経験値を18獲得しました】

【獲得経験値が一定値に達しました。Lvが10に上りました】

【種族Lvが最大になりました。条件を達成】

 

 ……お?

 やっと上がった……ん?


 なんか……いつものと少し違わなかったか今?

 

 ……確認してみよう。

 ステータスオープン。


[種族]  スケルトン

[状態]  通常

[ランク]  E

[Lv]   10/10 MAX

[HP]   65/65

[MP]   40/40

[攻撃]   40

[防御]   55

[魔法攻撃] 24

[魔法防御] 24

[素早さ]  34

[所持スキル] 

 剣術Lv1 夜目 毒無効 ステータス閲覧



【条件を達成しました。進化が可能です】

【種族を進化させますか? Yes/No】



 やはり、今までと違う項目が追加されている!

 進化ってあれだよな。

 前世の世界で大人気だった、ポケットなモンスターだったり、デジタルなモンスターだったりが姿が変化して強くなるやつ。

 アレで間違いないよな?

 

 お、おぉぉぉぉぉぉ!!

 この世界に来て一番良いニュースに、俺はその場で思わずガッツポーズ。


 俺は迷うことなくYesと選択する。

 そもそもNoってなんだよ! このままスケルトンでいる選択肢なんて無いよな普通!?

 

 さてさて。一体俺はどうなるんだ?

 進化先のモンスターはたぶんあのホブゴブリンの様にランクの高い上位種族になれるはずだ。


 でも可能なら人型がいいな。

 それで、言葉を話せたりしたら、この世界の人間とコンタクトが取れるかもしれない。


 人型で人間に近い容姿か……今の俺はアンデッドモンスターのスケルトンだから……同じような系統だよな。

 ゾンビは無いな。

 まず臭いがアウトだろうし。

 そう考えるとヴァンパイアとかがベストか?

 ふむ。いいな。日光に気を付けさえすれば人間としても生活できるだろうし、戦闘力も高そうだ。

 これでいきなりヴァンパイア系統の魔物に進化できたら俺としては最高なんだけどな、等と少し期待してたんだが……実際はどうだ?



【進化先の種族を選択してください】

【Dランク スケルトンソルジャー】

【Dランク スカルウォーカー】


 はい! 知ってたぁ!

 そうだよねースケルトンから、いきなりヴァンパイアとか飛び過ぎだもんね。

 無理だよねー。

 そもそも名前からして、体に肉付いてる選択肢ないじゃねーか糞がっ!

 進化できても結局スケルトンのままかよ……。


 ふー。落ち着け俺。

 とりあえず進化はしよう。

 強くなれる事は悪い事じゃない。

 どうせ先に進むのなら、選ばなければいけないんだからさ。

 しかし、進化先が2種類あるな。

 どちらもランクはDランクか。やはり上位種族と見ていいだろう。

 しかし、この2種類はどう違うんだろうか?


 ソルジャーってあれだよな。

 普通によくあるゲームで剣と盾もってるタイプだと思う。

 じゃあ近接戦タイプって事か?

 それに対して、ウォーカーってなんだ?

 ゾンビじゃないよね。

 スカルってついてるし

 

 んー。説明とか見れないのこれ?

 そう思い、俺は表示されてる種族名を眺めていると、その種族の特徴の様な物が表示された。

 なんだよ。こういう機能があるなら最初から表示してくれよ……。

 まぁこれでどんな種族か分かるな。

 それを見てから決めよう。

 どれどれ……。



 【スケルトンソルジャー】

 武具の扱いに長けるスケルトンの戦士。

 武器を使った攻撃を得意とし、力が強いが動きは鈍い。


 【スカルウォーカー】

 背後からの奇襲等を得意とするスケルトンの亜種。

 闇にまぎれ、素早い動きで敵をかく乱する。



 成程成程。

 ウォーカーってこれ、要は斥候とか遊撃手とかみたいな奴か。

 そしてウォリアーは大方予想通りだったけど、この説明によると動きは鈍いとあるな。


 攻撃力があっても、あのホブゴブリン相手だと避け損なって死ぬ未来しか見えないな……。

 力で勝てても、素早さが遅いとこっちの攻撃が当てられないし。

 鈍い動きじゃ今度こそ逃げられなくて終わりだろう。


 逆にウォーカーはいいんじゃないか?

 この骨だけの体は体力ってものは無限に近いからな。

 速く動ければその分戦闘や逃走に役立ちそうだ。

 そう考えると、生き残れる可能性はこっちの方が高いんじゃないだろうか?

 それに今はノーマルゴブリンだから戦えているが、この世界には、どんな化け物がいるかも分からないし。

 

 いつでも正面から正々堂々なんて馬鹿な考えはない。

 あのホブゴブリンの様に避けられない戦いならともかく、気付いていない相手にもわざわざ正面から戦おうとするのは馬鹿な考えだと思う。

 むしろ出来るなら奇襲や逃走は、積極的にしていくスタイルが、今の俺とも相性がいいだろう。


 ホブゴブリンの戦闘で逃げた時は、確かに物凄く悔しかったのは事実だ。

 その悔しさがあったから、俺をここまで強くしたのだから。

 だが、だからと言って、いつ如何なる相手とも戦おうなんて事は、思っていない。

 この世界では、あのホブゴブリンも俺も、等しく雑魚に分類される魔物のはずだ。

 上位の魔物なんかには、どうしても勝てないと思うし、そういった存在に出会ったら、それはもう逃走するしかないだろう。

 これも一種の生存戦略なのだから。

 この世界で生き抜くには、自分の安いプライドなんて捨てて、逃げることも常に考えたほうがいいだろう。

 殺るか殺られるかの世界で騎士道精神は必要ないのだ。

 そもそも俺騎士ですらないし。

 人間どころかスケルトンだしな。



 だがあのホブゴブリンだけは絶対仕留めるつもりだ。

 あいつは出口への通路を守ってるみたいだし。


 よし。

 少し思考が逸れたが進化先は決まった。

 俺は意を決して、脳内の声に応えるように、スカルウォーカーを選択した。



【種族スカルウォーカーへの進化を開始します】



 脳内に再びあの声が響くと、俺の体が、鈍く発光して周囲を明るく照らし出す。

 これが進化か?

 自分の体が、何かの力によって徐々に作り変えられていくのを感じる……。

 

 俺はしばらくその感覚に身を任せて、変化が過ぎるのをじっと待った。

 やがて、俺の体から溢れる光は収まったのを確認すると、自分の手足を確認してみる。


 特に変化はないか?

 いや。少しだけ骨の色が黒っぽくなってる?

 今までは白い骨の体だったが、今は全体的に黒っぽいような。

 どっちかというとグレーだな。

 それに、なんだか体に力が漲る感じがする。


 他はどうだ?

 両手で自分の体を触りながら確認してみるが、特にこれといって特徴がありそうでもない。

 いつも通りのスケルトンの体に思えるが……。


 確かこの近くに……。

 あった。水溜まりだ。

 天井から月の光も漏れてる。これで姿の確認が出来るな。


 俺は、恐る恐る、水溜りを覗き込んでみる。

 そこに映り込んでいたのは、全身がグレーのスケルトンだった。

 特徴があるとすると、前は真っ暗だっただけの眼窩に、小さな赤い光が不気味に輝いている事だろうか。

 ちょうどレーザーポインターを暗闇に当てたような感じだ。

 視線を動かしてみるとその赤い点もきょろきょろ動くのがわかった。

 うん。

 瞳だよなこれ。


 ……これ逆に暗闇で目立つだけじゃないか?

 

 いや、でも想像してほしい。

 真っ暗闇で赤い光だけ残して、素早く動き回り相手を暗殺するスケルトン。

 おお。なんかカッコいいかもしれない。

 うん。カッコいいわ。はははっ。

 

 ってアホか!?

 アサシンスタイルっぽい種族なのに、何で敵に場所知らせるような特徴をしてるんだよ!?

 誰だよこの種族生み出したの!

 絶対必要ないだろこれ!?


 自分の進化した体の欠点に、突込みが追いつかなくなって、俺は一人頭を抱えるのだった。

進化後のスキル構成などは次回で紹介します。

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