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スケルトンの冒険者 異世界生活記 ~人化の術で冒険者やってます~  作者: 肉巻きおにぎり
1章 スケルトンとゴブリン
5/60

4 敗北と決意

7/10 誤字修正&加筆修正 

 初めてのゴブリンとの戦闘から、しばらく経った。

 通路を歩いているうちに、俺の減っていたHPは無事に回復してくれた。

 どうやら自然回復するものらしい。

 少し安心した。


 しかし、随分歩いているはずなのに、一向に出口らしい場所にたどり着けない。

 どうやらこの遺跡はかなり広いようだ。

 蟻の巣のように、細い通路がいくつも広がり、その通路の先には小部屋があったり、更に分かれ道があったりとまるで迷路のような作りだ。

 とりあえず、今は一番広い通路を選んで進んでいるのだが……。


 そうして進んでいると、今度は左右の分かれ道に差し掛かる。

 うーむ。

 右と左……。はたしてどっちにするべきか。

 暫し悩んだが、とりあえずは右に進んでみる事にする。

 たしか、前世の記憶が確かならば、迷路は右手を壁に付けて歩き続けるとゴールできるんだよな?

 ……逆だったっけ?

 いや待て。そもそも、その考え方ならば、途中でいくつもあった細い道を曲がらないといけない気がするぞ……。

 

 まぁ、行き止まりなら戻って別の道を進めばいいか。

 幸いこの体は、疲れを感じる事はない。

 虱潰しに全ての道を回れば、いつかは出口にたどり着けるだろう。

 時間は取られるが、結局これしか方法がないんだから仕方ないさ。



 分かれ道の先の通路をひたすらに進み、出会ったゴブリンと戦闘しては、更に先へと進む。

 3匹目を倒したあたりから、俺の体は絶好調だ。


 Lvの上がった今の俺は、素早さも上がり、攻撃力も強くなっている。

 今の俺は、ゴブリンの攻撃を見て回避するや、棍棒を受け止めての反撃したりと、かなり安定して戦闘ができる位にはなっていた。

 ただのゴブリンならば、もう負けはしないだろう。

 やっぱりレべリングってのは大事な事だな。



「グギャァァァ!」


 そしてまた一匹。

 襲いかかってきたゴブリンを無事に返り討ちにする。


【経験値を12獲得しました】


 なかなか次のLvに上がらないな。

 結構倒してると思うんだが……。

 

 しかし、毎回出会う魔物はゴブリンのみだよな。他の魔物っていないのか?

 この遺跡にゴブリンしか魔物は住んでいないのかもしれないな。

 もしくは、いてもゴブリン達に食われたか……。

 ゴブリン達は、毎回俺を見ると必ず襲ってくるのだが、こんな骨ばっかりの体でも獲物に見えてるのか?

 食っても旨くはないだろうに。


 まぁゴブリンの食料事情なんか考えてる場所じゃないか。


 この遺跡を歩きだして結構な時間がたつ。

 俺のLvも5まで上がった。

 最初は死闘だったゴブリンも、今ではこうして安定して倒せる。

 慢心はいけないとは思うが、実際に今は正面から戦っても2、3匹のゴブリンを同時に相手する位なら、余裕で勝てる状態なのだ。

 これは、この場所から出られる日も近いかもしれないな。


 そんな事を考えながら、更に先へと進んだのだが、今までと少し雰囲気が違う広めの空間に出た。

 どうやら、無事に大通路を抜けたようだ。

 部屋の先には、また一本の大きな通路が見える。

 そして、その通路を守るよう1匹のゴブリンが立っていた。


 だが、このゴブリンは今まで戦ってきた個体より一回り程大きい。

 しかも皮膚が緑じゃなく茶色をしており、なんだか纏っている雰囲気が違う。

 顔は普通のゴブリンとあまり変わらないようだが、その左目に大きな傷後がある。

 襤褸布を纏っているが、その体はなかなかの筋肉質だ。

 また武器も木の棍棒ではなく、鉄の直剣を持っている。


 明らかに普通のゴブリンとは違うが、こいつは一体……。

 先ずは、ステータスを確認だな……。



[種族]  ホブゴブリン

[状態]  通常

[ランク]  D

[Lv]   7/15

[HP]   65/65

[MP]   30/30

[攻撃]   50

[防御]   36

[魔法攻撃] 20

[魔法防御] 20

[素早さ]  42

[所持スキル]

 剣術Lv2 体術Lv1 筋力増強Lv1 夜目 



 ホブゴブリン?

 良く見たらランクがDの魔物だ。

 ならば、こいつはゴブリンの上位個体だろうか?


 Lvも俺より高いしステータスも全体的にかなり高い……。

 今の俺は勝てるだろうか?

 

[種族]  スケルトン

[状態]  通常

[ランク]  E

[Lv]   5/10

[HP]   45/45

[MP]   30/30

[攻撃]   28

[防御]   30

[魔法攻撃] 13

[魔法防御] 15

[素早さ]  27

[所持スキル]

 剣術Lv1 夜目 毒無効 ステータス閲覧



 大丈夫だ。俺もけっこう強くなってる。

 油断しなければ、一方的な戦いとはならないはず……。


 俺はショートソードを構え、慎重にホブゴブリンとの間合いを測る。

 ホブゴブリンの方は、にやりと不気味に笑い直剣を構える。

 だがその眼は油断なくこちらを睨みつけてくる。



 今までのゴブリンだと、闘開始と同時に、突撃してきたんだが……。

 コイツは随分慎重だな。

 

 ホブゴブリンはまだ動かない。


 ならばと俺は地面を蹴り上げて、最大速度で詰め寄る。

 先制攻撃して一気に流れを掴む!

 そう思い、力を込めてショートソードを奴に叩きつける。

 だがホブゴブリンは、その手に持った直剣で俺の一撃を受け止めてみせる。


 そのまま鍔迫り合いになるが、力は奴の方が上なのかじりじりと押され始める。


 ぐっ……。

 コイツやはり、ただのゴブリンより強いっ!


 咄嗟に右足で腹を狙い蹴りを放つも、ホブゴブリンは一瞬早く後ろに跳び退き回避。

 着地すると、すくに踏み込んで再び間合いを詰めてくる。


 今度は奴の振り下ろす直剣を俺がショートソードでガードする事になる。


 反応も速度も早い。そしてやはり重い一撃だ。

 くそっ……かなりの強敵だ。

 これはとんでも無い相手に戦いを挑んでしまったかもしれないな……。


 そのまましばらく、俺とホブゴブリンはお互いの剣による打ち合いを続けるが、俺は決定打を与える事が出来ずに、徐々に後退させられるはめになった。


 恐らく能力だけじゃない。

 こいつのスキル。剣技Lv2の補正もあるんだろう。

 今は何とか受けられてはいるが、いつ攻撃を食らうかわからない状況になってきている。

 このままでは拙い。


 どこかに隙はないのか……?


 だがホブゴブリンの攻撃は、更に激しい物となる。

 打ち付けられる剣の重さが増す。

 そのままショートソードを弾き飛ばされそうになるが、必死に堪え、刃同士をぶつけ合いホブゴブリンの攻撃を凌ぐ。

 金属同士がぶつかり合う音が響き、その度に小さな火花が辺りを淡く照らし出す。


 だが捌ききれないホブゴブリンの攻撃が徐々に、俺の身体を掠りはじめた。

 身に着けているローブに、切り傷がどんどん増えていく。


 止めろこの野郎っ!

 今の俺の大事な一張羅だぞ!?


 そんな俺の気持ち等、知った事かと、更に打ち付けられるは斬撃の嵐。

 俺もなんとか反撃に出ようと、防御に徹しながら隙を伺ってはいるのだが、いっこうに攻撃が止む気配が無い。



 そして、不意にパキリと。


 俺が使っていたショートソードから不吉な音が聞こえた。



 やばいっ!



 嫌な予感がして視線を移すと、ショートソードの刀身には、うっすらとヒビが入ってた。

 どうやら一向に止まない攻撃を受け続け、俺の武器は既に限界がきていたらしい。

 もう後、何発か打ち込めば、ショートソードは刃が折れてしまうだろう。


 まったく無茶苦茶だっ……!

 どんな馬鹿力してるんだこいつは!

 本当にゴブリンか!?


 武器がこうなっては、戦闘継続は最早不可能に近い。

 戦力差は絶望的。

 すでに結果は見えている状態だ。

 俺に残された道は少ない。

 どうする……?


 いや。もう残された手はこれしかないか……。

 俺は、残り少ない選択肢の中から、最も効果的と思われる一つを選択した。



 折れかけたショートソードを握り直し、奴の攻撃が打ち込まれる前に、渾身の力を籠めて打ち付ける。

 当然の様にホブゴブリンはその攻撃を直剣で受け止められ再びの鍔迫り合いになる。

 キシキシと金属が擦れ合う音が鳴り、ショートソードの刀身に走るヒビが更に大きな物へとなっていく。

 もう一刻の猶予もないな……。

 俺はそう結論し、この鍔迫り合いには拮抗せずに、むしろ奴の力を利用して、後方へと跳ぶ。


 着地と同時に俺は手にしたショートソードを、力いっぱいホブゴブリン目掛け投げつける。

 当然のようにホブゴブリンは、素早く直剣でそれを打ち払う。


 

 ――パキーン……。


 そんな乾いた音が鳴り響き、ついに俺を今まで支えてくれていたショートソードは、刃が断ち切られた。


 しかし俺は元より今の投擲で倒せるとは思ってない。

 ホブゴブリンは飛んで来たショートソードを打ち払うために、その足を止めた。

 その一瞬の隙を作るための攻撃だ。


 俺は既に、ショートソードを投げたと同時に全力でダッシュしている。

 後ろに、来た道へと。

 ここに来て俺が選んだ手段。

 それは逃走だ。

 今の俺ではどうやってもコイツを倒せないのが分かった。

 強さが違いすぎる。

 どんなに無様でも、ここで死んでは意味が無い。

 アンデッドの体でも死ぬことを恐れない程俺は人間を辞めたつもりは無いからな。

 故に、俺は逃走する事にする。


 ホブゴブリンは、俺が更に追撃してくるとと警戒してたからか、やや驚いたような顔をしていたが、俺が逃走するのを確認すると、つまらなそうに鼻を鳴らすだけで追いかけてくる気配は無い。

 ちらりと最後に振り返るとホブゴブリンは、こちらを見下したように睨んでいるだけだった。



 それから必死に走り、俺は元来た通路を駆けていた。

 度々、背後からホブゴブリンが追いかけてこないかを確認する。

 そして、追いかけて来ないのを確信すると、その場で立ち止まりそっと地面に膝をつく。



 勝てなかった……。


 Lvも上がり、ノーマルゴブリン程度なら勝てると少し調子に乗っていたのは事実だ。

 だがあのホブゴブリンの強さは俺の予想を超えていた。

 やはり俺はまだまだ雑魚の一匹に過ぎないのだと、改めて現実を思い知らされた気分だ……。


 今回俺は無事に逃げ切る事が出来た。

 だがあれは、恐らく逃げれたというよりは……。

 奴に見逃してもらったのだろう。

 あいつの速度なら恐らく逃げる俺に追撃を仕掛けることは出来たはずだ。

 だが奴はそれをしなかった。

 ただ俺を、もうお前には価値は無いと言うように

 そんな眼で見ているだけだった。



 くそっ……。俺マジで情けないな……。


 確かに今回俺は生き残る事が出来た。

 しかし、この胸を締め付ける敗北感に、無意識に歯を食いしばる。


 ああ……。

 確かに俺は逃げ出した。

 奴からみたらさぞ無様だっただろう。


 だが、俺は諦めたわけではない。 


 強くならなければ……。

 奴を超えるくらいに強くならなければ、ここから出る事は出来ない。

 

 奴を超えられるとしたら、手段は一つ。

 Lvアップだ。

 俺のLvを更に上げ、ステータスでホブゴブリンを超える。

 その為にもまずは来た道を戻ろう。

 他の通路を探索して、もっとLvを上げるために……。


 俺は奴へのリベンジを胸に誓い、再び暗い通路を駆けだした。

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