3 スケルトンVSゴブリン
初戦闘です。戦いの表現って難しいですよね。
7/10 誤字修正&加筆修正。ステータスの表記を全体的に修正。経験値とレベルアップの表記追加等。
今進んでいるこの通路は、かなり暗く普通の人間では明かりが無いと足元も見えないような闇がずっと広がっている。
だが、そんな暗い通路を進んでるのにも関わらず、俺にはちゃんと辺りが見えている。
これは今の俺がスケルトンだからだろうか?
それとも何かのスキルの効果だろうか。
そう。スキルだ。
こういうファンタジーだと定番ともいえる要素。
実はこの体になってずっと考えてたことなのだが改めて思う。
スキルが存在しているのならば、どうにかしてそれを確認することが出来ないだろうか?
こういうRPG系なゲームとかやってる時って時真っ先に思うのが自分のステータスとか確認するだろ?
まぁ今ここには、コントローラーやマウスなんて物はないけど。
どうしたらいいのか分からないし、そもそもが見れるのかも分かんらないよな。
本当に、チュートリアが欲しい。
んー……。
とりあえずステータスって念じてみるか?
ステータスオープン!
[種族] スケルトン
[状態] 通常
[ランク] E
[Lv] 1/10
[HP] 20/20
[MP] 15/15
[攻撃] 10
[防御] 13
[魔法攻撃] 0
[魔法防御] 0
[素早さ] 8
[所持スキル]
剣術Lv1 毒無効 夜目 ステータス閲覧
お? おおっ!?
本当に出た!? なんか頭の中に文字が浮かんできたぞ!?
しかも、これ日本語だよな……?
俺が日本人だから、それに合わせられてるのか?
あ、やっぱり俺スケルトンなんだな。
しかしアレだな。
改めて自分のステータスを見て思うんだが……。
絶対弱いよなこれ。
MPはあるみたいだが、魔法に限っては絶望的だ。
戦うならば、近接戦闘しかないか?
幸いな事に、スキルはちゃんと所持してるみたいだな。
これは多分、このスケルトンの体が元々から備わっているスキルって事でいいんだよな?
ふむふむ。
俺の所持スキルは3つか。
ステータス閲覧は、今俺自身のステータスが見れたコレの事だよな?
ならば、他の2つはどういう効果なのか。
これも、名前からして予想は出来そうだ。
毒無効。これは文字通りだよな?
毒が効かないってのはかなりいいんじゃないか?
まぁこの骨しかない体で毒食らってもなんの影響もなさそうだしな実際。
次に夜目。
視界の確保が出来てるのはこれか。
そして次に、剣術か。
名前から考えると剣で戦う時に、何かしらの補正でも働くのか?
俺剣道すらやった事ないんだが、大丈夫かな……。
でも、このスキルがあるのなら、武器にショートソードを持ってきたのは正解だったかもしれない。
一先ず自分のステータスが見れるのがわかった。
とりあえず一歩前進……だよな?
その後も俺は、細長い通路をひたすら進んでいたのだが、ふいに開けた空間に出た。
ここは、ちょっとした小部屋って所だろうか?
周囲を見回してみると、ガラクタのような物が散乱している。
割れた壺。壊れたテーブル。他にも壊れた人工物がいくつか散乱してるし、此処はかなり昔に放棄された遺跡とか……だろうか?
部屋の奥の方には、更に進める通路があるのが目に入った。
だが、その通路の前で、なにかもぞもぞと動く物も見える。
よく目を凝らして見ると、どうやらそいつは、鼠の死体のようなものを貪ってるようだ。
魔物……だよな多分。
そいつは、緑色の皮膚に剥げ上がった頭をしており、さらに額に小さな角が2つ生えている。
襤褸切れみたいな布を腰に巻きつけて棍棒を武器にしてるその姿は……
……まんまゴブリンじゃねコイツ?
どうやら、向こうも俺の存在に気が付いたようで、ゆっくり立ち上がりグギグギャと気持ち悪い声で威嚇して、持ってる木の棍棒を振り上げている。
これは、敵認定されたって事か?
俺も多分モンスター側だと思うんだが。
別にコイツの同種ってわけでは無いし、襲われるのも仕方ないのかもしれない。
ふと、思いつきステータス閲覧を目の前の魔物に発動してみる。
ひょっとしたら、自分以外のステータスも見れるかもしれない。
[種族] ゴブリン
[状態] 通常
[ランク] E
[Lv] 2/10
[HP] 35/35
[MP] 10/10
[攻撃] 16
[防御] 15
[魔法攻撃] 2
[魔法防御] 1
[素早さ] 13
[所持スキル]
棍術Lv1 夜目
あ、見れた。
相手はやはりゴブリンか……。
Lvは俺より高いが、スキルはそこまで凶悪そうでも無さそうだ。
しかし、ステータスは俺より全体的に高い。
MP意外全部負けてる。
というか、ゴブリンに魔法力で負けてるのかよ……。
しかし、今更だがこの世界にはLvという項目がある。
ならば恐らく相手を倒したりするとLvが上がるはずだ。
この先、戦闘せずに進むなんてのは無理だろう。
ならば、今後のために少しでもレべリングはしておいた方が無難だろう。
勝てるのか……?
でも道は此処しかない。そもそもあのゴブリンが俺を逃がすつもりは無さそうだ。
ああ……。
こちとら平和を愛する元日本人なんだがなぁ……。
もう少し平和的解決はできないものかね。
例えば例え話し合いとかさ。
あ……。俺まず言葉が話せないか……。、
それに、あのゴブリンも言葉を理解する知能があるとは到底思えない。
今にも俺に襲いかかってきそうに、グギャグギャ喚いて睨んでるし。
つまりこの状況は戦うしか無いのか。
相反だし、俺は説得を諦めてショートソードを構える。
先に動いたのはゴブリンだ。
相変わらずに、気味の悪い声を上げながら、手にした棍棒を振り回し真っ直ぐに突っ込んでくる。
といか、こいつけっこう速いぞ!?
俺の目前にやってきたゴブリンは、そのまま俺目掛けて棍棒を振り下ろしてきた。
どうにか右に転がるようにしてなんとか回避する。
咄嗟にカウンターを狙ってショートソードを振ってみたが、当たらない。
素早く左へ飛んだゴブリンが再び棍棒で殴りかかってくる。
意識はなんか反応出来たが、体がうまく付いてこない。
やはりこの体で激しい戦闘は厳しいか。
くそっ! 間に合うか!?
俺は後ろに転ぶように倒れこみ、ゴブリンの攻撃をギリギリ回避する事に成功した。
見た目は、尻もちをつくような格好でかなりダサいのだが、気にしないことにする。
頭上をゴブリンの棍棒が掠めていく。
危ない所だったな。
だが今度は、俺でも攻撃できそうな隙が産まれた。
俺は、未だ棍棒を振り切った体制のゴブリンへと、手にしたショートソードを振り下ろす。
俺に対して、攻撃を外すとは思っていなかったのか、はたまた油断していたのか。
どちらにしろゴブリンは回避が遅れ、俺の放った一撃は、その左腕を切り裂いた。
悲鳴を上げて、青黒い血を流してゴブリンが、その場から飛び退き、切られた腕を抑え憎悪の籠った瞳で俺を睨んでくる
体制が悪かったのもあるが、やはり与えた傷は浅かったようだ。
ゴブリンへダメージは与えられたが、あの腕を切断するまでにはいかなかったか。
いや。今の俺の力では、例え直撃させても切断するなんて事は難しいか。
だが、奴にダメージを与えられる事はわかった。
ならば、このまま時間をかけてでも攻撃を当て続ければ、いつかは倒せるはずだ。
ここまで来る間に分かった事だが、今の俺は精神的疲労は感じるが、身体的な疲労は感じないようなのだ。
戦いが長引けば、その分俺が有利になる事になる。
――いけるっ!
そう思い、俺は起き上がると、改めてショートソードを構えゴブリンと対峙する。
そんな俺に対し、再び真っ直ぐ突撃してきたゴブリン。
対する俺はショートソードを振りおろし迎え撃つ。
しかしゴブリンは、棍棒で俺のショートソードを左に弾き、さらに肉薄して来た。
先程腕を切られた事により、頭に血が上ってるのか、自身の防御を考えず滅茶苦茶に棍棒を振り回してくる。
咄嗟に距離を取ろうとしたが、奴の攻撃速度のほうが早い。
仕方なく、なんとかショートソードで攻撃を受け止めようと試みるが、受け損なった棍棒が風切り音を響かせ、俺の頭部へと迫ってくる。
咄嗟に頭を右にずらし頭部への直撃は回避。
たが、左肩に重い衝撃が走った。
鈍い打撃音。
幸い痛みは無い。
攻撃を受けた肩も、折れてはいないようだが、しっかりとしたダメージはあるようだ。
急ぎ自分のステータスを確認する。
[種族] スケルトン
[状態] 通常
[ランク] E
[Lv] 1/10
[HP] 13/20
[MP] 15
[攻撃] 10
[防御] 13
[魔法攻撃] 0
[魔法防御] 0
[素早さ] 8
[所持スキル]
剣術Lv1 毒無効 夜目 ステータス閲覧
やはり、俺のHPが減っているか……。
アンデッドの体とはいえ、そう何発も食らっていい訳では無いようだ。
くそっ……。
ゴブリンといえば雑魚の代表みたいなイメージなのだが。
それはあくまで普通の人間からしたらだろう。
今の俺は、そのゴブリンと同じか下手したらそれより下のスケルトンなのだ。
つまり、俺からしたらこいつも強敵に変わり無いわけか……。
改めてショートソードを握り直す。
右手はもとより左手もちゃんと動いてくれる。
まだ戦える!
肩に強烈なのを、貰ってしまったが、むしろ攻撃されたのが頭じゃなくって良かったと思う。
恐らくだが、この頭蓋骨こそが今の俺の急所だろう。
なんとしても頭部への攻撃だけは、防がなければならない。
自身の体の状態を再度確認しゴブリンの方を見ると
奴は攻撃を当てて少し余裕ができたのか、ケビケビと気持ち悪く笑って次の攻撃を繰り出そうと棍棒を振りかざしている。
まるで、もう勝った気でいるようで、それがなんだか無性に腹が立つ。
この野郎……。
再び振り下ろされた棍棒を、左に転がるようにして回避。
俺はそのままゴブリンの傷付いた腕を掴むと、その傷口目掛け思いっ切り噛みついた。
俺の突き立てた歯が、傷口の肉を更に引き裂き、骨まで達したのが感覚で分かる。
ゴブリンは、痛みに悲鳴を上げてて暴れ回る。が俺は意地でも口を離さない。
腕をつかんでいた手を離し、喚くゴブリンの角を掴むと、右に持っているショートソードの柄を、叩きつけるようにして殴る。
「グボバァッ!?」
よし。良いのが入った。
思わず口元が緩みそうになるが、そうするとこの拘束が解けてしまうので、より強く意識して歯を傷口に突き立てる。
奴の青黒い血が、俺の口内にドンドン入ってくるが気にしない。
今の俺は、物を食せないし呼吸も必要としない。
水だって飲めないのは証明済みだ。
飲んでも全部隙間から零れてしまうからな。
つまり、生身でこんな事をすると、本来相手の血が口内に溢れ、呼吸の妨げになるのだが、俺は骨と骨の隙間から全て流れるので、ひたすら噛み続けられるのだ。
我ながら原始的すぎる攻撃だと思うが、俺も命が掛かってるのだ。
どんな手でも使ってやる。
再びショートソード柄を、ゴブリンの顔面目掛けて振り下ろす。
鈍い音がして奴の牙が折れ、血を吐いた。
左手で角を押さえられてるので回避も出来ないだろう。
ゴブリンは俺の拘束をなんとか振り払おうと、棍棒で何度も殴りつけてくるが、痛みでうまく力が入らないのかダメージはさっきより軽い。
俺が殴れば殴るほど相手の抵抗も弱まっていく。
そこからはもう一方的だった。
力の限り追撃で柄を使って顔面を強打する。
生物にとって顔は急所の塊だ。
口、鼻、目等。鍛えられない個所が集中していてダメージを受ける事を避けるべき個所である。
だからこそ、集中的に攻撃する。
ゴブリンが声にならない悲鳴を上げ暴れ喚く。
時間にして3分も経ってないだろう
短い時間だが、その間に俺は力の限りゴブリンを殴り続けた。
もはや、抵抗する力は無いのか奴は虫の息だ。
俺は最後にもう一発、ゴブリンへショートソードを叩きつけると同時に、噛み付いていた腕を離した。
「ギィ…ギャァ……ガァ……」
ゴブリンは床を転げ回り、ひゅーひゅーと息を上げている。
もう、立ち上がる力は残っていないようだ。
しかし、あれだけ殴ったのにまだ死んでないのかと飽きれる。
そういえばこいつHP35もあったもんな。
俺の攻撃力が低いのもあるが、時間がかかった物だ……。
俺はゆっくりゴブリンに近付き、その頭を踏みつけて動きを止める。
ゴブリンが絶望したような目で俺を見ているが、すでに状況は積みだ。
俺はショートソードを両手で掴み直すと、ゴブリンの喉に狙いをつけて、刃を切り突き刺し止めを刺した。
「グ、グプァ……」
最後に小さな悲鳴を上げると、ゴブリンは力尽き、そのまま動かなくなった。
なんとか倒せたか……?
物言わぬ屍に変わったゴブリンからショートソードを引き抜く。
刀身にも柄にも奴の血がベットリ付着している。
しかたなくゴブリンの纏っていた襤褸切れで返り血を拭き取る。
壮絶な戦いだったと思う。
ただのゴブリンとですら死闘か……
はたしてこんな調子でスケルトンに未来はあるのだろうか?
肉体的な疲労は無いが。精神的にはかなり疲れた気分だ。
時間にして10分も立ってないはずなんだが1時間くらい戦ってた感覚がする。
それほど集中していたのだろうか?
日本では経験したことのない命のやり取りだったからかもしれない。
今回は本当に運が良かった。
たが次ははたして勝てるのだろうか。
そんな不安が俺を襲う。
だがこのまま此処で、のんびりしていてまた別の魔物でも出てこられたらまずい。
なるべく早く離れたほうがよさそうだ。
そう思い立ち去ろうと、足を動かした瞬間突如頭の中に、声が響いた。
それは、無機質な女性の声だ。
【経験値を10獲得しました】
【獲得経験値が一定値に達しました。Lvが2に上りました】
なにっ!?
一瞬、今まで感じたことがない感覚が俺を襲った。
今の頭の中に響いた声は何と言っていた……?
Lvが上がったとか言ってなかったか……?
と、とにかく一度ステータスを確認しないと。
[種族] スケルトン
[状態] 通常
[ランク] E
[Lv] 2/10
[HP] 13/25
[MP] 18/18
[攻撃] 13
[防御] 16
[魔法攻撃] 2
[魔法防御] 2
[素早さ] 10
[所持スキル]
剣術Lv1 夜目 毒無効 ステータス閲覧
おお、本当にレベルが上がってる……。
そうか。
さっきの未知の感覚が、レベルが上昇する感覚なのか。
紛らわしいな……てっきりダメージか何かと思ったぞ。
ふむ。
見た限りスキルは特に変化がないな。
HPは回復してないのが少し不安なんだが、これは自然回復してくれるのだろうか。
この体では眠る事が出来ないからその辺が不安だ。
他の能力も少しずつ増えているな。
どれどれ……。
軽く腕や足を動かして各関節の動きを確認する。
おお。
なんかさっきより、全体的に体が軽いし動きやすくなってないか?
ためしに一度、ショートソードを素振りしてみる。
うむ。
さっきの戦闘の時は、こんなに早くショートソードも振れなかったはずだ。
身体能力は問題なく上がっているようだ。
これなら、ゴブリン1匹程度なら、もう少し余裕をもって戦えるかもしれない。
今回は、初めての戦闘だったからか、俺も勝手が分からず手痛い反撃を食らってしまった。、
しかし、あのゴブリンの動きを思い出す限り油断さえしなければ、次は無様な戦いにはならないと思う。
Lvがもっと上がれば、更に楽に戦ってけるはずだ。
正直戦う事が目的じゃないんだけど、この世界で生きていくためには、ある程度の強さが無いとダメそうだ。
今後もより慎重に進みつつ、ちまちまとレベルを上げていこうかね。