第七章:ペットはどうする?
「なぁエンディ」
隼は先導するエンディに聞いた。
「俺さ、さっき自分で言って気がついたんだけど、お金一円も持ってないんだ」
もし自分が魔術系ならお金は必要だったはず。でもそのときはどうするのだろう?エンディが代行してくれるのだろうか?だとすれば申し訳ない。
背中越しにエンディが答える。
「ああ、それは心配いらないよ」
「え?」
「新米魔法使いには契約書が渡されて、それに名前と了解のサインをするだけで王国から補助金が下ろされるからな。そして先に言っておくと、補助金は最低限の支給だから{その店で一番安価な商品}しか買えない」
その後、商店街の人口は急激に増加した。空にも多くの魔法使いが箒に乗って飛び交いはじめた。エンディが言うにはそれは王国のパトロール隊員で、事件が起これば瞬時に駆けつけることができるようにと町中を徘徊しているらしい。しかしここまで大勢で出動したら、悪気も何も無い一般市民が強張ってしまうのではないか。
「いや、もうみんな慣れてるよ。それよりかむしろ、頼りがいがある味方だと安心している」
ということで、警戒しているのは隼だけらしかった。
しかし、パトロール隊員らしき人でない者も多く見受けられる。きっとこの時間帯は、人混みが激しくなるのだろう。もしくは休日で、ショッピングを楽しむ人が増えてきたということかもしれない。
ちなみにパトロール隊員の服は、他の人と一見違う。青の強い赤、青紫色のローブが彼らの目印らしい。
二人は人混みをかきわけ、一本道だった商店街を二つに分ける分岐点まできた。そこでエンディは立ち止まる。
「ここがペットショップだ。こんなごった返したところで立ち話もなんだから、まず中へ入ろう」
そういうと彼は、ペットショップと指差した派手な雰囲気の店へと足を踏み入れた。隼もそれに続く。
店内はものすごく華やかで、とても明るかった。
まず目に入ったのは、天井の蝋燭空間である。そこには十字を描くように一定間隔で蝋燭が綺麗に並べられていた。しかも蝋燭の色や炎の色が多種多様で、必ず蝋燭と炎が同色になるように作られている。そして次に目に入ったのはカウンターのワイングラスだ。グラスそのものは透明なままだが、中に入っている水らしきものが強い七色の光を放出していた。それは綺麗というより神秘的であった。さて、肝心の動物だが見渡している限りはどこにも見当たらない。ペットはペットで別の部屋に隔離されているのだろうか。
「いらっしゃい!」
美人のお姉さんが猫を抱きながら現れた。
「あら、エンディじゃない。今日はどうかしたの?」
どうやらエンディの知り合いのようだ。
お姉さんは気持ちを切り替えるように頭をバッと動かした。太腿あたりまでのびた茶色の髪が揺れる。
「ああ、今日は本当にペット目当てでやってきたんだ。こいつ用のな」
エンディはチラっと隼を見た。お姉さんはふっと笑いかける。
「あらそう。つまり新米さんってことかしら。ふふふ、可愛い子じゃない」
お姉さんの吸い込まれそうな瞳に、隼はぽかんとしていた。どう口を開いていいものかわからなかったからだ。
「姉貴、俺たち真面目なんだ。」
「あら、あたしだって真面目よ?……そうねぇ、エンディの教え子ならちょっとオマケしちゃうわ。どうせその子、お金ないんでしょ?」
(いやちょっとまて)
「あの……」
俺この人の教え子になる気なんかない、と言おうとしたとき、エンディが急いで返答した。
「ああ、ちょっとイイのを頼むよ」
「オッケー!」
お姉さんが店の奥へと立ち去ったとき、エンディが隼に耳打ちした。
「姉貴は俺の知り合いには優しくしてくれる。教え子ならなおさらだよ。だからちょっとの間そのつもりでいてくれ」
「わかったよ」
そして短い囁きが終わったとき、奥からお姉さんが戻ってきた。二人の前に立って言う。
「ペットは犬・猫・ツバメ・猿・リス・カタツムリ・ヤドカリ・テントウムシの八種類よ。ほんとは四種類が規則なんだけど、お金があれば規則なんてないから、オマケしてあげる」
名前を聞いた瞬間から、隼が希望するペットは決まっていた。
近々大事なテストがありまして……急いで書き上げました^^;少し更新が遅れ気味になるかもしれませんが、ご了承ください