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一日目-七 松天街の老舗
自転車を、すぐそこの島革屋の地下駐輪場に停め、松天街に入る。
「ところで、何をしに来たんだ?」
「ん? ああ、とりあえずはお昼ご飯かな。十二時近いし」
腕時計を見ながら言う。
「いつものとこか?」
雅司が三ヶ月前のことを思い出しながら聞く。
「うん」
少し歩くと、老舗感がある面構えのうどん屋さんに着く。
がらがらと、音をたてる扉を開け、中に入る。
「いらっしゃい。何だ、お前らか……。雅司は復活したんかい?」
「はい。こいつ息切れすらしませんでしたよ」
瑞が苦笑しながら言う。
「久し振りですね。更木さん」
更木さんこと、更木勲はこのうどん屋さんを経営している人だ。
年齢は五十代半ばのいいおっさんだ。
須藤家とは昔から付き合いがあり、相談などにのってもらったりした。
「更木さん、きつねうどん卵のせで」
「俺は天ぷらうどんで頼む」
瑞、続いて雅司が頼み、更木さんがはいよと返事をする。