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一日目-六 石那から革松
息を荒くした兄をどうにかなだめ、瑞と雅司は自転車に乗り、町まで行った。
須藤家のある石那町の隣町、革松市の商店街にだ。
道中。
「兄さん……。よく息切れもせずこげるね……」
三ヶ月も引き込もっていたのに、と付け加えながら瑞は言う。
「部屋を暗くしていたわけでもないし、窓も開けていたからな。それにずっと立ちっぱなしだったのだ、体力も衰えてはいない。それに俺は、むしろお前が心配だ」
雅司の心配……瑞の男装のことである。
瑞は男物の長袖Tシャツの上にパーカーを着て、下は男物のジーンズだ。下着も、もちろん男物。
上から下まで見たあと、ため息を吐いて、
「どうしてこうなったのだろうな……」
「それはお互い様じゃない?」
話ながら数十分、革松市の商店街、松天街に到着した。