始まり
閉じ込められていた部屋の外は細長い廊下になっていた。
壁はグレーで鉄骨が丸出しになっている。
長い廊下の10mおきくらいに何個か扉があり、
中は見えないが、すべの扉に錠がついている。
なんだほんとに刑務所みたいだ。
駆男は、自分の両手つけられた手錠を見つめながら、
自分の夢の世界の精巧な作り具合に感心していた。
手錠は部屋をでるときに、さも当然かのようにきつね目に
つけられたが、駆男は、夢だしなんでもいいやと
あえて抵抗しなかった。
長い廊下の隅まで歩いていくとそこには、エレベーターがあった。
エレベーターに入ると、そこが地下であることがわかった。
きつね目は、37Fのボタンを押した。
きつね目は部屋をでてから、そこまでなにも話さなかった。
この建物はビルのようなものなのか?
駆男はこれから起こることに少し気持ちを高ぶらせていた。
というのも、駆男は昔から冒険心が強く、よく見知らぬ土地に旅行にいった。海外が好きで、それも安全性があまりない、発展途上国が好きだった。
なんで危険なところにいくのかという問いに駆男は、
刺激があるから。と答えた。
ギャンブルにしろ、危険なところの旅にしろ、
駆男は刺激を求めた。心臓が大きく脈打つことに対して、
依存していたのかもしれない。
そんな駆男にとって、このような映画のシーンのような
出来事は、心を踊らされずにはいられなかった。
そのときは、すっかり夢であることなど忘れ今後の展開を
待っていた。
エレベーターが止まり扉が開くと、そこは応接室のようになっていた。
ガラスのテーブルがあり、そのテーブルを取り囲むように、茶色の皮ソファーが置いてある。
ソファーセットの奥は大きなガラス窓になっていて、外が見渡すことができた。
外はそこそこ栄えた田舎町といったところか。
現実のそれと代わりなかった。
そしてその窓越しに外を見渡すように、
白髪の髪の長い老人が背を向けて立っていた。
グレーのスーツを着て、手を後ろに組んでいる。
これまた、映画のシーンのようだと駆男は思ったが、
自分の夢なのだからそんなものかと、少し冷静になった。
「壇さん、連れてきました。」
「私は反対です。こんな変態野郎」
こちらに一瞥し、そういうと、
きつね目は一礼をして颯爽とエレベーターに乗って行ってしまった。
壇さんという名のその老人は、老人にしてはでかく髪の毛がフサフサだった。
そしてその大老人はこちら振り返り、笑いかけた。