近藤操2
改札を通り、人混みの中を抜け舞い上がりそうな気持ちを
押さえながらホームにたどり着き電車を待っている間、
操はふと1年半前に別れた彼女、愛実のことを思い出していた。
なんの取り柄もない普通の女のコ、天然でほうっておけないタイプの
、しっかりもので、困っている人をほうっておけないタイプの操には
ぴったりだったのかもしれない。
操が勉強に集中したいから、別れようという話をしたときも、
愛実は、
「操くんのためなら仕方ない」と笑って別れたのだが、
そのあとすぐに、お財布忘れて、電車のれない帰れないと
メールが入り、助けたのを覚えている。
愛実はどうしているだろうか。試験に合格したことを報告したら、喜んでくれるだろうか。
そんなことを考えているうちに、電車が到着した。
同時に操は、考え事をやめ、電車に乗り、席に腰を下ろした。
電車が動き出すと、操はなんとなく辺りを見回した。
電車内は思いの外空いていた。
大学生らしき男女のカップル、小さな子供とその母親、
競馬新聞を持ちながら、楽しそうに話をしている、初老の男性三人、
他に営業ぽい会社員の男性が数人。
昼間の電車なんてこんなものだろう。操はスマートフォンを取りだし、
合格の報告を友人達にし始めた。
「開くドアにご注意下さい。」車掌のアナウンスとともに
ドアが開いた。操の最寄り駅まではまだ、4駅ほどある。
小さな子供とその母親がおりるようだ。
その親子が電車を降りようとしたその時、
何やら電車の入口にすごい早さで走ってくる男性が見えた。
その男性がぶつぶつと何かを唱えながら、
親子がでようとしているのも気にせず走ってくるのを見た操は
咄嗟に立ち上がった。
その男性が親子にぶつかると同時になにかが光り、
その光を感じる間があるかないか、操の意識はなくなった。
男性が身に付けていた爆弾チョッキは男性もろとも電車の一号車分を大破させた。