異変2
お父さん、お母さんごめんなさい。
なんの親孝行もできずに先逝く私をお許しください。
駆男は今まで使ったこともないような、言葉遣いで、
心の中で目を閉じた。
「最首くん、最首くん」
長身のガタイのいい男の呼ぶ声が聞こえて、
目をあけると同時に、
大老人は、猫でも掴むように駆男の首元を掴み、
ひょいと立たせた。
「大丈夫である。」
「何が大丈夫?刃がささってる。背中から突き刺さってる」
生まれたての子羊のように震える膝で、なんとか立ちながら、
駆男は言った。
「なんだこれ。死ぬのか。やだ。ごほっ」
駆男の言葉を無視するかのように、
きつね目の男が近づいてきた。
そして、背中側に回り込むと、西洋刀のような刃の柄本を握り、
駆男の腹に刺さっていたそれを一気に引き抜いた。
「ぐはっ。うがぁぁぁ」
「死なん。夢である。」
駆男が断末魔のような雄叫びをあげるのに被せて、大老人は
言った。
駆男はその言葉に反応した。
「夢」
「腹の辺りを触ってみるである。なんともないである。」
駆男は、言われるがままに刃が刺さっていた自分の腹の辺りに触れた。
「なんともない。」
そう言うと、駆男は突然、顔に血がのぼってくるのを感じた。
そうだ。これは夢の世界だ。駆男は今まで見たどんな夢の世界でも、
自分は無敵だったことを思い出した。
恥ずかしい。
「お前、俳優か?」
きつね目の男が追い討ちをかけるように言葉を放った。
「本部へ帰るである。」
大老人が言った。




