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第一話 剣姫 (つるぎひめ)


 憂鬱、今の感情を支配する言葉。


 俺の名前は後藤かなめ、高校一年の男子だ。

 髪はやや短く、身長はごく平均。どこにでもいる男子生徒になる。

 今いるここは高校の生徒会執行部専用の部屋。なかなか広く、ドアを開けると直ぐに校長室にありそうな高そうなテーブルとフカフカのソファーが鎮座している。

 奥には生徒会会長専用の机と椅子、やはり高そう。

 俺は生徒会の会計なんだが、なりたくてなったんじゃない。


 俺は被害者だ。


 何故かと言うと、この高校の会長が無理やり俺を生徒会に引き入れたのだ。

 普通、選挙をして決めるのが当たり前だと思う。だが会長のわがままで自分で生徒会を作ると宣言し俺は被害に合う事に。


 なぜ俺を入れたのか、その理由を話す前に会長の事を教えないといけない。


 名前を宝条院聖羅(ほうじょういんせいら)、この高校の一番の有名人だ。

 会長の母親がPTAの会長、父親が国会議員。校長や他の先生は頭が上がらなくて、学校を事実上牛耳っている厄介人。


 ある時会長が選挙は廃止、生徒会は自分で見つけると宣言。

 全く迷惑な話だ。

 俺を引き入れた理由が何とも意味不明だ。


 ある日俺が数学のテストで高得点を取り友達に自慢している時だった。その話は廊下まで聞こえていたらしく、そこを丁度良く通り掛かった宝条院聖羅が教室に乱入し俺にこう言うやがった。


「今日からお前に生徒会の会計をやってもらう!」


「……はい?」


「これは命令だ! 拒否権は無い! もし、わたくしの命令を聞かなければ退学だ!」


 なんて無茶苦茶な。そしてなぜ俺を選んだのかと言うと。


「誰でも良かったのだが、丁度数学得意そうな話を聞いたからお前にした。光栄に思え!」


 誰でもってのが何だか嫌だが、ここまでの話で何故憂鬱な気分になるか分かると思う。

 さて、この部屋には俺を入れて三人が生徒会の仕事に励む。

 被害者は俺だけでは無かったのだ。


「参ったな~、仕事が多過ぎるよ~」


 この声の持ち主はソファーに座り頭を抱えている女子だ。

 名前は皆川真(みながわまこと)、高校二年で栗色の髪が腰まで伸びていて長い。眼鏡を掛けていてなかなかの美人。性格は優しく後輩の面倒見が良い。

 彼女は書記として連れて来られた。選ばれた理由ってのが、字が綺麗だったから。

 俺と同じ様な理由。


「皆川先輩も大変だね」


「後藤くんそっちの仕事終わった? 終わったならこっちのも手伝ってよ。今日は彼氏とデートなのにこのままじゃ日が暮れるよ!」


 ご愁傷様です。俺だって会計の仕事で手が塞がっているんだ。

 そう思っている時にこの部屋にいるもう一人が喋り出した。


「口を動かさずに手を動かした方が効率的だと思いますが?」


 この人は高崎政史(たかさきまさふみ)、三年の男子。短い髪に鋭い目で、この高校で女子に大人気のイケメン。

 性格は真面目な人だ。彼は副会長でなんでも会長とは幼馴染みらしい。


「うう~、副会長の意地悪!」


 高崎副会長は正に会長の犬。会長の言う事を必ず聞く。だから仕事をさぼると怒る。

 まったく、監視されてるみたいだ。


「あ、そう言えば会長は?」


「会長は新たな人材を探しに行っています」


 また犠牲者の誕生だな可哀相に。

 おっと、いけないいけない早く仕事終わらせないとな。


 俺達がそれぞれ自分の仕事をしていると突然ドアが開く。開いたドアから現れた人物は会長、宝条院聖羅だった。

 髪は金色で長い。身長が高く、相当な美人。ただ何もしなければの話だが。性格は自己中心的なわがままで喋ると男口調。だが、自分の事をわたくしと呼ぶからなんとも変な感じだ。

 そんな会長がここにいる三人の顔を見回してから誇らしげに喋り始めた。


「ふふふ、お前達喜べ! 新しい仲間だ!」


 そう言ってドアの外へ手招きし、その人物を呼ぶ。


「え? あ、あの……これは一体なんですか?」


 声からしてどうやら女子らしい。


「いいから入れ! 言う事聞かないと退学だぞ!」


 そんな事で退学になったらたまったものじゃ無いぞ。まったく本当にわがままな会長だ。

 手招きが段々と激しくなりようやく新たな被害者が観念したらしい。姿をみんなに晒す。


 黒くて長い髪を後ろで束ねてポニーテールにしている。ブラウン掛かった瞳が綺麗だった。華奢な身体、身体のラインから女性だと分かる。

 制服は男子と同じスラックスだった。うちの学校は制服の自由度が高いから女子がスラックスを履いているのは珍しくはない。

 幼さの残る顔を可愛いと思った。

 彼女から目が離せない。なんだろう初めてだこんな感覚は。


「自己紹介をしろ。早く!」


「は、はい!」


 ちくしょう、あんなに可愛い娘に怒鳴るなんて会長は鬼か。

 震えながら彼女が言葉を口から零れ落とす。


「あの、ボクは……その、ええっと……」


 自分の事をボク、か。

 女の子なのに変わった言い方をするんだな。


「もたもたするな! 早くしろ!」


 怒涛の声が彼女を縮こまらせてしまう。ちくしょうめ、会長に一言言ってやるぞ。


「会長! それはあんまりなんじゃないんですか!」


「……ほぅ? 後藤、わたくしに意見するのか? 良い度胸だな」


 はっ! ヤバイ会長は空手の有段者だったの忘れてた。

 しかしこれだけは引けるか。


「彼女が困って……」


 と続きを言う前に会長が副会長に何やら手を鳴らし合図、直ぐさま副会長は俺まで急接近して腕に関節締めを発動。


「お仕置だ後藤、食らえ!」


 脇にスルリと会長の手が。激しく指が動き始めた。


「ぎゃははははは! や、やめ……ぎゃはははははははははは!」 


「ほれほれ! 悪いのは誰だ? ほれ!」


「ご、ごめんなさい! 俺が悪かったですから! ぎゃはははは!」


 無念にも惨敗だった。

 死の世界を垣間見た俺は床に倒れ放心するしかない。ああ、死ぬかと思った。

 そんな惨めな様子に心配そうに皆川先輩が声を掛けてくれた。


「後藤くん大丈夫?」


「み、皆川先輩……俺、三途の川が見えました」


「あの……大丈夫ですか?」


 突然の声、これはあの黒髪の女子だった。

 彼女はしゃがんで俺を心配そうに覗く。

 心配させない為直ぐに立ち上がり大丈夫だとアピールを開始。


「だ、大丈夫だよ! 心配ないさ!」


 良かったと彼女が呟く。優しくて可愛い、どっかの誰かさんとは大違いだよ。


「ふん、手間を取らせやがって。……さぁ、自己紹介だ!」


 か弱い声で返事をし、ゆっくりと立ち上がる。

 皆が見つめる中、自己紹介を始めた。


「ボクの名前は……柳刃誠十郎(やなぎばせいじゅうろう)です。なんだか良く分からないですけど、よろしくお願いします!」


 失礼だが時代劇に出てきそうな凄い名前だと思った。

 男の名前、彼女には不釣り合いな感じを受ける。


「良く出来た! さてお前達、生徒会もこれで全員そろった! このメンバーで学校を守って行くぞ!」


「守るってどう言う事ですか?」


 皆川先輩の質問に会長がニヤリと何とも嫌らしい笑いを浮かべた。

 うわ、あの顔って絶対妙な事を考えているに違いない。


「あははは! よく訊いたな皆川、いいか良く聞け! 生徒会は学校の秩序を守らなければならない。しかし我々は秩序を守り切れてないのだ!」


 はて、どう言う事だろうか。守れていない?

 気になるその続きを会長は語る。


「色んな事件が続く学校、秩序を乱す不良供、苛め問題、タバコ、酒、まったく嘆かわしい。……そこでわたくしは考えた! 生徒会はこの学校の問題、事件を我々独自で解決する、防衛生徒会を結成する事を!」


「……へ?」


 間抜けな声が俺の口から出やがった。

 防衛生徒会? なんだよそれ。

 ほら副会長以外みんなぽかんとしているじゃないか。会長の言いたい事は分かるけど。


「会長、素晴らしいです」


「うんうん。そうだろう、政史」


 副会長が会長を褒め称えていた。


「あの……具体的に何をするんですか?」


 皆川先輩の質問はこの場にいる俺達みんなの気持ちそのものだろう。


「具体的にはだな、事件を未然に防ぐ為に校内のパトロール。もし何らかの事件が発生した場合、防衛生徒会で問題の処理、解決をする。と、言う訳で早速パトロールに行って来い!」


 行って来いって、むちゃくちゃだな。

 まだ生徒会の仕事終わって無いのに。そう思っていると皆川先輩が会長に何やら抗議を始めた。


「あ、あの会長、私、今日大事な用事が……」


「却下しろ!」


 酷い。あ、先輩泣いてる、可愛そう。皆川先輩は彼氏がいて学校でも有名なバカップルらしい。おとなしそうな感じに見えるんだけどな。


「あ、あの、ボクは何をするんですか?」


 柳刃さんが困り果てていた。それは当たり前だ、連れてこられてこんな話しをいきなり言われたら誰だってこうなるはず。


「柳刃は生徒会に入るんだ! 拒否権は無い。役職は……後で考えておく」


 考えとくって適当に連れて来たのか? なんか俺達より可愛そうな気がするぞ。


「ボクが……生徒会」


「そうだ! さぁ、学校の秩序を守って来い!」


 そう言われて俺達はしぶしぶ部屋を後に。あ、副会長は一歩も動かないぞ、来ないのかよ。ずるい。


「……取りあえずどうします?」


 問い掛けに皆川先輩が申し訳なさそうに両手を合わせて懇願をしてきた。


「ごめん、彼氏のところに行かせて? 今日だけでいいからさ、このお礼は必ずするから」


「はぁ、分かりましたよ。じゃあ、終わったらメールしますから」


 携帯のアドレスは生徒会に入った時に何かと便利だと言う理由で知っている。

 当然、会長と副会長のもだ。


「ありがとう後藤くん! 君は良い人だよ!」


 と調子の良い事を言って走り出して行ったのだった。まったく先輩も仕方ないな。

 ん、ちょっと待てよ? 今、俺は柳刃さんと二人っ切りだな。

 やばい、そう考えたら心臓が悲鳴を上げて来やがった。


「えっと柳刃さんだったよね? 紹介が遅れたけど俺の名前は後藤かなめ、かなめって呼んでくれていいから」


「あ、はい、分かりました。かなめ……さん。ボクの事は……えっと」


 柳刃さんは困った顔を浮かべる。そうか、多分名前で呼ばれたくないのだろう。


「えっと……ん……」


「あ、あのさ、呼び方が決まるまで柳刃さんって呼ぶよ」


「助かります。ボクはこの名前が嫌いですから」


 嫌いか、何で彼女に男の名前が? 訊きたいけどそれは失礼になるだろう。だから訊かない事にする。

 それに今は会長の言いつけを守らないと命がやばそうだ。


「とりあえず適当に行こうか?」


「はい。ふつつか者ですがよろしくお願いします!」


 ペコリと頭を下げる柳刃さんの仕草が何だか可愛らしかった。

 それから二人で廊下を適当に歩いてパトロールなるものを開始する。

 そんな中柳刃さんは何故かやる気満々。


「かなめさん頑張りましょう!」


「……柳刃さんはやる気いっぱいだね」


「はい! だって会長さんはこの学校の事を一番に考えているって思えて。あんなに純粋に学校の平和を思えるなんてすごいです。ボクはこの人の役に立ちたいって思いました」


 学校を一番にか。柳刃さんには悪いがちょっとそうは見えなかったな。ただ俺がそう見えないだけで実は人を見る目があるのかも知れないな柳刃さんには。

 とそんな事を考えていると廊下の先が騒がしいのを感知する。

 なんだ?


「なんでしょう? かなめさん行きましょう」


「あ、うん」


 二人が駆け付けた場所は一年の教室だった。放課後の教室に男子生徒が四人いたのだが少し様子がおかしい。

 男子三人が一人の生徒を取り囲んでただならない雰囲気だ。

 見るからに三人は悪そうな奴等だ。囲まれている生徒はメガネを掛けている気弱そうな男子。

 なんだこれ、苛めか?


「お前マジ見てるとイライラすんだよな~、とろくてさ」


「そうそう。マジウザイ、消えてくんない? 俺らの視界から、ぎゃはははは!」


「そ、そんな……」


 なんだあいつらは、弱い者苛めをして何が楽しいんだ、俺はこういった奴等が大っ嫌いなんだ。

 この性格のせいで痛い目にあった事が結構ある、やめていれば痛い目には合わなかっただろうに。

 でも、自分が決めた事を曲げるのがもっと嫌なんだよ。


「何やってんだお前ら!」


 そう叫んだ途端に不良三人がこっちをギロリと睨む。

 三人の真中にいた男に見覚えがある、苛めをしていたのはあいつか。


「あ? ……お! お前“かなめちゃん”じゃ~ん。なんだよ、また正義の味方のつもりかよ? はっ、やる気か? その綺麗なお顔が傷付いちまうぜ?」


「ぐっ……」


 人が気にしている事を。こいつを知っている、何故なら同じ中学だったからだ。

 金髪のツンツン頭に左耳だけ銀色のピヤスをした不良。名前を霧島零(きりしまれい)。こいつとは中学時代からの犬猿の仲だ。


「零、誰だよこいつ?」


「ああ、こいつは中学で一緒だったかなめちゃんって言う奴だ。可愛い顔してるだろ? まるで女みたいでさ」


「おっ、マジだ。きゃわいいな~、ぎゃははは!」


 確かに女性の様な顔をしている。昔からこの顔が災いして色んな事を言われた。

 この霧島が一番馬鹿にする奴だ。


「んで? かなめちゃんよ、オレらをどうしようってんだ? あ?」


「お前達を止める。一人に三人で嫌がらせをする様な卑怯者が許せないからな!」


「……なんだと?」


 奴等が俺を標的にし近寄って来る。 


「あ、あの、かなめさん」


「柳刃さんは逃げて!」


「女が女の前でカッコつけてんじゃね!」


 三人が同時に殴りかかって来る最中、俺は霧島目掛けて走り拳を握り締める。だが、口先だけで喧嘩は強くない。

 直ぐに返り討ちにあってしまうはめに。


「お前さマジ阿呆だろ? なぁ……おい!」


 順番に腹や背中を蹴られて行く。痛たい、本当無力だなちくしょう。


「止めて下さい!」


 と叫んだのは柳刃さんだ。霧島達は柳刃さんを睨む、だが直ぐにニヤニヤと嫌らしい笑いを浮かべている。


「うひょ! めっちゃ可愛いじゃんよ!」


「マジ俺のタイプだよだぜ。こんな女男なんて放っといてさ、俺らと遊ばない?」


 不良の一人が柳刃さんに近寄って行く。 

 くそ、柳刃さんに手を出すな!


「止めろ! 汚い手で柳刃さんに触れようとするな!」


「けっ、ウザいんだよかなめちゃんよ!」


 霧島に殴り倒され地面に叩き付けられてしまいその勢いで教卓が倒れ不快な音が教室に響く。


「ぐ……」


「あははは! かなめちゃん良い格好だぜ? だからお前は……」


 何かを言いかけたその時、霧島の言葉を遮る叫び声が響いた。

 何が起きたのかを知る為に叫びの発生源を瞳で捕らえる。

 叫び声を放ったのは不良二人組だった。

 二人はなんと床に倒れているではないか。

 何が起きた?


「ボク……おつむに来ちゃいました」


 そう言葉を奏でたのは柳刃さんだった。彼女は右手に長いほうきを持つ。

 後ろの掃除用ロッカーが開いている、どうやらあそこから取り出した様だ。


「柳刃……さん?」


「かなめさんを苛めちゃダメです! ボク、怒っちゃいました!」


 まさかこれを柳刃さんがやったのか? もしそうなら柳刃さんって一体何者だ?

 そんな考えが渦巻く中柳刃さんはほうきを自分の前に構えた。

 これって多分剣道の構えみたいだが。


「なんなんだお前、やられたいのかよ!」


「お仕置です。謝っても許してあげません」


 と言ったと思った刹那、一瞬の内に霧島の懐に侵入。速い。

 そして隙かさずほうきを霧島の腹横に入れ打撃を与え苦痛の顔を生む。


「胴!」


「ぐわぁあ!」


 一瞬の出来事。霧島は苦しそうに地面に蹲っている。

 や、柳刃さん強い! 彼女がくるりと振り向き俺を見つめた。

 振り向いた時にポニーテールがなびき胸が熱くなる。

 そんな不思議な感覚を覚える。


「やはりわたくしの目に狂いはなかった様だ」


 この声と共に会長、宝条院聖羅と副会長、高崎政史が教室に入って来た。


「か、会長……?」


「後藤、柳刃は中学時代に剣道の全国大会で優勝した剣術のスペシャリストだ!」


 剣道の全国大会で優勝しただと、それは凄い。なら柳刃さんが何故こんなに強いのかが良く分かる。


「わたくしは柳刃がこの高校を受験したと聞いてずっと目を付けていたのだ。あの強さは防衛生徒会に必要だったんだ、やはり素晴らしかったな」


「あ、あの……」


 恐る恐る声をふり絞ったのは苛められていたメガネの男子だった。

 しまった、完全にこの人を忘れてた、取りあえず声を掛けないと。


「大丈夫か?」


「あ、ありがとうございました」


「良いって良いって、勝手にやっただけだからさ」


 そう言ってメガネの男子は頭を下げてから下校して行った。

 その最中、霧島と不良共が廊下へと逃げ出して行く。


「ちくしょう、覚えていやがれ!」


 嫌々、素晴らしく雑魚敵が良く言うセリフを吐く奴だ。

 そんな惨めな捨て台詞を投げ付けて逃げて行く三人だった。


「馬鹿者! 廊下を走るな!」


 と会長が怒涛を奴等に。怒鳴る姿は勇ましいく思う。

 まったく、などと呟きながら柳刃さんに近付いて行き肩に手を。


「良くやったな柳刃。最初の事件はこれで解決だ。お前にはこれから働いてもらうから覚悟しろ! 良いな!?」


「はい! 頑張ります!」


 ちょっと待った、あっさりと了承しちゃったよ、大丈夫かな?

 何故だろう、柳刃さんが会長を尊敬の眼差しで見詰めているのは。


「さてと、後藤……」


「はい?」


「皆川はどうした?」


 しまった、皆川先輩の事をすっかりと忘れてた。これはヤバイぞ、どうする? 上手く説明出来るだろうか。


「み、皆川先輩は別の場所のパトロールに……」


「ほぅ……時に後藤、窓の外でイチャイチャしているバカップルの女が皆川見えるのは気のせいか?」


 へ?


 恐る恐る窓の外を眺める事に。そこは体育館の裏側が丁度良く見えていて、皆川先輩とその彼氏が二人で何やらラブトークを。

 なんて運がないんだろう。ご愁傷様です。


「皆川は後でお仕置をするとして……後藤、お前わたくしに嘘吐いたな? おい政史!」


「はい会長」


 また副会長に手で何やらサインを送る。

 ちょっと待って、やめようよ、やめ……。


「ぎゃははははははははははは~!」


 思う存分くすぐられ視界が涙で歪む。

 こうしてこの妙な生徒会が始動する訳だが果たして、この先に何があるのやら。

 



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