絵の具と先生
粗末なあまり座り心地のよくない椅子に腰掛け、かれこれ一時間ほどゆられている 僕は今県外の展覧会へ赴くため、電車に揺られているところだ
流れる景色を車窓から眺めていると、突然窓の外が真っ暗になった どうやら、トンネルにはいったようだ 景色を楽しむこと意外今の僕にすることはない つまり、トンネルに入っている間はずっとヒマなのだ。
窓から目を離し、小さな溜息を吐く あいにく、本も、ゲームもヒマを潰せるであろう物は何ひとつもってきていない することもないので、昔話を思い出すことにしよう
これは、僕が小学生の頃の話になる 僕が通っていた小学校は、ごく普通の公立小学校 結構な田舎だったものだから、生徒の数もそれほど多くなく、1クラス13人という規模の小さなものだった だから、同級生のことはよく覚えている でも、その中で特に僕の記憶に残っている子がいた
彼は、勉強もスポーツも何もかも平凡以下といえるようなものだった 授業で当てられれば、必ず四苦八苦し、体育の時間ではできるだけ目立たずに過ごそうとしていた。 なので、他の子からはバカにされることが少なくなかった だけど彼は、何度バカにされようと、決して悲しい顔などすることはなかった いつも笑顔で、楽しそうで だから、みんなもバカにはするけど、悪意はないようだった いわゆる、憎めない奴 というところだろうか
だけど、そんな彼もひとつだけ凄い能力を持っていた 絵がうまいのだ
彼の絵を見ると、何故か心が温かくなった
僕たちのクラスの担任の先生は、若い女の先生で優しい人だった でも、授業の時は厳しく、だけど熱心に勉強を教えてくれていた そんな先生が受け持っていたクラスだから 彼はさぞかし授業が苦手だったのではないだろうか 彼は当てられるたびにしどろもどろ でも、先生は彼が答えられるまで決して彼を座らすことはなかった そんな先生に対してその時彼はどう感じていたかはわからないけど、幼い僕の心にはいわゆるイジメという感じしかしなかったのだ そして、僕はそんな先生のことがあまり好きではなかった
月日は流れ…… いよいよ小学校を卒業する時が来た 一年生のときから僕らをずっと担任してきてくれた先生は、僕たちの卒業と同時に他の学校へ転勤することがきまった
そこで、先生のお別れ会を開くことになった。 そんな中、生徒代表として先生にお別れの言葉を言う人が必要になった これは、満場一致で(僕を含めて)彼が言う ということに決まった 彼のしどろもどろする姿を馬鹿にしたかったのだろう
お別れの会のお別れの言葉 僕はこれを忘れない
彼は立ち上がり、
「先生 いままで、僕を普通の生徒として扱ってくれてありがとうございました」
と そう、言ったのだ
放課後、つきっきりで勉強をおしえてくれたこと。
彼が絵を描くのが好きだと知ると、絵の具セットをくれたこと。
彼の感謝の言葉は、15分ほど続いた。あたりは水を打ったように静まり返り、誰一人話をする人はいなかった
先生が震えながら、嗚咽をくいしばり、目を赤くそめて泣くまいとしている音だけが体育館に響いただけだった。
その後 彼は、美術の大学に進み、立派な画家になった。
今日、久しぶりに彼に会う
まとまりなく、文章も幼稚です^^;
あまり構成を練る時間がありませんでした 指摘、感想お待ちしております