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イノセント・アライブ ~命の選択と荒ぶる息吹~  作者: 沙φ亜竜
第5章 渡り廊下は敵だらけ?
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-☆-

「おかあさん……?」


 わたしは遠慮がちに声をかける。

 だって、お母さんはいつものような明るい笑顔じゃなかったから。

 お母さんの頬には、キラキラときらめく雫が伝っていたから。


「うふふ、大丈夫よ、なんでもないわ……」


 一生懸命笑顔を形作り、わたしを安心させようとしてくれるけど。それが作り笑いだというのは、幼いわたしにもわかった。

 わたしはそっと手を伸ばし、お母さんの頭を撫でる。

 そっと……優しく……壊れてしまわないように……。


「……ありがとう、息吹ちゃん」


 お母さんは微笑んでくれた。

 まだ弱々しくはあったけど、今度は、作り笑いなんかじゃなかった。

 だからわたしも、笑顔で応えた。


 きゅっ……と。

 わたしの頭を抱きかかえるように包み込むお母さん。


 ポカポカ陽気のお日様に照らされた、お花畑のような匂い。

 心も体も、温まっていく。

 そんなわたしに、お母さんは言い聞かせる。


「息吹ちゃん。生きているとね、世間にはわかってもらえない、孤独な戦いになることもあるの」


 …………???

 お母さんの腕に包まれながらも、首をかしげる。


「でもそんなときには、わたしの顔を思い出してね」

「……うん!」


 よくはわからなかったけど、わたしは素直に頷く。


「友人も、家族も、恋人でさえも、敵に回るかもしれない。だけど最後には必ず、もとどおりの仲よしさんに戻れます」

「ん~……? ……よくわからないや」


 わからないまま頷くのもよくないと思ってしまったのか、今度はちょっと考えてみたものの、わたしにはやっぱり理解できず、反射的にそう口にしていた。


「うん、そうね。でも、大丈夫」


 お母さんはわたしを強く抱きしめる。

 そのあとに続けられた言葉を、わたしはつい今しがたまで、すっかり忘れてしまっていた。


「自分の信じる道を往きなさい。そのための力を、あなたは持っているのだから……」


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