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恋は突然の花粉症みたいに……

作者: 黒楓
掲載日:2026/03/18

拙い作品ですが……


この作品を別の世界へと旅立って行った

大好きなお姉さまに捧げます。

 陽射しは暖かだけど吹き抜ける風は冷たい

 そんな桜並木の道を

 ふたりとも

 申し合わせたようにマスクを着けて

 ゆっくりと歩いて行く。

 桜を愛でているわけではない。

 だって、みんなまだ

 モノトーンの丸裸だから。


 そんな事をぼんやり考えている私の前を歩いていたあなたは、ふいに立ち止まって歩道に向かって伸びている桜の枝先を摘んだ。


「どうしたの?」

 人の目があるかもしれないから

 並んで歩く事はしない私は

 つい、うっかりと横並びになってあなたに尋ねた。


「うん、もうすぐなのに……残念だなって」


「桜?」


「ああ」


「いいじゃない。私と違って……桜前線はあなたの行く先を追えるのだから。じき、あなたに追いつくわ。新しいお家で奥様とご覧になったら?」


 私の……ちょっとばかり拗ねた口調にカレは薄くため息をつく。

「キミって人は……最後の最後までいじわるを言う。まるで少女の様に」


「それはごめんなさいね! ナリはすっかりおばさんなのに!」


「キミのどこがおばさんなんだ?!」


「そりゃそうでしょ! 娘はこの4月から中学生なのよ」 


「義理の娘さんなんだね」


「ちゃんと私のお腹から生まれました!」


「じゃあ、若くして妊娠させられたんだ! キミのご主人はとんだ淫行野郎だね」


「バカな事は言わないの!」


「だって……初めて触れたキミはこの蕾の様に初々しく……固く締まった先から……ピンク色に染まっていたよ」


「もう!……」と言い掛けて、後の言葉が出て来ない。

 この……生真面目な夫とはまるで違う話し方のあなたは……いつもこんな風に……私を本来の私へ戻してくれた。


 本来の私?

 と私は自問自答する。


 それって何だろう?


 私はそれほど恋愛経験がある訳ではなかった。


 高校の頃に初めて付き合った男の人に運命を感じて

 ずっとその人以外には考えられなかったから。


 幼かったのだとも思う。

 良く持ったとも思う。


 でも同い年だけど……私の方が先に社会に出てから

 少しずつ齟齬が生まれ、結局は壊れてしまった。


 やっぱり恋愛と結婚は違う。

 そんな風に悟って、私は婚活へシフトした。


 周りから、夫とは良縁だと言われた。


 だから私は……それこそ魔物になった心持ちで貞淑を演じ切った。


 夫はきっと今でも……自分が私の初めての男だと思っている。


 でも、そう思ってもらっても何の後ろめたさを感じない程、私は身も心も夫に尽くし、その過程で綾香が生まれ私も心から夫を愛した。


 今だって、夫への愛が消えたわけではない。

 そんな筈は無い!


 私は……絵に描いた様な幸せを手に入れたのだ!


 だってそうでしょう?

 夫は一流企業の研究職!

 一人娘の綾香は誰もが憧れる私立の女子中学校へ見事に合格!

 私は結婚してこの方、パートに身をやつす事無く、()()()()の奥様達との“活動”に勤しんでいたのに……


 ちょうど1年前。

 あなたと出会ってしまった。


 セールスマンであるあなたは……自由な様で、決して自由では無かったので……

 あなたとの逢瀬は、いつもあなたに合わせていたのだけど……

 それはちっとも嫌では無かった。

 それどころか、

 遠い昔の……“初めてのカレ”に抱いた時よりも遥かに大きなドキドキを会うたびに感じで……あなたの全てを躊躇なく飲み込んだ。

 甘い甘い美酒の様に

 あなたから注がれる熱を情念を……


 娘の綾香だって!

 願って願って授かったのだけれど……

 その比較にならないくらいの強い思いであなたの子供を欲したのだけど……

 この見境無い私の想いが神様の逆鱗に触れてしまったのか……子供を授かる事も無く……

 あなたにも遠い地へ転勤の辞令が出てしまった。



「ねえ! あなたは!」

 私は愛しく愛しくあなたへ声を掛ける。

 周りの目なんかもう気にならない!


 そんな私に……あなたは限りない微笑みを乗せて頷いてくれる。


「花粉症になった時の事を憶えている? 私は憶えてるの!」


「それは……突然だったんじゃない? 僕がそうだから」


 私はその言葉に確信する。


「ああ、この人こそ、私の運命の人なのだ!」と


「ええ、そうなの! そして!」


 次の瞬間!

 あなたの胸に飛び込んだ私は……

 あなたの胸と男らしい腕の温度を感じ

 あなたを甘く貪った。



「私達の恋も花粉症のよう! もう決して治る事の無い……」


「ああ! そうだね。だから! 足繫くとは言わないが……この先も必ず逢いに来るよ」


 そう、私達は……お互いがお互いの運命の人だという事を知っている。

 例え各々“生活”と“役目”があったとしても……

 ふたりの愛が永遠だと言う事を……




           

                         ♡おしまい♡



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― 新着の感想 ―
 強かな女性ですねえ。  自分の都合だけで物事を見れるからなのでしょうね。  浮気相手の子供が欲しいとか、その子を夫の働くお金で育てるつもりなんですね。  そして愛情まで注いで貰うとか。  なかなか凄…
私もそう思います! 結婚した人が決して運命の日ではないということ。 ひょっとしたら運命の人なのかも知れないけれど、時と共に運命の人の定義が変わることもあると思います。 人生なにも一人の人に縛られ続ける…
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