【相対】 2
紛いなりにも親子であるはずなのにもかかわらず、互いに罵り合う彼らを見て……私は大声を上げてしまっていた。
「もういい! 三人とも静かにしろ!」
「「「ッ⁉」」」
うんざりしていた。もう彼らの声は聞きたくなかった。
「レアフ家の使用人達から話は聞いた。この屋敷も財産もユキア=レアフが正式に継承し、お前達は即刻出ていくことを命じる。無論、お前達が勝手に拝借していたレアフ家の物は全て返却し、無断で使い込んでいたレアフ家の財産も全額返済しろ。これは王家王太子である私直々の厳命だ。拒否することは絶対に許さん」
「「「な、な、な……⁉」」」
義父が良い歳して泣きそうな声を上げた。
「横暴だ! 大体、あいつは命を弄ぶ魔女だぞ! この屋敷から出ていくべきはあの魔女の方だ!」
義母も金切り声のように喚いた。
「そうよ! 手で触っただけで怪我が治るなんて普通じゃないわ! あいつは命を弄ぶ魔女なのよ! 悪魔の使いなのよ!」
「……お前達は、本当に知らないのか? 回復魔法の存在を?」
「「……へ?」」
いま初めて聞いた言葉のように、義父と義母は呆気に取られた顔をした。
しかし義姉だけは、これが最後のチャンスだと思ったように、必死な声で言ってきた。
「私は知っておりますわ! この愚かで大馬鹿なこいつらは学がないから知らなかったようですけど! 私だけはあの女が回復魔法の使い手だということに気付いていましたわ! だから私だけは特別に見逃し」
「知っていながら、両親が罵詈雑言を浴びせるのを看過していたというのか? 気付いていながら、彼女の部屋や物や財産を横取りしていったというのか? 両親と同じように彼女を侮辱し続けていたというのか?」
「ッ⁉ そ、それはッ!」
「貴女も同罪だ。むしろある意味、両親よりもたちが悪いとさえ言えるだろう。彼女の屈辱に付け込んで、彼女が持っていた全てを乗っ取ろうとしたのだから」
「ッ⁉」
私は指をぱちんと鳴らす。
それを合図として、王宮から呼んでおいた数人の近衛兵が姿を現した。
「彼らを連れていけ」
「は」
近衛兵達が三人へと歩み寄っていく。有無を言わさずに手首に縄を掛けていく。
義父が叫んだ。
「なッ、どこに連れていくつもりですか⁉」
「ひとまずは留置場だ。その後、仮の家に連れていく。そこに住みながら、今後の裁判や借金返済の為の職場に通うのだな」
「「「ッ」」」
義父も義母も義姉も、最早抵抗は不可能だと観念したらしい。
三人ともがっくりとうなだれて、王宮魔法士が出した転移魔法陣によって留置場へと送られていった。
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