4.深夜のクズ見本市
4.深夜のクズ見本市
夜が深まるにつれ、来客の「質」はさらに落ちていく。
泥酔したキャバ嬢。 指のないヤクザ崩れ。 整形費用を借りに来た、顔中包帯だらけの地下アイドル。
彼らは皆、何かに飢え、何かに追われ、そして阿久津という「最後の砦」に縋り付く。 阿久津はそれを、時には笑顔で、時には冷酷に、そして時には慈悲深い神父のように捌いていく。
「ありがとうございます! 本当にありがとうございます!」
涙を流して一万円札の束を握りしめる女を見送りながら、阿久津は呟く。
「感謝されるってのは、こそばゆいね」
深夜三時。 最後の客が帰り、事務所に静寂が戻った。 阿久津は窓辺に立ち、眼下に広がる歌舞伎町を見下ろした。 ネオンの海。そこでは無数の欲望が明滅し、誰かが笑い、誰かが泣き、誰かが壊れている。
「金城、知ってるか? 金貸しってのは、ただ金を貸してるんじゃないんだ」
阿久津は窓ガラスに映る自分の顔に問いかけるように言った。
「俺たちは『時間』を売ってるんだよ。破滅までの猶予期間という名の時間をね。彼らはその時間を使って、必死に踊る。……そのダンスが、俺は大好きなんだよ」
金城は無言で片付けを終え、コートを羽織った。
「社長、哲学もいいですけど、明日は回収日です。リストアップできてます」
「ああ、わかってるよ。現実は甘くないねえ」
阿久津は電気を消した。 部屋が闇に包まれる。 しかし、外からのネオンの光が差し込み、阿久津の口元だけを不気味に照らし出していた。
「さあて、明日はどんな『ヒューマンドラマ』が見られるかな」
闇の中で、阿久津の笑い声が低く響いた。 それは、夜の街が立てる悲鳴と、奇妙なほどよく調和していた。




