肉料理ブース
美食博覧会、どこから行こうか。
特にやることも無くなったので、イワンが博覧会を自由に見に行っていいと言った。
というわけで、お言葉に甘えることにした。食事代として1000ゴールド持たせてくれた。
いろんなブースがあるが、まずは肉料理ブースからだ。
肉料理だけでも、いろんな店がある。さて、どこから行こうかな。なにしろ世界中のグルメが集まる博覧会だからな。
見たところ、人間ではない、いろんな種族の、
厳密に言えば人間とは違うが、人間に近い種族の人(?)たちが集まっている。
そして、思い思いに食べ物を購入し、ガツガツ
ほおばっている。
『Mrs.チキンフライ』という店の前に来た。人気店らしく、行列ができている。
そこに、赤いスポーツカーが通りかかった。そして、いかにも美食家といった感じの、淑女が降り立った。
「あっ、エライザさんだ!」
美食家として有名になれば、優先的にその店の
メニューを食べさせてもらえるらしい。
僕も、美食家を目指そうかな。
その瞬間、エライザと目があった。僕の存在に気づいたエライザは、僕に話しかけてきた。
この偶然の出会いが、僕の美食家人生の始まりとなる。
エライザ「あら、あなたは?」
アルベルト「僕は、アルベルトといいます。」
エライザ「アルベルトさんね。あなたも、この『Mrs.チキンフライ』の唐揚げの美味しさを聞き付けて、わざわざこの店までやってきたの?」
アルベルト「そうです。この『美食博覧会』に出店すると聞いて。」
美食博覧会では、それぞれのブースで一番売上の多い店に『最優秀売上賞』が与えられ、それぞれのブースで一番評判の良かった店に『最優秀評判賞』が与えられる。
さらには、『最優秀コック賞』『最優秀アイデア料理賞』まである。
賞金総額は、10000000ゴールドだという。
副賞には、新店舗を建てるための土地と、新店舗の建物、さらには『世界一周料理研究の旅』などがある。
アルベルト「僕は、『牧場ブース』の『ファミール牧場』から来ました。」
エライザ「ファミール牧場ね。あそこは有名よ。あそこのソフトクリームが美味しいのよ。
あなた、まだここに来たばかりでしょ。」
アルベルト「何でわかったの?」
エライザ「あはは、その身なりを見れば、すぐにわかるわ。私に弟子入りとかしたいって、思った?
それじゃあ最初に、この本を渡すね。この本は、私たち美食家にとって、駆け出しの頃のバイブルなの。」
その本とは、『食レポの表現手法 入門編』という本だった。
最初に言われるのは、この言葉。
「せっかく肉料理ブースの、『Mrs.チキンフライ』の前に来たのだから、『Mrs.チキンフライ』自慢の唐揚げ3個パックを、食べていきませんか?」と、周囲の人に言わせることだと、書いてあった。