テース王国との戦争
ラーク王国の『美食博覧会』の会場で、とある兵士から聞いた話。
兵士「たまご料理を食べる時に、ゆでたまごで食べるか、オムレツで食べるかという理由で、3年の間、戦争をしているのです。」
なんだって!?そんな理由で戦争をしているだって!?
僕も、さまざまな理由で戦争を始めたという話は聞いていたが、そんな理由で戦争を始めたなんていう話は、初めて聞いた。
したがって、こういうことになる。
ラーク王国の卵料理は、ゆでたまごはあるが、オムレツは無い。
テース王国の卵料理は、オムレツはあるが、ゆでたまごは無い。
僕の脳裏に浮かんだこと。
これ以上の戦争は、お互いにとって損失にしかならないと思いませんか?
戦争になったら、医者も薬も、そして何より、食べ物も戦場へ行ってしまい、一般の人々は食べることすらままならなくなってしまう。それこそ、飢えをしのぐためだけに食べ物を確保するようになってしまう。
とても、美食とか、グルメなんて言ってる場合じゃない。
どうです?ここいらで休戦協定を結んでみませんか、と。
なんと、この世界は、僕の脳裏に浮かんだことが、本当に現実になる世界だということを、僕自身も、その時は気づいていなかった。
本当に、休戦協定が結ばれた。
そして、ハマーンたちの仲介で、テース王国のオムレツも、『美食博覧会』に出品されることになり、ラーク王国でも空前のオムレツブームとなり、一方のテース王国では、ゆでたまごが広まるきっかけとなった。
要は、心の持ちようだな。食文化の広まりが、戦争も終結させるという。
そして『美食博覧会』は、半年間に及ぶ期間で、開幕することになった。
よーし、これを期に、世界中のおいしいものを、食べまくるぞ!
それにしても、これほどまでに食事をするということにこだわった、これほどまでに楽しいイベントは、僕の一度目の人生の中では、つまり、転生前の人生の中では、考えもしなかったことだった。