6 幸子の気持ち
自室に戻って幸子はゴロンとベッドに寝っ転がった。
(聖女……ってことはもう日本に帰れないのかな)
なんとなく寂しかった。
(あんなに死ぬほど頑張っていた仕事も途中のままかぁ……)
寝返りを打つ。でも、幸子は家族のことを少し思い出して、帰れないのはそれはそれかもな……と思った。
幸子は元々は私立の女子校でエスカレーター式に小中高大学と卒業した。
いわゆるお嬢様だ。凄いお嬢様ではないが……。
父親は商社に勤務し、忙しくしていた。その分母親が子どもたちに厳しく接した。
特にマナーや交際関係にはうるさく、
幸子はそれが嫌でどんどん交友関係を狭め、
オタクになり、
喪女になっていった。
広告会社に就職したのも、親への反発だった。
父親のつてで入れる職場も紹介されたが、
自分の力で頑張りたかった。
そして、母親は良い会社で良い旦那様と出会うことを願っていた。それもウザかった。
ゆえに大学を卒業して一人暮らしをもぎ取ってからは、幸子はがむしゃらに働いた。
憧れの広告会社は厳しくコミュ障な幸子にはきつい職場だったが、ターゲットを分析・選定するのは面白かったし、クライアントが喜んでくれたり、華やかな場にいれたりするのは嬉しかった。
辛いながらも、初めて自分で生きれた場所だった。
(こんな私が、聖女……マジ漫画みたい……)
自分に何ができるのか……
おばあちゃんが言ってた情けは人の為ならずがズシッと乗っかかってくる気がした。




