59 懐かしいあの人
幸子はそのアニメをなぜか夢中で観た。
新しいものかと思ったが、なぜか見忘れた前期のアニメで、放送は終了していた。
12話あったので、今日はこれでも観るかと、布団に包まりながら定位置でダラダラと横になりながら観た。
アレクという16歳の青年が、モードレッド一族の悪政を終わらせるべく立ち上がる。平民である彼が一国の王になるまでを描いたファンタジー歴史アニメだった。
剣の腕は去ることながら、水と風を操る魔法はダイナミックで美しい。
力はあっても偉そうにはせず謙虚なので、傭兵達ともすぐに仲良くなり、仲間にしてしまう。明るい輝くような笑顔が印象的だ。
勇者と呼ばれ始める中、妻ラプラスと結婚し、子育てをしながらモードレッド一族と戦うべく奮闘するのも幸子は驚いた。
モードレッド一族との戦いは、苦しいものではあったが、魔法に長けた仲間や、悪政に苦しむ民が力となり、倒すことができた。
アレクの息子エリックも舌足らずに話しながら、優しい両親に育てられ逞しく育った。
3話を見終えると、モードレッド一族の王が倒され、
アレクがラプラスと共に国王、后として認められ、エリックも王子として立ったところだった。
「うーん、割と高速でモードレッド一族倒したぞ……」
幸子が危ぶむように、4話でラプラスが魔物に殺された。
アレクは助けられなかったことを悲しみ、後悔し、エリックは15歳になっていたが、母を失う喪失感は大きかった。
幸子は、
「うわぁぁぁ……やだー私こういうの苦手ぇ〜」
と言いながら、辛いシーンを観ていた。
アレクがラプラスと過ごした薔薇園で薔薇を撫でる。
その姿が切なくて切なくて………
幸子は、その姿を知っていた。
「……え。なんで?」
ボロボロと涙が自然に落ちてくる。
アレクは、
「絶対に魔王を倒して、平和な世の中にする……誓うからね。愛しているよ……ラプラス……」
と薔薇に誓った。
「……私、知ってる……」
アレクは薔薇園に背を向けて、前に向かって歩いって行った。
その後ろ姿に幸子は堪らず叫んだ。
「アレク様!!!!」
その瞬間パァンと音を立てて、いつもの幸子の世界が砕け散った。




