表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第六章完結】ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした  作者: 犬型大
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/440

ヒカリが生まれた2

 朝見た時に卵の大きさはいいとこ拳程度だった。

 それなのに今はトモナリの頭よりも大きくなっている。


 もはや見間違いなどと自分を誤魔化すこともできないぐらいのサイズである。


「重いな……」


 トモナリが卵を持ち上げてみるとずっしりとした重さがある。

 ハリボテの卵ではなく中身がある卵だ。


 卵を耳に当てて目を閉じる。

 卵の中の音に意識を集中させる。


「生きてるのか」


 トントンと卵の中から一定のリズムを刻んでいるのが聞こえてくる。

 何かの生き物が中にいて鼓動している。


 卵から顔を離して改めて考えてみる。

 こんな卵を拾ってきたことがあっただろうかと。


 だが改めて考えてみても卵を拾ってきたなんて記憶はない。

 こんなふうにデカくなる卵ならば絶対に記憶に残っていてもおかしくない。


 なのに全く記憶にないというのがまた恐怖すら覚える。

 だが一つだけ心当たりはある。


「……魔獣の卵か?」


 不思議な速度で大きくなる卵としてモンスターの卵というものがこれから先の時代に現れる。

 そのせいで色々な問題が起こるのだがそれはまた別の話である。


「……まあいい」


 思い当たる節もないのに記憶を探っても時間の無駄になるだけ。

 トモナリは卵をベッドの上に戻すと机に向かった。


 ボールペンを片手にノートを広げる。

 少し考えを整理しようと思った。


 1日経ったけど夢から覚める様子もない。

 夢だと痛みを感じない。


 だから自分の体をつねって夢かどうか確かめるなんてことがある。

 しかしカイトに殴られた時しっかり顔は痛かったし母親であるゆかりが悲しんだ時は胸が痛かった。


 じゃあどうしてこんなことになっているのか。


「あれの方が夢だってのか?」


 一度歩んできた人生の方が夢だったのかと考えてみる。

 戦って戦って、そして結局敗北して死んだ辛い記憶は鮮明に覚えている。


 夢とはとても思えない記憶がトモナリの中にはあるのだ。


「ん?」


 ゴロンと音がしてトモナリは振り返った。

 卵が床に落ちて転がっていた。


 置き方が悪かったのかなとベッドの奥に置いて今度は落ちないようにしておく。


「今の状況も夢じゃなく、記憶も夢じゃないとしたら……回帰、やり直しとかそんなものなのか?」


 トモナリはやり直しや回帰などの言葉を一応知っている前までいた友人がそうした小説が好きで話してくれたことがあったからだ。

 ただ細かくは知らない。


 危機的な状況から急に時間がさかのぼるような現象が起きて、人生をまたやり直すことがあるみたいな内容だったとおぼろげだ。


「俺が回帰した? なんでだ?」


 仮に回帰というものが己の身に起きたのだとトモナリは仮定してみた。

 そうすると一定程度の説明は成り立つ。


 死にかけの危機的状況から人生が巻き戻ってきた。

 だから一度駆け抜けた人生の記憶があるというところまでは説明がつけられる。


 だがそれにしても分からないことは多い。

 どうして回帰が起きたのか、なぜトモナリが回帰したのかなど全く記憶になくて説明がつけられない。


「ただ回帰したのなら……」


 思考を書き出していた手が止まる。

 もし仮に回帰したとするならばこれから先にまた激しい戦いが始まる。


 だが回帰したとしても1回目と違うことが一つある。


「俺は色々知っている……」


 回帰したならこれから先に同じようなこと起こるはず。

 トモナリは起こることのいくつかを知っている。


 不要な争い、失われた命、起こすべきではなかった災禍など正すことができるなら正したい出来事は多い。


「もしかしたら世界を救うことができるのか?」


 全てを正すことなど到底できやしない。

 しかし可能な限り正しい方に導いていけば世界を救うこともできるかもしれない。


 手が震えてきた。

 興奮、あるいは希望、あるいはそんなことが自分にできるのかという不安。


「俺にできるのか……?」


 震える手を握って額に当てる。

 記憶はある。


 しかし死ぬ瞬間までトモナリは他の人に比べて劣等的だった。

 記憶があったとしても本当に世界を救えるのかという不安が胸の中で大きくなり続ける。


「……なんだ?」


 再び重たいものが落ちる音がした。

 卵が床を転がっている。


「どうして?」


 ベッドの奥の方に置いて転がり落ちないようにしていた。

 なのに床に卵が転がっていることにトモナリは眉をひそめる。


「まあいいや」


 転がってきてしまうのなら床に放置しておく。

 今は状況を考えるのにいっぱいいっぱいである。


 再び机に向かってボールペンでノートに書き込みを始める。

 世界を救えるかは分からない。


 しかしできることはあるはず。

 回帰したとしたら経験した出来事は起こるはずなので記憶が薄れないうちにできるだけ書き留めておこうとする。


 しっかり考えるのは後にして思い出せる限り出来事を書き連ねていく。


「あれ?」


 ノートに出来事を書いていると足に何かが当たった。


「卵?」


 足元に卵があった。

 振り返ってみるとベッド横にあったはずの卵がなくなっている。


 思わず足元とベッド横を交互に見てしまう。

 転がってきたのだろうが、どうやって転がってきたのかトモナリには理解できない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ