世界樹ゲート3
「……まあいいか」
入れる人が多いと分かったので、悪人の基準を気にする必要も無くなった。
イガラシが参加できないのは残念だけど、五十嵐ギルドには他にも強い人がたくさんいる。
「チッ……あいつ逃げ足だけは速いんだからな……」
肩で息を切らせるイガラシが戻ってきた。
イヌサワには逃げられてしまったようだ。
「世界樹に関してはお前に一任している。うちの連中で連れて行きたいのがいたら連れてけ。入れるやつはリストアップしておく」
「イガラシさんがいけないのは残念です」
「ふぅ……俺だって好きで険しく生まれたわけじゃないんだがな……確かに子供には少し怖がられるが」
イガラシは眉をひそめて、ため息をつく。
その顔がダメなんじゃないかとトモナリは思うのだけど、曖昧に笑って誤魔化しておく。
「ヒカリにやるみたいにお菓子で釣ってみたらどうですか?」
「……今度やってみるか」
ひとまず自然と五十嵐ギルドもゲート攻略に参加してくれることになっている。
トモナリたちからすれば難易度的には上になるBクラスゲートであるが、五十嵐ギルドが協力してくれるなら十分に攻略できる可能性はある。
記憶にないゲートなので、何が起こるのかはトモナリにも分からない。
万全な備えはしておくべきだろう。
「ただ…………あんまり危険な感じもないんだよな」
ゲートにはゲート特有の圧迫感がある。
しかし今回のゲートはあまり圧のようなものを感じない。
安全なゲートなどないので油断はしないが、Bクラスのゲートにしては危険を強く感じない。
「何事もやってみてだな」
ゲートの外からではゲートのことは分からない。
あるのは結果として危なかったか否かである。
「さてと……誰に来てもらうかな」
イヌサワは確定であるが、他の人をどうするのかなかなか迷う。
トモナリはどうしようかと頭を悩ませるのだった。
ーーーーー
「いざゆくのだー!」
ゲートを放置しておいたらどうなるのか。
その問いの答えは実際放置しておくしか得られないものであるのだが、ゲートが出てからというもの毎日のように成長していた世界樹の成長が止まった。
毎日測定して記録をつけていたのだから間違いない。
つまりはゲートを攻略しないと世界樹がこれ以上大きくならない可能性が出てきたのだ。
世界樹の育成は大事である。
ただ止まっているだけならいいが、それが悪影響を及ぼさないとも限らない。
性急に攻略する必要性も出てきた。
「今回はトモナリ君にリーダーを任せるよ」
「いいんですか?」
「僕はリーダータイプじゃないしね。君ならみんなも認めてる」
今回五十嵐ギルドからはイヌサワを始めとして十一人を選んだ。
トモナリたちと合わせて十五人の攻略隊となる。
十八人の上限まで人を選ばないのは、外で何か起きた時に連絡なんかをする人の余裕を残すため。
上限いっぱいで挑めば攻略におけるリスクは減らせる。
しかし今回は五階層のゲートなので、攻略にも時間がかかることが予想された。
外で何かの事件が起きて攻略を中断せざるを得ないということも、可能性としてあるかもしれない。
そんな時のために連絡要員が入れる余裕なんかを作っておくのも一つの戦略だった。
Bクラスゲートであるし、一人だけ空けておくのではなくしっかり三人分の枠を空けてある。
「でも先輩たちの力は頼りにしていますよ」
トモナリたちの方が少ないし、実力的にも実質的にも五十嵐ギルドの方がメインである。
しかし世界樹関連ということで、今回のチームリーダーはトモナリに任されている。
「じゃあイヌサワさん、先頭お願いします」
「はははっ! 早速人使いが荒いなぁ!」
ゲートの調査も終えてある。
分かるのは一階のみのことであるが、入ってすぐ危険な状態になるゲートではない。
それでも一番初めに入る行為にはリスクが伴う。
仮にモンスターが仁王立ちで待ち受けていてもイヌサワなら対応できる。
トモナリのリーダーシップをイヌサワは笑いながら受け入れる。
「それじゃあリーダーに従って入っていこうか」
イヌサワはサングラスを外し、インベントリに収納してゲートに向かっていく。
ゲートの前で立ち止まると軽く手を伸ばす。
一応ゲートのいい人判定は変わらないらしく、指先がゲートに飲まれる。
イヌサワはゲートの中に入った。
「……大丈夫だよー」
ほんの一瞬の緊張、静寂が流れて、イヌサワがゲートから顔を出して安全を伝える。
ゲート周りで事故が起こることなどほとんどない。
だけどほとんどであり、確実とは言い切れない。
上級者であるほど、最初にゲートに入ることの危険性を理解していて最初の安全確認ができるとホッとするのだ。
「……何そんな緊張するんだ?」
「たとえばあれがレッドゲートだったらどうなる?」
「あー、なるほどな」
もし仮にゲートがレッドゲートに変化してしまったら、最初に入った一人は出ることができず、後から入ることも出来なくなる。
攻略するか、中に入った人が死ぬまでどうしようもない。
一人で攻略できる人なんてほぼいないだろうから、死ぬのは確実に近い。
こうしたリスクを、最初に安全確認する人は負うことになるのだ。




