母なる世界樹の愛を受けし者1
「‘わざわざありがとうございます’」
「‘アメリカの友人のためだ。これぐらいなんてことはない’」
アメリカから来客があった。
覚醒者が三人。
今回は何かのお願いに来たというわけではなかった。
むしろトモナリのお願いできているようなものだ。
「‘どこで出せばいいですか?’」
「‘倉庫があるのでそこに’」
トモナリたちはギルドハウスの倉庫として使っている部屋に向かう。
そこには使っていない予備の装備や備品が置いてある。
「‘では……こちらを’」
男たちはジュラルミンケースをインベントリから取り出す。
一個だけではなく、それぞれが複数個出していき、倉庫に置いてあったテーブルにジュラルミンケースが並んでいく。
最終的にはアタッシュケースタイプの小型のものが十個とコンテナタイプの大型のものが五つ。
それなりに大きなテーブルだったのだけど、ジュラルミンケースでいっぱいになってしまった。
「‘こちらが今回アイゼン様が要求した報酬となります’」
「‘思っていたよりも多いですね……’」
「‘ハイジャック事件のお詫び、お礼も兼ねておりますので’」
三人の覚醒者はアメリカの覚醒者協会関係者である。
今回トモナリのところを訪れたのは、終末教に奪われた試練ゲート奪還作戦の報酬を渡しに来たのだった。
「‘要求にあったAクラスモンスターの魔石や利用不可素材です’」
男がジェラルミンケースの一つを開けてみると、中には魔石が入っている。
トモナリは拳よりも一回りほど大きな魔石から強い魔力を感じていた。
「‘他にもBやCクラスの魔石や素材を集めました’」
言い方は少し悪いかもしれないが、男たちは運び屋である。
今の時代、覚醒者というのも輸送手段の一つになる。
特に安全にものを運びたい時には覚醒者に守らせるのではなくて、覚醒者に持たせてしまうというのも手段なのだ。
インベントリに入れてしまえば、最低でも盗まれる心配はない。
大きなインベントリ容量を持つ覚醒者を集めれば輸送力としてもかなりのものになる。
トモナリはアメリカに協力する報酬として、魔石を要求していた。
現金ではなく魔石というところに少し驚いていたものの、アメリカは要求を飲んでくれた。
「‘何かあればいつでも。以前お伝えした番号にかければ、私よりも上に繋がりますので’」
「‘ええ、ありがとうございます’」
アメリカは大量の魔石を輸送するために覚醒者を使った。
手早く、もっとも安全な方法だと分かっているからだ。
三人も送ってきたのはインベントリの容量の都合もあるが、仮に輸送がバレて襲われても三人で荷物を分散させれば全部失うことは避けられるからだった。
「‘今後の活躍、期待しております’」
用事だけサッと済ませて覚醒者の男たちは帰っていく。
流石しっかりと仕事はこなすものだ。
「さてと……確認して、整理しなきゃいかないかな」
トモナリはテーブルの上のジェラルミンケースを眺める。
何をどれほど送るかリストはもらっている。
しかしこれだけの数をリストとつき合わせて確認するのも楽ではない。
「トモナリ?」
「パパ?」
ヒカリとユシルが部屋の入り口から中を覗き込む。
世界樹のそばを離れられなかったユシルは、いつの間にか世界樹のそばからだいぶ離れられるようになっている。
具体的にはトモナリたちのギルドハウスまで来られるようになっていた。
ユシルの存在、あるいは世界樹の存在はアメリカにもまだ秘密のことである。
トモナリが覚醒者たちに対応している間、ヒカリにユシルのお世話をお願いしていた。
ヒカリもユシルもトモナリの言うことを聞いて大人しくしてくれていたのだった。
「ああ、もういいぞ」
「トモナリー!」
「パパ!」
ヒカリとユシルが嬉しそうな顔をしてトモナリのところに飛んでくる。
「さて……これだけあればみんなもいけるだろ」
「おお〜なんだかすごそうなのだ」
ヒカリがジェラルミンケースを開ける。
中には魔石ではなく、何かモンスターの一部が入っていた。
「よし、これらをインベントリに入れて……」
三人で分けるような荷物量でもトモナリのインベントリには余裕で入る。
「さて……帰る……んー、帰るとは違うのか?」
最近はもっぱら五十嵐ギルドのところにいる。
世界樹のそばにいるためにもそこにいるのが一番であり、コウたち他のメンバーもギルドハウスではなく五十嵐ギルドのところにいた。
五十嵐ギルドに行くつもりで、普通に一度帰ると口に出してしまった。
正確にはトモナリたちの居場所ではないので帰ると言うのは違うのではないか、とトモナリは首を傾げて考えてしまう。
「でもいまや半分家だしな」
五十嵐ギルドももはや家族みたいなものになりつつある。
世界樹がある限り関係が切れることもない。
母親がいる実家が第一の家、ギルドハウスが第二の家、そしてさしずめ五十嵐ギルドが第三の家といったところになるだろう。
「うん、帰ろうか」
帰るでも別にいいじゃないかと思った。
トモナリは家を出て五十嵐ギルドに向かったのであった。
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