欲に目が眩んだ者6
「外はどうなってるのか……」
今の懸念は一つ。
外の状況だ。
ハイジャック犯たちのどれほどの人が中に入って、どれほどが外にいるのか。
銃を持った男たちがゲートの外で待ち受けていたら非常に危険である。
割とヤバそうなのは覚醒者の連中っぽかったのでいきなり銃乱射して乗客たちを殺す可能性は低いと見ているが、出てもなおリスクは大きかった。
「アレだ! ヒカリ、戦う準備を!」
「任せるのだ!」
もし仮に外に敵がいるなら何とかして倒すしかない。
おそらく覚醒者はほとんどゲートに入っているはずだから、何とかなるはずだとは思っていた。
「うっ……」
ゲートを飛び出す。
真夜中だった外はいつの間にか朝になっていた。
正面に朝日が昇り始めていて、トモナリの目が眩む。
「何の音だ? ヘリコプター……?」
大きな音が聞こえる。
トモナリは目を細めて、何とか周りの状況を確認しようとする。
「‘アイゼンさん!’」
「あれは……ダン、さん?」
ヘリコプター、銃を置いて地面に伏せる男たち、男たちを制圧する覚醒者っぽい人たち。
一人がトモナリの方に駆け寄ってきた。
ぼんやりと見えている顔と声で何となく相手を察する。
ヒーローズギルドのダンであった。
「‘どうしてこんなところに?’」
「‘我々が用意した旅客チケットで送り出したアメリカの友人がハイジャックされて誘拐されたのだ。我々が責任を持って取り戻すのが筋というものだろう’」
ダンは笑顔を浮かべてトモナリの肩に手を置く。
ようやくトモナリの目も慣れてきた。
アメリカの特殊部隊か何かとヒーローズギルドの覚醒者たちが、ゲート周辺のハイジャック犯たちを制圧している。
どうやら、ハイジャックに気づいたアメリカが迅速に動いてくれたらしい。
どれもこれもトモナリが飛行機に乗っていたというところが大きい。
搭乗券はアメリカ側が用意したものであり、安全に日本まで送り届けるところまで責任を持つ必要がある。
トモナリがこれからを担う覚醒者であって、こんなところで失うわけにもいかない側面もあった。
そこでヒーローズギルドまで動員してトモナリを助けにきたのだ。
「‘ゲートが閉じていく……まさか攻略したのか?’」
「‘はい。欲張りな連中は中で全滅してるか、そうでなくとももう二度とゲートから出てくることはできません’」
十分という短い時間が過ぎてゲートが消えてしまった。
乗客たちは皆脱出に成功したものの、ハイジャックを仕掛けた覚醒者たちは一人も出てこない。
おそらくAクラスのゴールデンゴーレムにやられてしまったのだろう、とトモナリは思った。
「‘なるほどな。彼らは自分の首を絞めたわけだ’」
ダンは何があったのか理解したように目を細める。
「‘本当に申し訳なかった。この埋め合わせはまた別でしよう’」
「‘助けてもらったんですからお互い様ですよ’」
「‘いいや、そうはいかないな。受けた恩は返さねばならない。ここにいる一般人も君が救ったんだ。君こそヒーローだ’」
「‘そう言っていただけて光栄です’」
少し照れくさいなとトモナリは思った。
こうしてトモナリたちはアメリカの覚醒者たちに救出され、再びアメリカに一度戻ることとなった。
それから新たにチケットをもらって日本に帰った。
トモナリは取材なんか受けなかったし、目立つことを拒否したのだけど他人の口に戸は立てられない。
今回主に活躍した炎の烈女と颯爽と人を救った黒いドラゴンは、アメリカのニュースサイトでも大きく取り上げられていた。
終末教は人類の敵である。
しかし他にも犯罪に手を染め、人に手をかけることに全くためらいのない連中がいることも忘れてはならない。
トモナリはそう改めて気を引き締めるのだった。
「ヌフフ……綺麗なのだぁ」
ヒカリがゲートから持ち出した黄金の塊はヒカリが自分の寝床として使っている。
ドラゴンは光るものが好きとか、金銀財宝を溜め込んでいる。
そんな話をどこかで聞いたような気もする。
ともかくヒカリは黄金ベットに満足そうなのであった。
ーーー第九章完結ーーー




