欲に目が眩んだ者3
「チッ……先にやるぞ!」
「そうですね」
気になることは多いが、目の前の敵を無視するわけにもいかない。
サントリとディーニもそれぞれが処刑人に向かった。
「お、おい! 一体こっちに来るぞ!」
現れた処刑人は四体。
トモナリたちは三人。
一人一体相手にすると、処刑人が余る計算になってしまう。
余った処刑人は戦うトモナリたちの方ではなくて、乗客の方に向かった。
「しょうがないか。切り札、出番だぞ」
てっきり距離の近い方に行くと思ったが、予想外の動きをされてしまった。
仕方ないのでトモナリは切り札を投入する。
トントンと前に抱えたままのリュックを叩いて合図を送る。
「うぬ! 切り札いくのだ!」
ヒカリがリュックの中から飛び出す。
「この僕が〜トモナリの切り札!」
翼を広げ、かっこよく登場を決めたヒカリは一気に処刑人に向かって飛んでいく。
「どりゃあー!」
卑怯にも力の弱い女性が盾にされるように前に押し出されている。
ヒカリはまっすぐ後ろから迫っていた軌道を変え、処刑人を横から蹴り飛ばす。
鈍い音がして処刑人がぶっ飛んでいく。
「大丈夫なのだ?」
ヒカリはキリッとした顔で襲われかけた乗客のことを確認する。
「え、ええ……大丈夫……」
突然現れたヒカリに乗客たちはポカンとしている。
ヒカリの知名度も上がってきたように思えるのだけど、まだまだ知らない人も多い。
「見るのだ! 僕の新しい力!」
ヒカリは魔法を使う。
これまでは火の塊を生み出して撃ち出すのがほとんどであった。
けれどもヒカリが今回魔力で生み出したのは氷だった。
ミヒャルは水と氷の力を使う。
今まではルビウスに色々と教えてもらっていたので火の力を多用していた。
だがヒカリが扱えるのは何も火だけではないのだ。
「ひゃりーん!」
氷を飛ばし、さらに凍てつくブレスを放つ。
ブレスによって処刑人が凍りつき、氷が全身を貫く。
「フッ……華麗な一撃なのだ」
血を撒き散らしながら処刑人が倒れる。
ヒカリは髪でもかきあげるような仕草をしながらクールに笑う。
「トモナリの方も大丈夫そうなのだ」
四回目の出現であるが、処刑人の能力は全く変わらない。
複数でも問題なさそうな相手なのだから、一体ずつなら全く問題ない。
四体の処刑人が倒されて、歓声が上がる。
次は五体か、と誰もが思った。
しかし次に開いたのは正面にある大きな扉の方であった。
デカい処刑人でも出てくるかもしれない。
そんなふうに考えて完成がピタリと止んだけれども、特に大きな扉から何かが出てくることはなかった。
「あの扉の向こうがボスだな」
「そりゃいいけどさ。さっきの答えはんだ?」
処刑人とボスを含めてもCクラスというには及ばない難易度である。
なのにどうしてCクラスになっているのか。
「ゴールデンゴーレム……中でも処刑人か多くの人の血を捧げて動き出した最後のゴーレムが強いんだ」
黄金のゴーレムのゲートはトモナリも覚えていた。
おそらくトモナリがいなかったとしても、男たちはゲートの攻略に失敗する。
そして後に調査をしながらゴールデンゴーレムゲートはしっかりと攻略されるのだ。
「欲をかいて、全てのゴールデンゴーレムを回収しようとすると痛い目を見る。最後のゴールデンゴーレムはAクラスモンスターの力があるんだ」
その調査の結果ゴールデンゴーレムは十一体いた。
トモナリたちがいる部屋で多くの血を流すか、処刑人が倒されるとゴールデンゴーレムが解放されていく仕組みになっている。
十体のゴールデンゴーレムを倒すと十一体目のゴールデンゴーレムが出てくる。
この十一体目がゲートの攻略難易度をCクラスに引き上げていたのだった。
「Aクラス……」
「あいつらが強いなら倒せるけど、結構キツイ相手だ。とにかく硬いらしいからな」
「はぁ……んじゃ今頃あいつらはそのピカピカゴーレムと戦ってるのか」
「そゆこと」
男たちがどれほど強いのか知らないが、Aクラスに対抗できそうな覚醒者たちには見えなかった。
おそらく回帰前と同じく全滅することだろう。
「ただよぅ」
「ん?」
「私たちはどうすんだ?」
戻るとAクラスのゴーレムが待ち受けている。
男たちは全滅するだろうが、トモナリたちにとっても戻るに戻れなくなってしまう。
「そこは心配しなくても大丈夫。別の出口があるんだ」
「なら安心だな」
「本来、というか無欲にゲートだけクリアすれば、何の問題もなくクリアできるようになってるんだよ」
ゴールデンゴーレムに目もくれず進んできて、ただ処刑人を倒したとしても後ろでゴールデンゴーレムが出てきてしまう。
ただそのまま前に進んでボスを倒せばゴールデンゴーレムには手を出せないものの、攻略した人も被害を受けずに出られるようになっている。
「では先に進んでボスを倒すのですね?」
「ああ、そうだな」
「まっ、ボスもそんな強くないんだろ?」
「サクッと倒して出ちゃおうか。ただ……ゲートが閉じるまでそんなに時間がなかった気がするんだ」
トモナリは少し眉をひそめて乗客たちのことを見る。
ここに置いていってボスを倒した後引き連れても大丈夫なのか、あるいはボス部屋まで一緒に行くべきなのか迷いどころだ。
トモナリたちだけでボスを倒しに行った方が邪魔にもならない。
ただボスを倒してからゲートが閉じるまでに残された時間がどれほどなのか、トモナリも知らなかった。
脱出までにかかる時間も分からない。




