能力比べゲート8
「それじゃあ、また次に……」
「‘行かせないぞ’」
一人まだ意識を保っていた五十代の覚醒者がトモナリの前に立ちはだかる。
五十代の覚醒者はトモナリよりもひどい顔している。
「‘通してもらいますよ? それに俺よりもその人の方が危なそうですよ’」
三十代の覚醒者の顔色はひどいものなんて話じゃない。
「‘そいつは自業自得だ。それよりもお前だ’」
五十代の覚醒者はチラリと三十代の覚醒者のことを見るが、このまま攻略していきそうな雰囲気のトモナリの方を止めることを優先するようだ。
「‘じゃあ、通させてもらうよ’」
ジェットコースター乗り場の降り口は五十代の覚醒者を通り過ぎた先にある。
ちょっと頭はクラクラするけど、動くのに問題はない。
トモナリは一気に走って、五十代の覚醒者の横を通り抜けようとする。
「‘させるか……!’」
五十代の覚醒者がトモナリに手を伸ばす。
「‘ばあっ!’」
「‘なっ……’」
トモナリの手首に手が届きそうになった瞬間だった。
死神が五十代の覚醒者の目の前に現れた。
「‘邪魔をするな! ……くっ!’」
トモナリはそのまま横をすり抜けていき、五十代の覚醒者はカッとなって死神を攻撃しそうになった。
しかし三十代の覚醒者がどうなったのかを思い出して留まる。
「‘ヒョッヒョッヒョッ! 私としては是非ともアトラクションを楽しんでいただきたいので!’」
死神はトモナリと終末教の争いなど興味がない。
ゲートを攻略してもらうことが死神の目的であり、積極的にではないしろトモナリ側に近い感じではある。
「‘……くそっ!’」
五十代の覚醒者はインベントリから小瓶を取り出した。
三十代の覚醒者を乱雑にジェットコースターから下ろすと腕に小瓶の液体を振りかけ、半分を口から流し込む。
小瓶の中に入っているのはいわゆるポーションというやつだ。
ゲームの中のように一瞬で怪我を治すようなポーションは、実際にはとても貴重な代物となっている。
終末教から支給されたポーションは一瞬で怪我を治すものではないが、それでも怪我の回復を助ける効果がある。
「‘こんなはずじゃなかったんだがな……’」
五十代の覚醒者は大きなため息をつく。
ゲートに入ってきた覚醒者を四人で倒せばいいだけの簡単な仕事のはずだった。
外にはサードナイトという幹部までいて、危なければ撤退もさせてもらえる予定だったのである。
「‘余裕なんか見せないで襲いかかっておけばよかったな……’」
ーーーーー
すごい力で回さなきゃいけないコーヒーカップ、高速回転するメリーゴーラウンド、アトラクションに乗りながらの射撃なんてものもあった。
クリアすべきは最低五つである。
力、素早さ、体力、魔力、器用さをそれぞれ求められるアトラクションなのだけど、別にクリアできるなら被っていても攻略には挑めた。
メリーゴーラウンドはジェットコースターと同じく体力を求められる試練で、乗ってもクリアになりませんよと言われた。
けれどもヒカリが乗りたいというので乗った。
コーヒーカップは力、射撃は器用さを求められる。
最初にクリアしたお化け屋敷は素早さが必要だった。
これで四系統の試練をクリアしたことになる。
あとは魔力を求められる試練だけとなっている。
「あいつらも何してんのかな?」
ジェットコースター以降終末教の覚醒者たちの妨害はない。
おかげでヒカリと共に遊園地を楽しんでしまっている。
「次は……あれなのだ!」
「あれは観覧車か」
ヒカリが指差したのは大きな観覧車だった。
「それじゃあ、あれに……」
「‘待ちやがれ!’」
そろそろ終わりにしよう。
そんなことを考えていたトモナリを囲むように終末教の覚醒者たちが現れた。
「‘あ、生きてたのか。元気そうでなによりだな’」
「‘ふざけてんのか……!’」
腕を斬られた三十代の覚醒者は死んでいなかった。
かなり危険な状態であることに違いはなさそうだけど、腕の出血も止まって動けるような状態にあることは間違いない。
「‘もうお前の好きにはさせないぞ!’」
「‘散々振り回されてウンザリよ!’」
トモナリが試練をクリアした旨の報告は死神からされていた。
ただ一度見失うとトモナリがどこにいるのかも分からなくて、散々遊園地の中を探し回る羽目になったのである。
「‘もう戦うのなんてやめないか?’」
「‘なんだと?’」
囲まれた状況下でもトモナリの余裕の態度は崩れない。
「‘このまま降伏すれば命までは取らないよ’」
「‘俺たちのことを舐めてるのか!’」
なんとトモナリは相手に降伏を勧めた。
「‘舐めてないさ。ただ無駄に死ぬこともないだろ?’」
まるで戦ったらトモナリが当然に勝つというような言い草。
終末教の覚醒者たちは怒りをあらわにする。
「‘ふざけるなよ!’」
「‘ぶっ殺してやる!’」
四対一、ヒカリを含めたとしても四対二である。
他にもドラゴンがいることを知らないのか、それとも頭から抜けているのか、数的に優位であると信じて疑わないようであった。
「‘そうか……じゃあ戦うしかない、か’」
戦いたいならそうしてやる。
トモナリにはある秘策があった。




