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星の姫、世界を渡る~王子の願いと虹色の奇跡  作者: 香名斗星南
第3章 少しずつ

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92 それぞれの心情

「……とは言ったものの……どうしたものかな……」


 いくら休暇届を出しているとはいえ、そう長くは学園を休んでいられない。

 おそらく、あと3,4日……長くても5日ほどで帰らなくてはならないだろう。

 けど、こんな状況では気になって勉強どころではないが……


 ネスアロフ、延長してはくれないだろうな……


 廊下に出て食堂へ向かいながら、何かいい方法はないかと考えてみる。


 だが、この問題について考えていると大抵の場合、リュアティスは「一緒に学園に通えたらどんなにいいだろう」と思い始め、いろいろ思案しているうちに「それはそれで心配ごとが何倍にもなってしまう」と却下してしまうことになる。


 エリスレルアが学園に通い始めたと仮定すると、距離的には圧倒的に近くにいられる時が増えるが、当然のことながらずっと一緒に行動できるわけではない。

 その時、自分の目の届かないところにいる、という点においては一緒でも、王都とアークレルト領とでは、怪しい誘惑の発生度が格段に違う。


 そこに思い至って、リュアティスは却下せざるを得なくなるのだ。


 エリスレルアはここにいるほうがいいんだ。

 ここにいれば……ここにいれば、ずっと僕だけのエリスレルア……


 立ち止まって、左手の手のひら側を目の辺りに当てるリュアティス。


「何を考えているんだ、僕は」


 偉そうなことを言っておきながら、情けないことこの上ない。

 この発想は、目的のために手段を選んでいない典型的な発想そのものだ。


「これでは、セフィテアと同じじゃないか」


 あれが未来の自分の姿なのかもしれないと思うと、やはり、セフィテアには少しでも毅然として凛々しくあってほしい。


 って……セフィテアに頼ろうとしている時点で、なんか、不甲斐ない。

 レイテリアス兄上に頼るほうが、まだマシじゃないか?

 ……一番頼りたくない相手だけれど。


 肩を回して背伸びした。


 とにかく、今日は、いろいろあり過ぎた。

 夕飯食べたらさっさと風呂に入って、のんびりしよう。

 ここの風呂は温泉だからな~。


 ふと、例のアクシデントを思い出すリュアティス。


 生まれた時からあの姿で……これからもずっとあの姿……


 絶対に!

 誰にも渡したくない!!


 ……とは思うけど……じゃあどうすればいいのか、具体的には思いつかない。


 ―――こんな時、本当にみんな、どうしているんだろう?


 真っ赤になりながら、学園でクラスメイトたちが話していた恋愛関係の会話に加わっておけばよかった、と今更ながらリュアティスは思った。


 兄上以外だと……やはり、ネスアロフに聞くしかないか……


 ☆ ☆ ☆


「……レミアシウス様、申し訳ございませんでした。

 先ほどのお話は、もう少し考えさせてください」

「え、いえ、どうぞ」


 何言ってるんだ、僕は……


 気の利いた言葉が思い浮かばなくてレミアシウスは気まずい思いをしていた。

 セフィテアはセフィテアで、リュアティスの言葉が胸の奥に突き刺さり、一刻も早くこの部屋を出ていきたかったが、入り口付近にエリスレルアとリルテがいて、扉のほうへは行き辛い。

 仕方なく、テーブルの椅子に座り、レミアシウスがいれてくれた紅茶に口を付けた。


 その温かさに、涙がこぼれそうになる。


「……おいしい……」


 少し困ったような笑みを浮かべてその様子を眺めているレミアシウスに、リルテがトコトコと駆け寄って、その足にしがみついた。


「レミたん、リルテも、ジューシュ飲みたいのー」

「リルちゃん、もうすぐ夕飯だよ」

「ヤ、なの! レミたんのジューシュがいいの!」


 自分の足にしがみついているリルテの両脇に両手を入れて持ち上げたレミアシウスは、左腕に座らせるようにして抱きあげた。


「リルちゃんは、いつからそんなにわがままになったのかなー?」

「う……リルテ、わがままじゃないの……

 リルテも、おいしいジューシュ、飲みたいだけなの……」

「私もおにいさまのジュース飲みたいなー!」


 ニコニコ笑いながらエリスレルアがそう言うと、レミアシウスはリルテを抱えたまま扉へ向かって歩き出した。


「ここのシェフが作ったジュースだっておいしいじゃないか。

 ホントにもう。

 コップ1杯ずつだけだぞー」

「やった!」


 扉を開けて走り出すエリスレルア。


「……レミたん、レルたんのお願いだと、断らないの……」


 耳元でボソッとつぶやかれ、苦笑いしたレミアシウスは、リルテの耳元でこそっとささやいた。


「あいつの機嫌、損ねたくないでしょ?」

「…うん…」


 右手でリルテの頭を軽くポンポンと叩き、セフィテアのほうを振り返った。


「飲み終わって落ち着いたら、あなたも食堂へ来てください。

 カップはそこに置いたままでいいですよ」


 そう言うとレミアシウスは部屋を出た。


 リルテを抱っこしたまま廊下を食堂へ向かっていると、玄関のほうから騒がしい気配が伝わってきた。


 ……なんとなく似たような感じの覚えがあるんだけど……


 あれは王都の公爵邸。

 レイテリアスと話していたら玄関方面が騒がしくなり……あの時はカルファレスが訪れたんだけど……

 彼だって学生だ。

 こんなところまで来るとは思えない。

 つまり、レイテリアスたちじゃない。


 じゃ、一体、誰が来たんだ?


 リルテを下ろし、玄関付近の様子を『見る』レミアシウス。

 そこには、きちんと正装した、黒に近い濃い青色の髪をした深緑の瞳の青年がいて、執事のカーテアスと話していた。


「王妃様はただ今お食事中でございます、ルオレアス様」

「では、私も食事に参加しても構わないだろうか?」

「旦那様にお伺いしてまいりますので、少々お待ちください」

「うむ」


 ルオレアス様?

 この物語をお読みいただき、ありがとうございます!

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