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星の姫、世界を渡る~王子の願いと虹色の奇跡  作者: 香名斗星南
第2章 揺れる心

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87 彼のために言えること

 次の日の朝食後、少ししてからリュアティスの部屋の扉をノックすると、扉が内側に引かれた。エリスレルアが先に入ってレミアシウスが続き、念のため鍵をかける。


『ホントに一緒に来るの?』


 リュアティスにだけ聞こえるようにレミアシウスが問うと、リュアティスは黙ってうなずいた。


 昨日の夜、エリスレルアにカードを持っていかせたあと、どうなったんだろうと気を揉んでいたレミアシウスに、『エリスレルアが眠ってしまったから迎えに来てほしい』というリュアティスの『声』が聞こえてきた。


 行ってみるとエリスレルアはソファで寝ていて、婚約者の本当の意味を説明したこと、エリスレルアの質問にリンシェルアが答えたということを聞かされた。


 そして彼は。


「僕も同席させていただけませんか?」


 と言ったのだ。


『え、でも、にいさんはたぶん、テレパシーで話すだけなんじゃないかと……』


 にいさんが来るなら、エリスレルアに僕を連れてこいなんて頼まないと思う。


『それでも、です。

 婚約の条件を定める時、あなたは、おにいさんが迎えに来たらその指示には必ず従えとおっしゃいました。それは、連れて帰る流れになったら引き止めるな、ということなのでしょう?

 あなた方が何を話しているのかわからなくても、その結果、彼女が消えてしまうかもしれないのなら、僕はその場にいたいんです』


 エリスレルア、愛されてるな~~!


『わかったよ』


 ということで、レミアシウスは、リスの森へ3人で行くことにしたのだ。


「じゃ、エリスレルア、お願いします!」

「ラジャ!」


 一瞬でリスの森の泉に着く。


 いつ来てもきれいなところだな~


 レミアシウスが辺りを見渡し、エリスレルアは泉のほとりに近づいた。

 リュアティスもそれに付いていく。

 少し離れてキョロキョロしていたレミアシウスは、エリスレルアに声を掛けた。


「で、これからどうするんだ?」

「ん?」

「にいさん、いつ話しかけてくるんだ?」

「知らないよー。

 いつでもいいから、ここに連れてきてって言われただけだもん」


 何それ……どういうこと?

 にいさん、どうやって僕たちがここに来たことを知るんだろう?


 どれだけ待つかわからないとわかっていたら、お弁当持ってきたのに、とレミアシウスが考えた時。


『レミアシウス』


 かすかな『声』が聞こえてきた。


『にいさん!』

『エリスレルア、そこにいるよな?』

『うん』

『少しだけ離れてくれ。

 近いと僕の『声』を聞かれてしまうかもしれないから』


「エリスレルア、にいさんが話しかけてくるまで暇だから、少し散歩してくるよ」

「うん!」


 リュアティス君が一緒に来ていてよかった。


 泉の水を触りながらたわいもない話をしている二人から離れると、セルネシウスの事情徴収が始まった。


『婚約ーー!!??』


 そうなるよね。


『だから、それは、リュアティス君が、エリスレルアのことしか考えられないのに許嫁がいるのがイヤだから、解消したいんで婚約したい人がいるって言わせてほしいってことでさ。

 僕が勝手に認めただけだよ。

 エリスレルアが婚約したわけじゃない。

 ルイエルト星には婚姻制度とかないじゃない。

 エリスレルアに、婚約者って何って聞かれて、説明が難しくてホント困った』


 少し間をおいて『声』が聞こえてくる。


『じゃあ、その、リュアティス…君は、本気ってこと?』

『エリスレルアがそっちに帰っても構わないっていうくらい、本気』


 ある意味、エリスレルアがうらやましい。

 僕のこと、そんなに想ってくれた子なんて、いなかったよな~。


 ふと、リルちゃんの笑顔が浮かんで、レミアシウスは慌てて頭を振った。


 僕は、僕と同じくらいっていうか、大人っていうか、のほうがいいかな…


『エリスレルアが、リュアティス君が死んじゃいそうになったって言ってたんだけど、それっていつ?』

『ん-ーっと……あれは……2週間ちょっと前かな?

 ちょっと事件があって、エリスレルアがさらわれたみたいになっちゃってさ。

 それを助けるために彼が魔力使い果たしちゃって、命が危なかったんだよ。

 それで、エリスレルアが、「誰か来てー!」って助けを求めたの。

 彼女は普通に助けを呼んだだけだったんだけど、その想いが強過ぎて、かなり強いテレパシーになったみたい』

『……昨日、悲しそうだったのは?』

『彼からもらった手紙が破り捨てられちゃったみたいだ。

 そのせいで家一軒含む半径100メートルくらいのエリアが消失したんだけど、その事件も、なんとか治まったよ』


 こうしてみると、大変だったな~この数週間。


『にいさん。

 事件が起こるたびに、早くそっちに帰ったほうがいいんじゃないかって気にはなるんだけど、でも、ホントにそれが世界のためになるのか、僕、わからないんだ。

 リュアティス君が召喚して、エリスレルアはこっちへ来た。

 実際は召喚で渡ったっていうより、エリスレルアの『力』で世界を渡ったんだけど、それは行き先を間違えたんじゃなく、何か惹かれる要素がここにあったんじゃないかって思えてさ』


 彼のために言ってあげられることは、これくらいしかない。


『………』

『エリスレルアは、恋愛感情に目覚めてるわけじゃないけど、もう既に、彼と離れたくないとは思ってると思う。

 ……今離れたほうが傷は少ないだろうけど、でも、僕は……』

『……本当の別れが訪れた時に……お前、あの子の心を守れるのか?』

『!! ……それは……』


 自信がない。

 でも。


『同じことが起こるとしたら、そっちで起こったほうが安全なのはわかるよ!

 たくさんフォローできる人たちがいるから!

 ていうか、にいさんがいれば、それで治まることなのかもしれない!

 だけど……大好きな人の命がなくなっちゃうっていうのは、どこでだって起こり得ることで!

 だったら、ここでもいいじゃない!』


 自分がリュアティスやこの世界にとって、かなり酷いことを言っている自覚はあったが、レミアシウスは止められなかった。


『エリスレルアは泣いてそっちに帰っちゃうかもしれない。

 僕のことなんて気遣う余裕もなく。

 それでこの世界は終わるかもしれないけど、それは、それが世界の……ルイエルト星の選択だったってことなんじゃないの?

 エリスレルアは星とともに生きる運命を背負った姫なんだから!』


 セルネシウスはなかなか返答しなかった。


 しばらくして彼が発した言葉は。


『今、エリスレルアの傍に、誰かいるよね?』

『え?』

『それが、リュアティス君?』

『……………そうだよ』

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