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星の姫、世界を渡る~王子の願いと虹色の奇跡  作者: 香名斗星南
第2章 揺れる心

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86 対処方法

 ベランダに置いたソファに、リンシェルアと並んで座ったエリスレルアは、リュアティスと似てるけど違う、やわらかい空気を感じてホッとしていた。


 心が不安定で、あっちこっち飛んで、泣いたりして、だいぶ疲れた気がする。


「きれいな星空ね~」

「うん!」


 リンシェルアから優しくていい香りがしていて、ますます眠くなってきた。


 けど、せっかく、いろいろ聞いていいって……


「リンシェルアは、遠くにいたいけど、それは寂しい時は、どうするの?」


 何の脈絡もなく、いきなり聞かれて少し戸惑ったリンシェルアだったが、リュアティスが私を呼んだのはこのためだったのだろうとすぐに気づいた。


「エリスレルアちゃん、リュアティスの遠くにいたくなったの?」

「……うん」

「どうして?」

「……眩しいから」

「眩しい?」


 うつむき加減になるエリスレルア。


「リュアティスの優しい光がね!

 急に眩しくなるの。

 それで、それが、時々すごい塊になって…えっと…襲いかかってくるの。

 だから逃げたら、寂しくて……どうしたらいいかわからない」


(リュアティスの光って、何なのかしら?)


 エリスレルアに聞こうかと思ったが、リュアティスに聞いてみることにする。


『リュアティス。あなたの光って、何?』

『え……と……

 自分で言うのは少し恥ずかしいのですが、彼女の話によると、僕が話しかけたりすると、光が胸の中に届くようなのです』

『ふーん……

 じゃあ、それが急に眩しくなるっていうのは?』

『…………彼女のことを…………好きだって思うと眩しくなるようです』


(まあ! ……リュアティスったら、なんて正直なのかしら)


 本当に困っていて、なんとかしてほしいから正直に答えているのだろう、とリンシェルアは思った。


『じゃあ、それが時々すごい塊になって襲いかかってくるっていうのは?』

『……………………』

『……わかったわ』

『えっ!?』


 星を見ながら、リンシェルアはにっこりと笑った。


『あなたも男の子だったのねぇ』


 その『声』に何かの含みを感じたのか、リュアティスの焦ったような『声』がリンシェルアに届いた。


『誤解のないように言っておきますが!

 僕は、襲いかかってはいませんよ!!』


 クスッ


「エリスレルアちゃん。

 リュアティスを許してあげて」

「えっ?」


 リンシェルアのほうを向くエリスレルア。

 その彼女にリンシェルアは優しい視線を送った。


「あの子もまだやっと、そういう気持ちを知ったばかりなのよ」

「そういう気持ちって?」

「あなたのことを、心から愛しているっていう気持ちよ」

「……心…から愛して?」


(そう……そうなのね……あなたはまだ知らないのね……)


 自分が子どもだった頃のことを思い出す。


 一人娘を溺愛していたアークレルト公爵は、リンシェルアを許嫁にしたいという申し込みをすべて断っていた。嫁にやる気などさらさらなかったのだ。

 公爵に守られながら育った彼女は13歳の時、当時王太子だったアルデラフトに恋をした。

 クレファイス学園でアルデラフトを見かけるたびにどうしようもないくらいときめいて、少しでも傍にいたいと思うのにどうしたらいいのかわからなくて、よく一人で泣いていたものだ。


(この子はきっと、私以上に特殊な環境で育ってる。

 おにいさんの話はよく聞くのに、ご両親とかご家族とかの話は一切ない。

 リュアティスは『どこか遠い星の人で、いずれ向こうの世界に帰らなくてはならない』と言っていたし……)


「心から人を愛することはとても素敵なことよ?

 けど、その気持ちは自分でも抑えられなくなることがあるほど強い気持ちなの。

 たぶん、その強い気持ちが、あなたに襲いかかったすごい塊なのよ」

「!」

「だから、逃げなくてもいいの」

「でも、大き過ぎて……受け止めきれない、です」


(ああ、そういうことなのね)


 心細そうというか、不安げに自分を見ているエリスレルアを、リンシェルアはそっと抱き寄せた。

 優しい香りに包まれて、エリスレルアの頬が熱くなる。


「そういう時は、その塊は、リュアティスに返しなさい」

「え?」

「あなたに伝わってきている光は、彼のあなたへの気持ち。

 それを受け止めきれないのなら、それは彼に返せばいいのよ。

 受け止めきれないものを、全部受け取る必要はないの」


 ソファに広がっているリンシェルアのドレスをエリスレルアがギュッと掴んだ。


「リュアティス、大丈夫?」

「そうねぇ……最初はびっくりするかもしれないけど、エリスレルアちゃんがリュアティスのことを嫌いになったんじゃないってわかれば、大丈夫だと思うわ。

 自分の気持ちが返ってきているだけなのだもの」

「そうなのね?

 そしたら、遠くにいなくてもいいのね?」

「ええ。

 でも、上手く返せなくて遠くにいたくなったら、私のところへ来なさい。

 私があの子に、もっとちゃんと加減しなさいって言ってあげるから」

「リンシェルア……」


 ギュッとしがみついたエリスレルアの背が優しくトントンと叩かれて、彼女の眠気は我慢の限界となった。


『あなたは、あなたの中の想いを大切にすればいいの。

 それがあの子の幸せにもつながっているわ』


 ウトウトしながらエリスレルアは思った。

 リンシェルアもずっと抱きしめていたい人だと。 


『……今の私の恋人は、リンシェルア……か…な……』

「………え?」


 眠ってしまったエリスレルアをソファに横たえたリンシェルアは、彼女を乗せたソファごと魔法で浮き上がらせた。

 ゆっくりと部屋の中へ戻す。


 そっと床に降ろし、ベランダとの間の扉を閉めていると、寝室から肌掛けを持ったリュアティスが出てきた。


「母上、ありがとうございました」

「リュアティスー、この子を眠らせるのは魔法じゃ無理よ。

 理由はわからないけど、魔法が通じないわ。

 今眠ったのだって、疲れて眠くなっていたから少しトントンすることで眠っただけなのよ」

「かなり前に、レミアシウスさんが眠らせたのを見たことはあるのですが」

「それはたぶん、精神に直接作用する何かなのでしょう」

「そうですね」


 眠っているエリスレルアに肌掛けをかけて優しく見つめているリュアティスに、リンシェルアは微笑みを浮かべた。


「リュアティス。

 エリスレルアちゃんには、受け止めきれない光の塊はあなたに返しなさいと言っておいたわ。

 だから、あなたが自分の気持ちを抑えられなければ、それは自分に返ってくるものと思いなさい」

「え?」

「その結果、あなたがふっ飛ぼうと廃人になろうと、私はエリスレルアちゃんの味方ですからね」

「……母上、それはちょっとひどくないですか?」

「ひどくないでしょ。自業自得よ」


 言いながら部屋の扉に近づき、それを開けたリンシェルアは、いたずらっぽい笑みを浮かべてリュアティスを振り返った。


「そ、れ、と!

 これ以上あの子を泣かせたら承知しないわよ!

 なんたって私は、彼女の今の恋人なのだから」

「は!?」

 この物語をお読みいただき、ありがとうございます!

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