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星の姫、世界を渡る~王子の願いと虹色の奇跡  作者: 香名斗星南
第2章 揺れる心

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80 広がる動揺

 レミアシウスとリザフィーナが食堂へ行ってみると、エリスレルアとリルテは既にスープを飲み終わって次の料理を待っていた。


 レステラルスは、エリスレルアの行動は止めなくていいと言っていたが、ホントにこれでいいのだろうか、とレミアシウスは思う。


 いくら何でも、のびのびし過ぎでは?

 て、まぁ、エリスレルアに礼儀作法を教えるなんて、にいさんならともかく、僕には無理だけど、でも、仮にも王子様の婚約者なんだし、万が一、そういう場面っていうか、そういうシチュエーションに対応しないといけなくなった時に、困るんじゃ?


「レミたん、こっちこっち!」


 リルテに呼ばれた彼はテーブルを回り込み、リザフィーナがそれに続いた。


 レミアシウスはセフィテアも誘ったのだが、彼女に辞退された。


「現時点ではわたくしがご一緒ではご迷惑をお掛けしそうですので」


 そんなことはないと言いたかったが、さすがに今回はやめた方がいいかとレミアシウスにさえ思えて、それ以上誘えなかった。

 エリスレルアが怒っていたのが手紙を破り捨てたセフィテアに対してなら、何とでもフォローできたのだが、部屋を飛び出した時、リュアティスが悪いと叫んで出ていったので、何が本当の原因だったのかがレミアシウスには把握し切れていなかったからだ。


 仲直りして帰ってきてくれたけど、ちょっとしたことで爆発しかねない。

 食事中にエリスレルアの気分を害すなんて、もってのほかだ。


 にこにこ楽しそうに運ばれてきた料理を食べているエリスレルアを見て、平和が一番だとしみじみと思うレミアシウスだった。


「王子しゃま遅いねー」

「そうねー」

「リルちゃん、リュアティス君に何か用があるの?」


 レミアシウスの何気ない問いに、きらきらした笑顔を返すリルテ。


「レルたんのお手あみ、読ませてもらうのー」

「そうだった!」


 え?


「えっと、リルちゃん、あの手紙は、失敗なの。

 次に書いたのじゃ、だめ?」


 エリスレルアが……


「えぇ!?

 レルたん、王子しゃまのちゅぎに読んでいいって……

 リルテ、楽しみにしてたのに!」

「だって……」


 恥ずかしがってる!


 滅多に見られない現象に、レミアシウスは不吉な何かの前触れじゃないかと思うくらい驚いた。


「最初のほうは、いいけど、終わりのほうを、間違えた。

 なんだかよくわからない、けど、コンヤクシャじゃないからリュアティスもダメって、思った。

 だから、捨てようとしたのに、心から欲しかったってリュアティスが言ったから、あげたの!」


 ナイフとフォークを持ったまま、エリスレルアがだんだん興奮してきて、虹色に光り出す。


「あれは、コンヤクシャじゃないと、読んじゃダメなの!

 だから、ホントは、リュアティスもダメなの!」

「きゃー!」

「わっ! やめろ!」


 虹色の風に巻き込まれて、リルテの身体が宙に浮き、レミアシウスが咄嗟にその身体を抱き寄せる。


『でも!

 リュアティスさんに宛てた手紙だから、リュアティスさんだけはギリギリOKなだけなの!

 それ以外は、だめなのーー!!』

『エリスレルア!!』


「!! ……リュアティス……」


 リュアティス君?


 彼がエリスレルアの名前を呼んだのはわかった。

 けど、そのあと何を話しているのかは、聞き取れない。


 エリスレルアの扱いだけじゃなく、集中して話しかけるのも上手くなったなー。


 エリスレルアが落ち着いてきて、虹色の光が消えた。

 自分の腕の中で、驚いて固まっているリルテに話しかけるレミアシウス。


『リルちゃん。

 今回の手紙だけは、読むの、我慢してくれないかな?

 何か、よほどエリスレルアの感情を揺らしてしまうようだから』

『レミたん……わかった……リルテ、我慢しゅる』

『ありがと』


 リルテのほっぺに感謝のキスをして、床に降ろした。


「えへへ」


 と笑ったリルテは、トコトコとエリスレルアのところに歩み寄った。


「レルたん、ごめんなの。

 リルテ、ちゅぎのお手あみでいいの」

「リルちゃん……ごめんね」

「いいのー。ご飯、食べよ!」

「うん!」


 エリスレルアの情緒が不安定過ぎる。

 ただ単に、手紙を破られたとかだけの問題じゃない気がする。


 ほかにも何か、あったんじゃ……


 それから少ししてリンシェルアとレステラルス、ラーレス夫妻が入ってきた。


「あ! かーたんたちだ!」


 椅子から降りてネルティのところに駆け寄るリルテ。


「かーたん、リルテ、おとなしくしてたよ!」

「リルテはいい子ねー」

「いいなー。リルちゃん」


 なでなでされてうれしそうなリルテを見ているエリスレルアが羨ましそうにしているような気がして、レミアシウスはますますわからなくなった。


 どうしたんだ、一体……


「あれ? 王子しゃまは?」

「リュアティスはー……ちょっと自室で用があるみたいなの」

「しょっかー」


 それから、何とか落ち着きを取り戻し、パクパクと残りの料理を食べ終わって食後のドリンクを飲んていたエリスレルアが、大事な伝言を思い出した。


「あ! そうだ! おにいさま!」

「ん?」

「明日、リスの森におにいさまを連れてきてって、セルネシウスおにいさまが言ってたよ!」


「「「「「「?????」」」」」」


 急に向こうの言葉をしゃべられて、レミアシウス以外のそこにいた人たちはハテナの顔になった。


 ………………え?


「えええええええ??????」


 驚いているレミアシウスに、みんなますますハテナに。


 お、落ち着け。

 とりあえず、話は食事のあとだ。


「わかった。スケジュールがどうなってるか見てみるよ」

「うん!」


 スケジュールなんて、ないけれど!


 胸がドキドキする。


 にいさんが話しかけてきたってこと?

 エリスレルアに。

 この世界を、見つけたってこと?


 この世界に来てからのいろいろなことが思い出されて、レミアシウスは食事がのどを通らなくなった。


「レミたん?」


 どうしよう。

 どうしようもないけど。


 ここにいるのは危険だから、早く帰ったほうがいいって思っていたのに。


 もう少し、見つけてほしくなかったっていうか……

 もうしばらく、こっちにいたかったっていうか……


 やっと言葉も覚えてきたのに。


 何だろう、この気持ち。


 レミアシウスがグルグル考えながら食べ物を口に運んでいた時、ネルティの傍で彼を見つめていたリルテから『声』が届いた。


『レミたん、リルテは一生付いてくよ!』

『…………えっ!?』

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