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星の姫、世界を渡る~王子の願いと虹色の奇跡  作者: 香名斗星南
第2章 揺れる心

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77 反省と反応

 部屋に直接だと先生が驚くかな、と、エリスレルアは夕焼けの終わり際で赤く染まっているベランダに出現した。


「ただいまー。

 あれ? リルちゃんは?」

「リルちゃんは、暇になったと言って、そこで寝てますよ」


 リザフィーナが指し示したソファで、リルテは眠っていた。


「リルちゃんったら、もうすぐ夕飯なのに~。

 あ! 先生! 私も書けました!

 おかしくないか、見てください!」

「はーい」


 エリスレルアから便せんを受け取り、読み始めるリザフィーナ。


【親愛なるリュアティス様

 お手紙、ありがとう!

 先生はとても優しいです。


 私も星は一緒に見たいです。

 私も星の光のシャワーが大好きです。

 でも、空にある星は、輝いていない星のほうが圧倒的に多いです。

 その星たちも私は大好きです。

 そこには素敵な場所がたくさんあります。

 いつかリュアティスと行けるといいと思います。

 そしたら、そこは、きっと優しいリュアティスの光がいっぱいになるから、ずっといたい星になるでしょう。


 フェンリルちゃんを治してくれて、うれしかったです。

 そのあと、優しく抱き寄せてくれたのも、うれしかったです。

 あなたがくれた力で、フェンリルちゃんを森に連れていき、そのあと、リンシェルアのところに飛んで、そのあと、リルちゃんのところまで飛べました。


 リュアティスの優しい手紙は、とてもうれしかった。

 なくなってとても悲しかったけれど、幸せな手紙は今でも私を温かく包んで光っています。


 私を守る星たちが、あなたも守りますように。


         あなたのエリスレルアより】


 読み終わって、リザフィーナは固まった。


(こ……これは…………私が読んでよかったのかしら……?)


「……先生?」

「え、あ、と……よく書けていますよ。

 とてもすばらしいわ」

「やったー!」


 大喜びしているエリスレルアを微笑んで見つめながら、リザフィーナは羨ましくて仕方なかった。


(こんな手紙……どうすればもらえるのかしら?

 ていうか……どうすれば書けるのかしら?)


「じゃ、封筒にいれて~、このお花も押し花にして~」


 ついさっきまで生花だった水色の花が一瞬で押し花になった。


「で、一緒に入れて、封を……っと……できた!」


 封筒の表に『リュアティスへ』と書き、エリスレルアは願いを込めた。


『リュアティスさん以外に破られちゃだめよ!』


 できた手紙をエリスレルアがニコニコ見つめていると、リルテが起きた。


「あ、レルたん! お手あみ、書けた?」

「書けたよー」

「え! 見しぇて!」

「あ……もう封しちゃった……」

「えっ…………えーーーっ!!

 リルテ、楽しみにしてたのに!!」

「だって、リルちゃん、寝てたし……」

「だって、レルたん、いなくなって、眠くなって……グシュ……」


 涙ぐむリルテ。


「わっ! 泣かないで、リルちゃん!

 リュアティスの次に見ていいから!」

「…グスン……ホントに見ていい?」

「うん!」


 リルテは、ぱぁっと笑顔になった。


「やったー!

 王子しゃま、早く戻ってこないかなー」

「ん? ……もうすぐ来るよ!」

「おお!」


 その時、扉が開いてリュアティスが部屋に入ってきた。


「「おおおーー!」」


「ねっ!」

「え?」

「王子しゃま、もうしゅぐ来るってレルたんが!」

「リンシェルアも来るよー」


「「「えっ?」」」


 リルテとリザフィーナが期待して入り口を見ていると、レミアシウスが入ってきた。


「「…………」」


「え?」


 微妙な空気を感じて、入ったところでレミアシウスは足を止めた。


「……レルたん、王妃しゃまじゃないよ?」

「リンシェルアはまだ玄関だよー」

「なーーんだ~~」

「リルちゃん……『なーんだ』って……なんか、僕、可哀想じゃない?」

「え! ……えへへへへ……」


 笑ってごまかすリルテにレミアシウスが苦笑していると、エリスレルアが顔を輝かせた。


「あ! そうだ! おにいさま!」


 彼女がセルネシウスの話をしようとした時、部屋にもう一人入ってきた。


「「!!」」


「リルちゃん?」


 リザフィーナの影にリルテが隠れ、不思議そうな顔をするリザフィーナ。

 エリスレルアはテーブルに駆け寄り、置いてあった自分とリルテの手紙を後ろ手に隠した。


「手紙は、ないよ!!」


 レミアシウスに続いて入ってきたセフィテアを警戒して、エリスレルアの周囲に虹色の風が巻き上がる。

 瞬時に跳躍して距離を詰めたリュアティスが、エリスレルアを抱きしめた。


「大丈夫。もう手紙は破れらないよ。

 和解したんだ」

「ワカイ? って?」

「互いに謝って、許し合った」

『あ、和解?』

『うん』


 警戒を解かないまま、リュアティスを見上げる。


「どうして、リュアティスも、謝る?」

「……僕も、悪いところがあったから」


 首を横に振るエリスレルア。


「あの手紙、悪いところ、なかった!」


 叫びとともに、風が強まっていく。


『落ち着いて、エリスレルア。

 手紙に悪いところがあったんじゃなくて、僕の、彼女に対する態度がよくなかったんだよ』


 リュアティスの『声』が優しい光と一緒に、エリスレルアだけに届く。

 その心地よさに、彼女の周りで吹いていた虹色の風が治まった。


『態度?』

『彼女は僕の許嫁……婚約者みたいなものだったんだ。

 でも、僕は、彼女のことを婚約者だとは思えなかった。

 だから、彼女が何をやっても、僕はほとんど無視していたんだ』

『ずっと抱きしめていたい人だと思えなかったってこと?』

『そうだよ』


 少し考えるエリスレルア。


『だから、手紙を破ったの?』

『破ってはいないよ。

 破る以前の問題で……受け取っていないんだ。

 手紙だけじゃなく、花とか、お菓子とか、本とか……彼女が僕にプレゼントしてくれようとしていた物、全部、受け取らずに送り返していたんだよ』

『!!』


 その瞬間、エリスレルアは、怒った顔をしてリュアティスの腕の中から窓辺へテレポートした。


「リュアティスが、悪い!!」

「!!」


 リルテの手紙をテーブルの上に送り、残ったリュアティスへの自分の手紙を破ろうとしたエリスレルアだったが、リュアティス以外に破られてはだめだと自分が願った封筒は、どんなに引っ張っても破れなかった。

 仕方なくリュアティスに向かってそれを投げつけて、叫ぶ。


「心の……いっぱい入ったプレゼント、傷つけるのはリュアティスでもダメ!

 そんな人は、コンヤクシャじゃない!!」


 そう言って、ベランダへ走り出たエリスレルアは、そのまま手すりを飛び越えていった。

 みんなが固まっている中、呆然としながら落ちた手紙を拾うリュアティス。


「…………」

『あの……リュアティス君……』

「何をやっているの、リュアティス!

 早く追いかけなさい!!」


 ……母上……


 手紙を内ポケットに入れたリュアティスは、ベランダへ飛び出してそのまま手すりを飛び越え、彼女を追って黄昏時の麦畑の中を走り抜けた。

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