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星の姫、世界を渡る~王子の願いと虹色の奇跡  作者: 香名斗星南
第3部 第1章 王子からの手紙

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66 引き裂かれた優しい心

 ロドアルの家の前に出現したエリスレルアは、扉をノックして叫んだ。


「リルちゃん、遊びに来たよー!

 遅くなって、ごめんねー!」


 扉が内側に引かれてリルテが顔を見せた。


「レルたん、いらっしゃい!」

「は! そうだった!

 リルちゃん、1回、ドア閉めて!」

「え? うん」


 素直にリルテが扉を閉めると、エリスレルアは改めてノックした。


 コンコン


「郵便でーす! リルちゃんいますかー?」

「ユウビンって、なんですかー?」

「え! ……何だろう?

 ……間違いです、た! お手紙だよー!」

「いらっしゃいましぇー!

 かーたん、お手あみだって!」


 扉を開けながらリルテが叫んだ。


「違う違う、リルちゃんにお手紙だよ!」

「えっ、リルテに!? 誰から?」

「リンシェルアよ!」


 言いながらエリスレルアが封筒をリルテに渡すと、リルテは顔を輝かせた。


「ええ!! 王妃しゃまから? えぇえ!

 リルテ、読むのー!」

「私もリュアティスにお手紙、読む!」

「レルたん、に、じゃなくて、の、だよー」

「そっか! リュアティスの、読む!」


 二人は廊下を抜けてリビングまで行き、テーブルの椅子に座った。

 封を切って、手紙を読む。


「リルテがしゃきに読むね!

 えっと……

 リルテしゃま……この、おはなは、エリスレルアちあん、が、えらび、ました。

 これから、も、なかよくして、あげて、ね。

 あなた、が、たより、です。

 リンシェルア より。

 きゃあーー!!

 かーたん、かーたん!

 リルテ、王妃しゃまに、頼りにしゃれてるのー!」

「よかったわねー、リルテ」

「うん!! レルたんも、お花、ありあと!」


 とてもうれしそうなリルテの様子に、エリスレルアも笑顔になった。


「いいなー、リルちゃん」

「レルたんのは? 王子しゃま、なんて?」

「えっとねー。

 親愛、なる、エリスレルア

 手紙、ありがとう。

 僕は、勉強、がんばって、います。

 先生に、習う、ようになって、言葉、こっちの、上手に、なりました、ね。

 いつか、並んで、星を、見る…見て、話し、ながら、眠り…たい、一緒に。

 星は、輝く、遠く、です、が、星の、光は、降り、注いで、いる、僕の、上。

 あなたの、上には、どうか、僕の、光が、降ります、注ぐ、ように、ずっと。

 願う、いる……願っている、か!

 願っている、あなたの、心が、選んで、僕を、と。

 あなたの、リュアティス より」


 今までで一番長い!


 「こんなに長くても読めるようになったよ!」とエリスレルアが叫ぶ前に、リルテとネルティが叫んだ。


「「キャアァァーー!!!」」


「すてき! すてき!! 王子しゃま、しゃすが!!」

「ホントねーー! いいわねーーー!

 ロドアルも、こんな手紙、くれないかしら~」


 え…えっと……どこが?


 文字を読むのに一生懸命だったエリスレルアはステキポイントがどこかわからず、「どこが?」と聞きたかったのだが、何か聞き辛くて、手紙に視線を落とした。

 内容を見てみる。


【いつか並んで星を見て、話しながら一緒に眠りたい】

 並んで星を見るのは、確かにステキかも!


【星は遠くで輝いていますが、星の光は僕の上に降り注いでいる】

 星の光のシャワーは、私も大好き!


【あなたの上には、どうかずっと、僕の光が降り注ぎますように】

 リュアティスさんの光はとても優しくて、きれいで……それで……


 ふと、視線を感じて顔を上げると、二人がキラキラした瞳をしてエリスレルアを見ていた。


「えっ?」


「「えっ?」」


 どうしてこの二人はこんなにキラキラ期待に満ちて、私を見ているのかしら?


「どうしたの?」

「えっ……えっと……それは…ねぇ……」

「レルたんも、キャーって言うかなって、思って!」


 そっか!


「そうなの! こんなに長い手紙、初めてで!

 あまり間違わずに読めたな、キャアー! って感じで!

 ………あれ?」


 なぜか、二人ともグーの手を額に当てて、うつむいた。


「…かーたん、レルたん、わかってないの…」

「そうね……殿下も大変ね……」

「…これは、リルテががんばらないと、なの…」

「そうねぇ、王妃様の頼みは、それなのかもしれないわねぇ」


 んんん???


 二人は盛大にため息をついた。


「リルちゃん?」

「あー、レルたんは、気にしなくていいのー。

 これは、リルテの使命なの!」


 よくわからないけど、何か使命に燃えているリルちゃん。


「そうなのね! がんばってね!」

「うん!」


 エリスレルアとリルテが手紙を交換して読み合っていると、扉を叩く音がした。


 ドンドン!


「どなたか、いらっしゃる?」

「はーい」


 ネルティが扉まで行って、誰何(すいか)した。


「どちらさまでしょうか?」

「……旅の者だけど、お水を分けていただけないかしら?」

「少々お待ちください」


 ネルティがコップに水を汲んできて扉を開けると、そこには、泥だらけでボロボロになったドレス姿の少女が立っていた。

 ネルティがコップを差し出すと、ひったくるようにそれを取った少女は、ごくごくと飲み干した。


「おいしかったわ。ありがとう」


 にっこり微笑んで礼を言ったあと、少女はうつむいてぼそぼそとつぶやいた。


「最悪だわ。

 もう、死んでもいいと思って家を出たのに、魔物が襲ってきたら助かりたくて攻撃してしまうし、のどが渇けばお水が飲みたくなるし、飲んだお水はおいしいし」

「あの……それはどういう……」


 なんとなく不穏な空気を感じネルティが聞こうとしたら、少女は顔を上げて微笑んだ。


「あぁ、何でもないわ。

 ごちそうさま。それでは」


 立ち去ろうと背を向けた時、奥のほうから楽しそうな声が聞こえてきた。


「リュアティスが、治してくれたの!」


(リュアティス!?)


 反射的にネルティを押しのけ、声がしたほうへと駆け出す少女。


「お待ちなさい!」


 少女から感じるただならない雰囲気に、ネルティがあとを追う。

 少女は、奥にあるリビングで笑い合っている二人の少女を見つけた。


 テーブルの上にはリュアティス専用の紋章で封をされていたと思われる封筒があり、幼女が手にしている便せんは、水色がかった銀色の縁取りのある、リュアティス専用の便せんだった。


「あれ? あなたは―――」


 突然の乱入者が、少し前に魔物オオカミたちに取り囲まれていた女の子だとエリスレルアが気づいた直後、その少女はリルテから手紙をひったくって内容に目を通し、すさまじい形相でリルテをキッとにらんだ。


「あなたが、わたくしからリュアティス様を奪った婚約者ね!!」


 少女は、叫ぶと同時にリュアティスの手紙をビリビリに引き裂き、それを炎魔法で燃やし尽くした。

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