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4 ここどこ?

 エリスレルアが出現したところはどこかの草原だった。

 地面から30センチほどの高さに立った状態で現れた彼女は、そのまま着地して辺りを見渡した。


「ここどこ?」


 周りをぐるっと山々に囲まれたのどかな風景が広がっている。

 エリスレルアから少し離れたところには苔に覆われたかなり大きな四角い石がゴロゴロ重なっている。

 どこをどう見てもさっきまでいたにぎやかでアトラクションいっぱいの遊園地ではない。


「遊園地の外まで出るつもりなかったんだけど」


 変なドアみたいなのが浮かんでたし、なんとなく怪しく光る白い模様からおにいさまと一緒に逃げようとしただけだったのに。

 あの乗り物、乗りたかったのにー。


 ここがどこなのか、遊園地はどこにあるのか、どこかにヒントがないか辺りをウロウロ探していて、ふと思い出した。

 

「外に出ちゃうと、入るのにお金がいるとかじゃなかったっけ?」


 だから勝手に遊園地の外に出ちゃダメだって、おにいさま、何度も言ってた!

 私、お金持ってないよーー!


 ポシェットを開けてみる。

 中に入っているのはきれいな模様のハンカチが1枚だけだった。


「おにいさま! お金ー!」


 叫んでみたけど、何の反応もない。

 ていうか。


「そういえば、おにいさまは?」


 一緒に飛んだはずのおにいさまがいない。


「おにいさま、どこー?」


 辺りの草むらに隠れてるのかもしれないとガサガサ歩いてみたけど、やっぱりいない。

 飛ぶ前のことを思い出してみる。


 あの時、おにいさまは私を弾き飛ばそうとしていたみたいだった。

 で、私は一緒に飛ぼうとした。

 私がおにいさまに負けるはずないから、おにいさまは一緒に飛んだはず。

 うん、確かに一緒に飛んだと思う。

 それなのに、今、近くにいない。


 エリスレルアは半笑いになり、自分の頬を冷や汗が伝うのを感じだ。


 もしかして、飛んでる途中で、どっかに落としちゃった、とかだろうか!

 だとしたら早く探さないと、セルネシウスおにいさまに怒られる!!


「レミアシウスおにいさま! どこーー!!」


 思いっきり叫んで、目を閉じて集中して探す。

 けど――――――どこにもいない。


 たいへんだーー!!


 あの時、飛ぶ直前に見えた、場面。

 必死に叫んでいるセルネシウスおにいさま、どっかの小屋に落ちたレミアシウスおにいさま、ベッドで寝てるっぽい知らない人。


 セルネシウスおにいさまと知らない人はともかく、レミアシウスおにいさまは、確かにどこかの小屋に落ちていた。

 でも、見渡す限り、あの時見えた小屋と同じものは見えない。


 ってことは、山の向こう?

 そうか、遊園地も山の向こうとか!


 ―――とにかく、おにいさまを見つけないと!


 エリスレルアの周りに風が巻き起こり、辺りの空気が虹色に輝きだす。

 風になびいた自分の髪を見ると、色は茶系から本来の色に戻っていたが、長さはここに来る前と変わっていなかった。


「短いままだけど、茶色よりは強いかな」


 「お前のテレパシーは強過ぎるから、誰彼構わず送っちゃダメだって、いつも言ってるだろ!」っていつも言われてるけど、おにいさまがどこにいるかわからないから、全方向に向けて発信しなくちゃだし、この髪の長さなら、全力で叫んでも気絶する人はいないよね!


『レミアシウスおにいさまーー!!』


 思いっきり叫んでみたら、私の全力テレパシーに直撃されたのか、空から何か落ちてきた。

 けど、キンキューなので気にしないことにする。


 おにいさまの居場所が私の後ろのほうなら割と近いけど、前のほうの山の向こうならかなり遠いなー。


 小さな『声』も聞き逃さないように集中して探していたら、後ろのほうからおにいさまの『声』が聞こえてきた。


『…エリスレルアー』

『いたーー!!』


 近いほうだった!


 見つけたからそこに飛ぼうとして集中し始めたら、周りから声が聞こえてきた。


〈……イカナイデ……〉〈……イカナイデ……〉

〈……オネガイ……〉〈……オネガイ……〉


 ん?


 声は聞こえるけど、姿は見えない。


〈……オネガイ……〉〈……オネガイ……〉

〈……イカナイデ……〉〈……イカナイデ……〉



「どうして?」


〈……イカナイデ……〉〈……イカナイデ……〉

〈……オネガイ……〉〈……オネガイ……〉


「だから、どうして?」


 って、そうか、これは普通の声じゃない。弱いけど、テレパシーだ。

 つまりー。


『どうして?』


〈…チカラ……タクサン……ツカウ…〉〈…キエル……ワレラ…〉


「えっ!? そうなの?」


 あ。


『そうなの?』


 でも、消えるって言っても、もともと見えないから、もう消えてるような……


〈…ソウナノ…〉〈…ソウナノ…〉〈…ソウナノ…〉〈…ソウナノ…〉……


 そ、そうなのか。


 何がそうなのかわかんないけど、とにかく『力』を使うと何かが消えるっぽい。


「じゃあ、走っていこう!」


 レミアシウスおにいさまがいるほうへ走り出そうとして、さっき空から落ちてきたものを踏みそうになった。


「わっ!」


 咄嗟に避けようとして転んだ。


「イタタ……なんでこんなところにガイコツの頭が落ちてきたのー?」


 答えは。


「私のテレパシーを近くで受けて、直撃だったから!」


 答えてくれる人がいないから自分で答えて、ふと思った。


 ―――この頭、空を飛んでたの?


 ほかにも落ちたモノがあったら踏むかもしれないと思って周りをよく見たら、頭以外のほかの骨も辺りに散らばっていた。


 ……こ……これは……


「ガイコツの、バラバラ死体!!」

 次回予告〔海沿いの牧草地〕

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