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星の姫、世界を渡る~王子の願いと虹色の奇跡  作者: 香名斗星南
第2章 コンタクト

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24/203

24 テレポート

 昨夜、次回の交信予定を告げることができたこともあり、リュアティスは今日の授業を普通に受けようとしていた。

 目が覚めてすぐに衣類部屋を抜け、書斎にある地図を見て驚愕したのだが、それでも、全く居場所がわからないよりはマシだと思い直す。


「微妙な場所だけど、母上のご実家領だと信じたい」


 レイテリアス兄上と第2王子・シャリシス兄上の母君である第2王妃のご実家のホスフレイル領やセフィテアの実家であるベシス領ではないことを祈るばかりだ。


 ネスアロフは定時連絡に行っていて不在で、侍女たちが用意した朝食を食べながら問題点について考えた。


 1の居場所の特定は、エリアを絞れた、くらいかな。

 2番目の意思の疎通は、ほぼできるようになった。頭痛問題はあるけど。

 3番目の頭痛と気絶については、次の交信で言ってみるくらいしかない。

 4の探しに行く、は何か方法を考えないと。

 5送り返す、は今のところ論外。

 6は…彼らの居場所がホスフレイル侯爵領だった場合は協力を…求めたくない。


 2番はもういいな。

 5番と6番は優先度を入れ替えか。

 送り返すのは、彼らと会えてから考えればいいことだ。


 脳内箇条書きを更新。


 1 居場所の詳細情報

 2 意思疎通時の頭痛・気絶問題

 3 なるべく早く探しに行きたい

 4 兄上対策

 5 無事に送り返す


 1は、彼らがどこにいるのか、彼ら自身にどれくらいのことがわかっているかによるから、すぐには無理かもしれない。


 2は、希望的には今晩解決したい。

 結局は彼女次第な感じがするから気絶するほうはどうにもならないかもしれないけど、頭痛のほうは少しは軽くできるんじゃないかな。というか、できてほしい。


 ―――問題は3と4か。


 リュアティスは、朝食をとる手を止めてため息をついた。


「リュアティス様?」

「お口に合いませんでしたでしょうか?」


 給仕をしていた侍女二人が恐縮したのを見て、慌てて微笑む。


「そんなことはないよ。考えごとをしていただけだ」


 さっさと食べ終えてゆっくり考えよう。


 それからは食べることに集中し、食後の紅茶を飲んでいると、スッと力が抜ける感覚があってリュアティスはカップを置いた。


 !?


 条件反射で身構えたが、何も聞こえてこない。

 ただ、微妙に身体がだるい。


 彼女からの通信じゃないのか?


 いつもと同じようであり、いつもとは違う感覚に、何かがおかしいとリュアティスは寝室へ戻ることにした。


「ネスアロフが戻ってきたら、できるだけ詳細なこの国の東部の地図を借りてくるように伝えてくれ」

「かしこまりました」


 寝室に入ってドアを閉め、もたれる。


「この感じ……あの時と似ている」


 ピエフトと召喚対決した直後の感じに。


「あの時ほどひどくはないけど」


 何か予期しないことが起きても床に倒れたりしないようにとベッドへ急ぐリュアティスの目の前に、彼より10センチくらい背が低く薄いピンク色の髪をした少女が突然出現した。


「ワッ!」

「っ!!」


 ぶつかる寸前、リュアティスの身体は反射的に動いて右手で手刀を繰り出し、後ろに飛びのいた。

 手刀で吹っ飛ばされそうになった少女も間一髪後ろへ避けたが、そのままの勢いでベッドの上まで飛んで壁にぶつかって止まった。


 バン!


「ターッ」

「何者だ! って……えっ?」


 ベッドの隅で後頭部を撫でているのは、髪の色は違うが、あの時異世界との間の扉越しに見えた少女だった。


@▽△@@#(びっくりした)○※@@#(こんにちは)ユアテス#※(さん)

「…きみは……どうしてここに………どうやってここに……って…本物??」


 混乱した。


#▽#@○○#(やっぱり言葉)##※#@#(わかんないや)

「????」


 これ、彼女だよな?


□▽○(えっと)○▽○(そーっと)○▽○(そーっと)○#△(よわ~く)


 昨日は普通に話せたのに、どうして何を言っているのかわからないんだ?


 訳がわからずリュアティスが突っ立っていると、頭の中に声が響いた。


『『ユアテスさん!!! こんにちは!!! エリスレルアです!!!』』


 途端にひどい頭痛が彼を襲い、意識を失いそうになる。

 両手で頭を抱えて苦しそうなリュアティスを見て、エリスレルアは焦った。


『あ、強すぎ? ごめんね! ……これくらい?』


「……」


『……これくらい?』


「……」


『これくらい?』


「もう少しだけ、お願いします」


『言葉はわからないのー』


 ああ、なるほど。

 言葉を介さないから通じるってことか。


 昨日の感覚を思い出し、想いを発する。


『もう少しだけ弱くしてください』

『えっと……これくらい?』


 頭痛がしなくなった。

 よかったー。


『ありがとう』


 礼を言うと彼女もうれしそうに笑い、リュアティスの胸の奥が温かくなる。


『ユアテスさんも、もっと弱くても聞こえるよー』


 クスッ


 ベッドまで近づき、込める魔力量を中型モンスター用くらいにして話しかけながら、リュアティスは丁寧にお辞儀した。


『僕の名前はリュアティスです。エリスレルアさん』


「リュアティス?」


 うなずくリュアティス。


『ユアテスさんじゃなく? って、あ、そうか。

 ホントはもっと長い名前だった!』


 エリスレルアが興奮気味になり、リュアティスの頭にキーンと響いた。

 それでも今までの頭痛に比べれば全然大したことはない。


『僕は、リュアティス・ラディサリスと言います。

 この国の―――』


 王子とは言わないほうがいいかな。


『学生です』

『私はエリスレルア! ルイエルト星から来ました!』


 ルイエルト星? 地球じゃなく?

 ルイエルト星って、地球の別名とか?


『どうやってここへ来たのですか?』

『テレポートして!』


 てれぽーと?


『てれぽーととは?』

『んっと~……瞬間移動です』


 瞬間移動!?

 そんなことが……できるのか?


 肩から斜めがけしているカバンから彼女が何か取り出した。


『この石がすごくエネルギーがあって、これがあると、結構飛べるの!

 なくても飛べなくもないけど、エネルギーがたくさんいるの。

 これの粒で牧草地に飛んだら男の人がいて、その人が何しゃべってるのかわからなかったから、ユアテス…リュアティスさんもそうなのかなって思って―――あ。

 おにいさまが怒ってるー!

 思って、それで来てみただけなの!

 じゃ、またねー!』


 えっ?


 ベッドに座って石を握ったままの手を振り、エリスレルアは消えた。


 えぇぇっ!?


 取り残されたリュアティスはしばらくそのまま呆然としていた。

 が。


 フッ……フフフッ


「ハハハハハッ!」


 すぐ傍で『会話』したためか、朝食後だというのにかなりの疲労を感じる。

 それでもなんだか笑いたくなり、笑いながらベッドへ倒れこんだ。


「すごい……なんだかすごい女の子だ」


 けれど、それ故、危うくも感じる。


「危ういのは……僕の体力のほうって気もするけど」


 ノックする音がして自分を呼ぶ侍女の声が聞こえたが、リュアティスはそのまま眠ってしまった。


 しばらくしてネスアロフが寝室の扉をノックし、声をかけたが返事がない。

 そっとドアを開けて中へ入るとリュアティスは掛け布団の上に横たわっていた。


「殿下、この季節とはいえ、お風邪を召されますよ」


 予備の掛け布団を掛けながらそう言って顔を覗き込むと、リュアティスは幸せそうな笑みを浮かべていた。


 頼まれた地図をサイドテーブルに置いて、ネスアロフは部屋を出た。

 ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


 次回予告〔現地の人〕

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