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星の姫、世界を渡る~王子の願いと虹色の奇跡  作者: 香名斗星南
第2章 コンタクト

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23/203

23 結晶石

 朝食後、エリスレルアたちはガイコツ墜落現場までやってきた。

 大きな四角い石が転がったり積み重なったりしている。


「よし、じゃあ、この遺跡に入ってみよう」

「オォー♪」

「まず、入り口を探さないとな」

「入り口ね!」


 目を閉じて探す。


「あった! ここここ! この奥!」


 指さしながら駆け寄る。

 おにいさまが石の様子をうかがって、こっちを見た。


「これと、これと、奥のあれとあれなら、取り除いても崩れないかな。

 石を外に移動させてくれ。僕は念のためほかが崩れないようにしてるから」

「はーい」


 おにいさまが指定した石を外に移動させながら進んでいくと、石畳の先の瓦礫の向こうに大きな四角い穴が開いていた。

 近づいて中を覗くと階段があって、その先は真っ暗だ。


「変なガスが溜まっていたら嫌だから、ゆっくり進もう」

「うん!」


 ワクワクしながらうなずいたら、何故かおにいさまがすごく嫌そうな顔をした。


 筒状になっている土の壁に沿ってグルグル下に向かって続いている坂道を下りていく。壁に左手を添えながら前を歩いていたレミアシウスがエリスレルアを振り返った。


「結構崩れてるところがあるから気をつけろよ」

「うん! ……わっ!」


 ズササーーーッ!


 注意された直後にエリスレルアは崩れていたところに足を取られ、1周分下の道まで滑り落ちてしまった。


「大丈夫か!?」

「イタタ……大丈夫。

 おにいさま、追い抜いちゃった!」

「…足を踏み外して落ちてるのになんでうれしそうなんだよ……そこで待ってろ」

「せっかく追い抜いたのにー」


 まあいいか。


 おにいさまを待ってると、なんか、けむたくなってきた。


「ケホケホッ! なんか、空気が、けむいー。 ケホッ」


 私のところまで来たおにいさまもせき込み始めた。


「……毒ガスっぽいな…ゴホゴホ……しかも、これ、結構猛毒じゃ…ゴホッ」

「どうして毒ガスがこんなところに? コホッ」

「毒キノコとかいっぱいあったろ?

 ゴホゴホッ…あの関係じゃないかな。

 『あなた方なら』っていうのは、これか」

「あなた方?」

「結晶の話、幽霊さんに聞いたって言ったろ?

 その幽霊さんがさ。

 僕たちなら無事に手に入れられると思う的なことを言ってたんだよ。

 こんな猛毒、もし地球人だったら一瞬で死んでる」

「なるほ……どホッ!」


 確かにけむいだけなんだけど……けむいのも嫌だ!


 私は、私たちの周りの空気から毒を弾き飛ばした。


「サンキュー」

「どういたしましてー」


 やっぱり、空気は清々しいほうがいいよね!


   ☆

   ☆

   ☆


 一番下まで行くと、水が溜まった暗い広場の真ん中辺に、ぼんやりと光っている大きな塊があった。


 結晶ってあれかな?


 おにいさまが水面に手のひらを当てて目を閉じる。


「深さは30センチくらいで一定だから歩いていけそうだけど」

「凍らせる?」

「そうだな。そのほうが濡れずに済むし」

「任せて!」


 温めるのは加減が難しく、溶かしてしまったり爆発させてしまったりするエリスレルアだが、凍らせるほうは比較的得意だった。

 高温には上限がなく、低温には限界があるからだ。


 手をかざして水を凍らせたエリスレルアは、その上を塊まで駆けて行った。


「すごーい! ね、おにいさま!」

「うん。思ってたより何倍も大きい」


 一番外側は透明で内に行くほど白さが濃くなっている結晶石の周りをレミアシウスが一周する。


「直径が大体10メートル、高さが15メートルってところかな。

 端っこのほうを少しだけもらっていこう」

「少しでいいの?」

「これだけ純度の高いエネルギーの結晶なら、牧草地のほうへテレポートするくらい、少しで充分だろ」

「そっかー」


 言いながら端っこのとがってたところをコンって叩いたら、そこが砕けた。


「わっ」

「あ、こら!」


 おにいさまが慌てて塊の様子をうかがい、ホッと息をつく。


「よかった……どうやらほかにひびが入ったりはしてないみたいだ。

 これ、昔の王様が作った結晶で、これが上にいる人たちの力になってるのかもしれないんだから、気をつけろよ」


 えへへ。


「王様、ごめんなさい」


 (謝るなら上にいる人たちに、じゃないのか?)と思いながらレミアシウスは氷の上に落ちた結晶の欠片を拾って自分のショルダーバッグに入れていく。

 それを見て、エリスレルアも肩がけしているポシェットに拾えるだけ拾って入れていった。

 小さな粒も残さず拾い終わるとレミアシウスが声をかけた。


「そろそろ上に戻るか」

「うん!」


   ☆

   ☆

   ☆


 地上に戻ると、空気がサワサワしていた。


 私のお腹が空かないように『力』をくれていたっておにいさまが言ってた、見えない人たちかな!


〈『力』を分けてくれて、ありがとう!〉


 お礼を言ったら、優しい虹色の風が辺りに広がって空気が煌めいた。


「じゃ、ちょっと実験してみよう。

 牧草地までなら、この小さな一粒だけで充分だと思う。

 僕が先に行くから、お前は僕のところを目指すんだ。

 (先にエリスレルアが飛ぶと、どこ行くかわかんないからな……)」

「はーい」


 レミアシウスの姿が消え、その少しあとにエリスレルアの姿が島から消えた。


 ☆ ☆ ☆


「到着ー!」


 今回は行き先がすぐ近くだったので、ちゃんとおにいさまのすぐ傍に到着できた。


「ハァハァ……僕は、一粒じゃギリギリだった…ハア

 けど、一応、実験は成功かな」


 おおー!


「じゃあ、これで、行ったり来たりできるね!」

「できるけど、何があるかわからないから、無駄遣いはしないように!

 ここは、未知の世界なんだから。

 食べ物がすぐ見つかるかどうかもわからないんだぞ?」


 そうだった。


「島に戻る?」

「……あそこの食べ物、ほぼ毒入りだからなぁ……あれ?」


 辺りを見渡していたおにいさまが、止まった。


「小屋が、直ってる」

「小屋?」


 あ、おにいさまが墜落した?


「この牧草地の管理者が直したんだろうな……謝らないと」


 その時、小屋から人が出てきた。


 あの人が直した人?


「こんにちは!」

「あの、すみません、ここの牧草地の関係者の方ですか?」


 私は挨拶をして、おにいさまが話しかけたけど、男の人は目をぱちくりした。


「△#@□?」


 え?


「※@□▽#@△#%□○※□■※○」


 ???

 何言ってるのか、全然わかんない。


「言葉が通じないのか」

「え、どうして?」

「ここは僕たちがいた世界じゃないって言ったろ?」


 そうだった。


「あれ? でも、ユアテスさんとは話せたよ?」

「それはテレパシーでの会話だからだよ。心の『声』だから話せたんだ」


「@□○※#@△#∞※*▲□△▽※#@□○」


 何か言いながら、男の人は困ったような笑みを浮かべた。


「じゃあ、テレパシーで話せばいいのね!」

「待てーー!

 お前が話しかけるとたぶん気絶するから僕が話すよ」


 そういうとおにいさまは男の人と話し始めた。


 えーー


 とは思ったけど、仕方ないか~とも思った。

 ユアテスさんもよく気を失ってるみたいだし。


 あれ?

 じゃあ、ユアテスさんも、いつもはあの、何言ってるかわかんない言葉をしゃべってるんだろうか?


 何か聞かれたようだったから答えたし、暇だったから話しかけてみたし、レミアシウスとしゃべっているだけではつまらないから話したいな、とは思っていたがそれだけで、それほどリュアティスのことを気に留めていたわけではなかったエリスレルアだったが、何を言っているのかわからない人物に出会ったことで、急に興味がわいてきた。

 で、この世界に来る前に見えた場面を思い出した。


 墜落したレミアシウスおにいさま、叫んでいるセルネシウスおにいさま、ベッドで寝ている知らない人。


 ―――もしかして、あの人が、ユアテスさん?


 そういえばおにいさまが「ユアテスさん、どこにいるんだろう?」って言ってたな。


 ポシェットの中の結晶を見る。


 これ使ったら、どこにいるのか、わかるかも!


 遠いところにいるとして、2粒取り出し、左手の手のひらに乗せて握った。

 目を閉じて集中していく。


 ユアテスさん、ユアテスさん、どこー?


「いたーー!」

「えっ?」


 ユアテスさんはどこかの寝室にいた!


「ちょっと行ってみてくるね!」

「えっ!? ちょっ! エリスレルア!!」


 私はテレポートした。

 次回予告〔テレポート〕

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