14 ゲンバケンショー
草原には草しかないのは見てすぐわかるので、二人は山の中を歩いてみた。
エリスレルアはまるで木々と遊んでいるかのようにくるくると動き回り、レミアシウスは使えそうなものがないか探しながら行く。
二人は1時間くらいかけて南側の斜面を大体3分の1くらい進んでいた。
ここまでの山の海側は削れた断崖になっていて、食べられそうな物はなかった。
「キノコと木の実しかないねー」
「キノコは毒キノコだったけどな」
「毒キノコは、食べたら眠くなるけど、パワーはたくさんもらえるよ?」
眠くなるのは無意識のうちに解毒に『力』を使っているからだ。
食べた物は全てエネルギーに変わるとはいえ、毒キノコだとわかっていて食べる勇気は、レミアシウスにはない。
「もう少し食べやすい物があるといいのになぁ。
このままだとただエネルギーを得るだけになりそうだ」
レミアシウスは小腹が空いてきて、何か食べたいなと思い始めていたのだ。
そういえば、昨日遊園地に行く前に朝食を取っただけで、あとはジュースを飲んだだけだった。
アイスは食べ損ねたし。
食べなくても周りにある自然からエネルギーを得ることで回復してくるのはくるのだけど、なんの不満も言わずに動き回っているエリスレルアに疑問がわく。
ヤブヘビになるかもしれないと思いながらも聞かずにはいられなかった。
「お前さ、お腹空いてないのか?」
「ん? 空いてない」
「なんで? いつもならとっくにお腹空いたーって騒いでるだろ?」
ちょっとだけ考えるそぶりを見せるエリスレルア。
「なんかこの島、すごくパワーが溢れててね。
空いたかなーってなると、なんかお腹いっぱいになるの」
「何それ……って、じゃあ、ちゃんと認識して飛べば海に落ちないで僕がいたほうへ来れたってこと?」
「私もそんな気がしたから、周りから『力』を集めて飛ぼうとしたの。
そしたら、消えるから行かないでって言われたからやめた」
「えっ、誰に? ここ、誰かいるのか?」
「さあ?」
「さあって、行かないでって言われたんだろ?」
「言われたけど、『声』が聞こえただけだもん。
最初から消えてるのに消えるって何って思った」
ま、まさか、ホントに幽霊とか!?
言ってることが把握しきれず、レミアシウスが混乱していると、エリスレルアが叫んだ。
「あ! そうそう、ちょうどあそこの辺りだよー!
ガイコツのバラバラ死体!」
そう叫ぶと、エリスレルアは山を下って草原へ走り出た。
「え、そんなの、僕は見たくな―――聞いてないし」
仕方なくあとを追いながらエリスレルアの短い髪がなびいているのを見て、レミアシウスはもう一つ疑問があったことを思い出した。
こっちの世界に来たのはエリスレルアの飛び先間違いだってにいさんは考えていたけど、たぶん、それは正しいと僕も思うけど、いくら壁に穴が開いてたって、あの髪の長さで次元なんて越えられるんだろうか?
それができるなら、僕だって穴さえ開いていれば越えられることになる。
でも、そんなことできるわけないという変な確信がレミアシウスにはあった。
それは単純に、エネルギー不足な気がするからだ。
あの時、ここは別の星じゃないのかと聞いたレミアシウスに、彼女は、いくらなんでもこの長さでは別の星に行くのは無理だと反論した。
ほかの星に行くのが無理なのに別の次元には行けるということは、他星より異次元のほうが行きやすいということになるのではないか、ということが引っかかっているのだ。
そういうものなんだと言われれば、そうですかって言うしかないんだけど。
「あれ?」
大きな石の柱っぽいものがゴロゴロ転がっている辺りで、エリスレルアがウロウロ何かを探し始めた。
「あれー???」
「どうしたんだー?」
「ガイコツの死体がいなくなってるー!」
「なんだってー?」
って、何か、いろいろ間違っていないか?
ガイコツの死体って時点でおかしいし、100歩譲って、死体がどうやっていなくなるんだっていう話だ。
エリスレルアのところまで走ってきたレミアシウスも辺りを探してみたが、ひとかけらの骨も見当たらない。
「夢でも見たんじゃないのか?」
「お昼に夢なんて見ないよ!」
そう言うと、エリスレルアは現場検証を始めた。
「ここら辺で、おにいさまがいないのに気付いて、隠れてるのかなって探してー。
どこかに落としたのかもって思ってテレパシー発信したら何かが落ちてきたの。
チョークがないから、草で×をしよう」
彼女が手をかざすと、そこの草がバツ印に刈られた。
「でも、おにいさまのほうが大事だからおにいさま探しに集中してたら、おにいさまの『声』が聞こえたから、見つけたって思って。
で、テレポートしようとしたら行かないでっていうから……じゃあ、走っていこうって、なって。
走り出そうとしたら踏みそうになって、避けて転んだんだもん!」
「……ほとんどお前の行動検証になってるぞ……」
確かに転んだような形跡があるけど、酸性雨が降ったわけでもないのに骨が一晩で溶けるとは思えないしなぁ。
大体、ちょっと酸性雨が降ったくらいで骨が全部溶けるなんてことはないし。
もしそんな強酸が降ったら、草も無事じゃすまないだろうし。
ウロウロ探していたエリスレルアが立ち止まった。
「いないなぁ。
でもホントに落ちてきて……そうだ!
もう一回やってみよう!」
「え」
エリスレルアの周りに風が巻き起こり、辺りの空気が虹色に輝きだす。
「いや、同じように叫んだからって落ちてくるとは―――」
『レミアシウスおにいさまーー!!』
なんで僕……お!?
エリスレルアが全方向へ向かってテレパシーを発信すると、何もなかった空中にガイコツが現れ、それが落ちてきた。そしてそれは地面に当たってバラバラになったのだ。
「ホントにガイコツが落ちてきた!」
どういう仕掛けだ?
ガイコツに近寄ってみると、頭から足の先までの骨が散らばっていて、確かにこれはガイコツのバラバラ死体だなとレミアシウスが思った時。
『私、エリスレルア!』
「は?」
『ここは……どこだろ? おにいさま、ここ、どこ?』
「知らないよ。どこかの島。てか、お前、今、誰かとしゃべってる?」
『しゃべってる!
……てた。聞こえなくなってた』
なんだってーーー!?
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次回予告〔唯一の手掛かり〕




