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星の姫、世界を渡る~王子の願いと虹色の奇跡  作者: 香名斗星南
第3章 少しずつ

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101/203

101 実験と体験

 夕飯を食べ終わってエリスレルアが部屋でのんびりしていると、リンシェルアの『声』がした。


『エリスレルアちゃん、リンシェルアです。

 準備ができたわよ。

 リュアティスに伝えてくれるかしら?』

『はーい!

 リュアティスさん、リンシェルアがOKって!』

『OK。

 では、徐々に魔力を高めながらチャレンジするから、そう母上に伝えて』

『はーい!

 リンシェルア、リュアティスさんが徐々に高めながらやるから待っててって!』

『わかったわ』


 ソファに座り、レミアシウスが置いてくれたジュースを手に取る。


「上手くいくかな~?

 いくといいな~

 手伝おうかな!」

「お前は何もしちゃダメ」


 ブー!


 ―――数分後―――


『エリスレルア。

 ちゃんと母上の部屋に着けたよ。

 迎えに来てくれる?』


 おお!


『わかった!』


 ガラスコップをテーブルに置き、エリスレルアは立ち上がった。


「おにいさま! 上手くいったみたい!

 迎えに行ってくるね!」


 返事も待たずにエリスレルアはテレポートした。


「いってら……おーい!」


 エリスレルアが出現してみると、リンシェルアの部屋は真っ暗だった。


「あれ? リュアティスさん?」


 私、部屋を間違えたのかな?


「リンシェルア、どこー?」


 その時、エリスレルアの身体が背後から誰かに抱きすくめられた。

 耳元で何かささやかれ、まばゆい光が直撃する。


 !?


 突然のことで混乱している彼女の胸に優しい『声』と圧倒的な光が届く。


『好きだよ』


 近距離とはいえテレポートしてきたばかりで逃げ出せず、エリスレルアはこの前リンシェルアに聞いた方法をやってみることにした。

 受け止めきれない光を、送ってきた相手に返したのだ。


「うわっ!!」


 エリスレルアの背後から声がして光の直撃を受けた人の身体が光り輝き、彼女を抱きしめている腕が少し緩んだが、再びギュッと抱きしめられた。


〈〈〈……好きなんだ……〉〉〉


 送り返された光の塊は、たくさんの光の粒に変えられて部屋に満ち、耐えきれなくなった窓ガラスが割れて外へ散っていった。


 部屋には元の暗闇と静寂が訪れる。


 ……えっと……


 ドサッ


「え?」


 エリスレルアを抱きしめていた人の力が抜け、床に倒れた。


『リュアティスさん?』


 エリスレルアが虹色に輝き、部屋の明かりが全てついた。

 振り返って下を見ると、リュアティスが倒れていた。


「リュアティス!

 リュアティス、大丈夫?」

「え……えぇ……なんとか……」

「よかった……」


 リュアティスが上体を起こし、ホッとしたエリスレルアは、その反動か、身体が熱くなってきた。


「びっくりした、でしょ!

 真っ暗で、急に眩しくて!」

「ごめん。

 ちょっと驚かそうと思っただけだったんだけど」


  『好きだよ』


 思い出すだけで身体が熱くなってきて、私も好きだと言いたかったけど、言おうとするとますます熱くなり、言えない。


 おかしい。

 腹が立った時とかに身体が熱くなることはあるけれど、好きは楽しい気持ちのはずなのに。

 なのに、なんで熱くなる?


「寒いよりはいいけど!」

「は?」


 エリスレルアの唐突な発言に、ぽかんとするリュアティス。


 あ、でも、好きでも熱いこともあるかも。

 「これって、ずっと食べたかったお菓子だ! キャーッ!」とかだと、心がウキウキしてきて熱くなるもん!


 でも、リュアティスさん、お菓子じゃない……けど……


「リュアティス、私は、ずっと食べたかったお菓子と一緒?」

「え!」

「あれ?」


 これだと、リュアティスさんが食べたかったお菓子と私が一緒って言ってるみたいに聞こえる。


「違う。

 リュアティス、私がずっと食べたかったお菓子と一緒?」

「何が?」

「リュアティスが!」


 クスクス笑いながら、ソファの影からリンシェルアが姿を見せた。


「エリスレルアちゃん、リュアティスの入る位置を変えればいいのよ」


 位置……


「私がずっと食べたかったリュアティスがお菓子と一緒?」

「ええ!?」


 真っ赤になるリュアティスを見て、微笑むリンシェルア。


「惜しい! もう少しあとかしら」

「私がずっと食べたかったお菓子とリュアティスが一緒?」

「正解!」

「あ~~なんだ、そういうことか……」


 なぜかひどくがっかりしているリュアティスに、エリスレルアは少し焦った。


『だって、私も好きって言おうと思ったら熱くなっちゃって、おかしいから、リュアティスさんはずっと食べたかったお菓子かなって思ったんだもん!』

「……え……」

「あら~」


 あれ?


『何か、おかしかった?』

「すこ~~し待っててねー、エリスレルアちゃん」


 ひそひそ話を始める二人。


「好きって言ったわよね?」

「でも、お菓子と一緒ですよ?」

「ただのお菓子じゃないじゃない。

 ずっと食べたかったお菓子よ?」

「お菓子に変わりないと思いますが……」

「ポイントは、熱くなった、じゃないかしら?」


「「うーん」」


「あの……リンシェルア?」

「協議の結果、嫌疑不十分で、もう少し様子をうかがうことになったわ」

「???」


 意味がわからず考え込んだエリスレルアを優しく見つめたあと、リンシェルアは割れた窓ガラスに目を向けた。


「それにしてもすごかったわねー!

 窓ガラス、全部交換ね」

「申し訳ありません。

 これほど強烈だとは、正直、思っていませんでした」

「窓ガラスだけで済んだだけマシよ。

 あなたが温度調節した小さな粒に変えていなかったら、大爆発していてもおかしくなかったわ」

「僕もまさか、あの技術がこんなことに使えるとは思っていませんでした」


 あ!


「リンシェルア、ごめんなさい!」

「あなたは謝らなくていいのよ。

 悪いのはリュアティスなんだから。

 ね、リュアティス」

「はい」


 少しだけ言いにくそうにリュアティスは口を開いた。


「エリスレルアの気持ちを感じてみたかったんだ」

「私の気持ち?」

「うん。眩しいってよく言うでしょ?

 それがどれくらいのものなのかなって。

 まさか、あんなに眩しいなんて思いもしていなかった。

 体験しておいてよかったと思う」

「リュアティス……」


 優しい光が胸に届く。


「やっぱり、熱いより優しいほうが気持ちいい!」


 にっこり笑ったエリスレルアに、二人は顔を見合わせ、リュアティスがボソッとつぶやいた。


「母上のおっしゃったとおり、ポイントは『熱い』のようです」

「『眩しい』よりはわかりやすくなったじゃない」

「そうですね」

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