表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神殺しの後日談  作者: 雑魚宮
第四章 派閥
27/37

アンサンブル

「はい、お茶です。狭いですけど寛いで下さいね」

「あざます」


 背が高い関西訛りの先輩からお茶を受け取り、慇懃にも帝斗が頭を下げた。僕と人形ヶ原さんはそれに倣い、竜胆はマイペースにお茶を口に含んだ。


『いやぁ、新入生がいっぱいでめでたいですね。心逆くんを誘ったかいがありました』

「か、仮天。さ、最重要事項からめ、目を逸らすな」


 遠い目をした仮天先輩に、即座に神経質そうな先輩が突っ込む。


「こ、心逆くん。ま、まずき、君に礼を言う。来てくれたことと、か、代えがたい才能を持った、友人を連れてきてくれたことに、か、感謝する」


 彼の言葉に、僕は素直に驚く。もう既に、帝斗たちが異能ではない、更に特異なものを持っていることを察しているとは。考えるまでもなく、この人が、【似た者同士(アンサンブル)】の頭脳か。


「そ、それで、だ。き、君は久豆里の言葉が、わ、分かるのか?」


 そして、そんな彼も理解できていないという、久豆里先輩の言語。


「僕としては、普通の言語にしか聞こえないんですが、ええと―」

「ふ、不浄共鳴だ」

「不浄先輩たちはどんな風に聞こえているんですか?」


 その問いに答えたのは仮天先輩だった。


『およそ、意味を為した言葉には聞こえませんね。ランダムに単語を羅列したような感じです』


 不浄先輩と関西訛りの先輩、落葉松梵天先輩も同意するように頷いた。


「私たちも同じく」


 人形ヶ原さんたちもそれに続いた。


「にゃは、だから言ったじゃん。君以外、誰も私の話を理解できないんだよ」


 僕の膝の上で寝転んだ久豆里先輩がそう言うと、理解できなかったんだろう1年組は困惑した表情を見せた。


『しかし、随分と懐かれましたね』


 仮天先輩がそんな久豆里先輩に呆れたような視線を向ける。


「ですが、気持ちはわかりますよ。初めて出来た、彼女の理解者なのですから」


 梵天先輩が嗜めるように言った。

 僕も、彼の意見に賛同する。自分の言葉を誰も理解してくれない状況、それがどれだけ苦痛かは想像も出来ないほどの苦痛だろう。彼女ほどではないが、僕も師匠たちに出会うまでは似たような境遇だったから、少しくらいはその気持ちが理解できる。


「それじゃあ、そろそろ本題に」

『ええ、そうですね』


 梵天先輩が促すと、仮天先輩が後を繋いだ。


『単刀直入に言います。皆さん、私の下に付きませんか?』


 ドヤ顔で言い放った仮天さんの言葉に、帝斗はポカンと、竜胆と人形ヶ原さんは首を傾げた。


『……ん?あれ?伝わりませんでした?あれ?あれ?』

「嫌まあ、伝わっちゃいるんですが、先輩の下に付くってことの意味が」

『あ!そっか!そうでした!そうですよね!こほん、それでは説明しましょう』


 一旦おろおろした仮天先輩だったが、おずおずと言った帝斗の言葉で、調子を取り戻し意気揚々と続けた。


『正直、うちの学校って決して安全地帯じゃないんですよね。先週の襲撃もそうですし、校内でも頭のネジが外れたヤバいのがうろうろしてます。そういう時、まあ生徒会の連中とか風紀委員が助けてはくれますが、生徒会は例の二人以外は別に戦闘に長けてる訳じゃないので彼らのほうが危機に陥ることもありますし、風紀委員はヤバイ奴の集まりでもあります。そもそも風紀委員長がその筆頭ですし』


 風紀委員長、久尾さんか。襲撃の際に曼荼羅さんが喧嘩売られてたと聞いたけど、やっぱりそういう類の人か。

 ああ、それと後に知ったが、久尾さんは二年留年してるらしい。寝宮みたいなやつでも進級してるのに、何をやったら留年できるんだ。


『それで重要になるのが、後ろ盾の存在です。誰が危険とか、どこが危険とか、今どうすべきとか、いろんな情報をあなた達に提供できます。その代わり、あなた達にも出来るだけの協力はしてもらいます。言わば、互助関係ですね』

「なるほど」


 帝斗が神妙な顔をして思案する中、竜胆は全く心惹かれて無さそうだった。興味ないと、無言の無表情貫くからなあ、あの娘。


『あ、後、休日とか皆で遊んだりしますよ。遊園地とかも行きますよ。ランドとかシーとか』

「……良いね、心惹かれた」


 やぶれかぶれみたいな感じで言った仮天先輩の言葉に、思いの外竜胆が食い付いた。僕も結構楽しみだ。


「まあ、情報面はともかく、戦力としては最弱だけどねウチは。不浄くんは完全に裏方だし、落葉松くんはぶっちゃけ雑魚。仮天は前線に出たがらないし、戦えるの私くらいなんだよね」


 久豆里先輩の頭を撫でながら仮天先輩の話を聞いていると、久豆里先輩が口を開いた。


「久豆里先輩はなんでここに入ろうと思ったんですか?」

「敬語じゃなくて良いよぉ」


 久豆里先輩に問うと、先輩がそう言うからお言葉に甘えることにした。


「ここに入った理由かあ、仮天の人柄じゃない?」

「それは分かる気がする、天然系なのにカリスマ性あるよね」

「ね、何か魅力あるよね。まーでも正直、一生くんにも誘われてたから迷ったんだけどね」


 久豆里さんの話を聞いていると、気になる名前が出てきたので問い返す。


「一生って、副会長の?」

「うん、幼なじみ。というか、同郷でさ」

「へぇ、同郷」

「そ、まあ私改造人間でさあ、研究所?研究施設?みたいなところにいたんだよね」

「改造人間」


 僕も余り聞いたことがないワードに、ちょっと驚く。


「そうそう。反論坂先生いるじゃん?あの人も同郷の改造人間」

「ああ、あの人は何となく見た目で分かるかも」


 滅茶苦茶サイボーグみたいな見た目してる先生だ。


『心逆くん、少しいいですか?』

「あ、はい、どうしました?」


 久豆里さんとお話していると、とことこと仮天先輩が向かってきた。


『これから模擬戦を行いたいんですが、大丈夫ですか?』

「はい勿論。ていうか、元々やる予定でしたし」

『ありがとうございます。しかし、どうしましょうか。加賀さんと十二単さんも戦える人材でしょう?』


 ああ成る程、予定外の戦闘員が増えたからどうするか迷っているのか。


「それなら、三人一辺にお相手しますよ」


 それなら話は簡単だ。全員相手にすれば、その分全員の実力を見せる事ができる。


『え、マジですか?嫌まあ、あなたが良ければいいんですが、本当に大丈夫ですか?』

「ええ勿論」


 そこで僕は立ち上がった。模擬戦を直ぐにでも始めるために。そして、三人に宣戦布告をするために。


「それくらい魅せなければ、僕がいる意味はない」


 その程度の実力がなければ、今まで拳を磨いてきた意味がない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ