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神殺しの後日談  作者: 雑魚宮
第三章 敵襲
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凪裏明白

「【純愛剣(プラトニック)】!」


 九郎の時は盾として利用したが、本来は剣を掃射する異能、広範囲に攻撃を飛ばし限りない程の弾数で敵を圧倒する物だ。この掃射は、夢や黒でさえも徒手空拳では防ぎ切ることはできない。


「化け物が」


 しかし、この凪裏明白という男は平気でそれを可能とする。手にナイフを一本持っているとは言え、普通は防ぎきれないはずだ。当たり前だが、この男は普通ではない。


「うん、視た通りだからね」

「ならこれを喰らえ」


 蹴り、と同時に【純愛剣】で足に剣を付属させる。はっきり言って、不細工が過ぎる練度の技だが、凪裏は防ぎきれずかすり傷をつける。

 【運命視】という異能は強力だが、必ずしも絶対ではない。【運命視】は所詮、一番可能性の高い運命しか見えていない。つまり、可能性が低い手を打てば打つほど、凪裏にとっては想定外の一手になるわけだ。が、これには弱点がある。

 何度も蹴りを続けていくと、凪裏にも慣れが生じ完璧に防がれる。

 結局、凪裏も人外の域に達している一人だ。不慣れな、付け焼き刃の一撃など、慣れれば直ぐに対応されるし、そもそも付け焼き刃の一撃が致命傷を与えることはない。


「しかし、対応が早いね。冷泉に拾われたからかな?」

「黙れよ、クソ野郎」


 挑発している、訳でもないんだろう自然体な発言が、頭に来る。が、その指摘は事実だ。

 俺は凪裏と対戦した経験は殆ど無い。なのに、何故直ぐに対応出来たかと言えば、彼と同種の能力は俺の直ぐ側にあったから。

 冷泉師匠、俺を拾ってくれた彼は【過去視】という過去を見通す能力を持っていた。似て非なるものではあるが、少なくとも戦いにおいては似たようなものだ。こちらの攻撃を見通してくる相手には予想外の手札を使うしか無い。だから、俺にとってはこいつの相手はそう難しいことではない。勝てるかはともかくとして。


「それよりも、あんた。そんな防戦一方でいいのか?あれが夢と黒に勝てるとでも思ってんのかよ」

「思わないね。もし、勝っていたらこの目ごと差し出しても良い」


 だろうな。あのレベルであの二人に勝てるなら苦労はしない。それが満身創痍の二人であっても。余りにもあっさり答えたから、ブラフとも思わん。

 しかし、なら何故防戦を選んだ?時間稼ぎ?その目的は?これよりも厄介な敵が入り込んでいる?


「ああ、別に時間稼ぎとかじゃない。そこは安心してくれていいよ」


 安心できるはずもない。胡乱げな視線を向けていると、凪裏はこう続けた。


「そうだな、僕の目的は、囮かな?」

「囮?」


 何の、というかそれは実質的に時間稼ぎと同義じゃないのか。

 嫌待て、凪裏は恐らく、この襲撃の首魁じゃない。かみさまは言っていた。襲撃の首謀者と相対する日がいつか来ると。明日来る首謀者を、いつかと形容するだろうか?しなくはないだろうが、そもそもかみさまの要求はその首謀者の思惑を阻止することだ。そこを曖昧にする理由はない。

 

「てめえらの首魁から目を逸らさせるため、か」

「そこまで考えてはいないよ、【運命視】がそうした方がいいと言うからそうしただけでね」

「師匠もその理論で殺したのか?」


 【管理局】を裏切ったのも。まるで、【運命視】の奴隷だな。


「……ああ、そうだね。そうだよ。彼が生存したままだと、犠牲者が増える恐れがあったからね」

「良い言い訳だな。責任から逃れられるってのはいい気分だろ」

「嫌われ役も辛いものだけどね」

「ほざけ!」


 俺は怒りのままに、【純愛剣】に【不止杖(シンゼアル)】を重ね合わせる。決して止まることのない【純愛剣】を限界量で打ち放つ。絶対にここで殺す。


「凄いね。けど、ああ、残念だけどここまでだ」


 凪裏の目前に扉が開いた。その扉は俺の【純愛剣】を全て飲み込み、虚空へと消えた。

 魔法?【集会】の魔法使い並の芸当を引き起こした奴は一体何者だ!?


「せ、先生。お疲れ様」

「ありがとう、ミスティア」


 現れたのは少女。俺らと同じか、少し下くらいに見えるその少女は、実に容易そうにまた扉を生み出した。


「待て!」

「また、会う機会はあるさ。その時は本気で相手をしよう」


 俺は咄嗟に『杯』を取り出し、叫ぶも、既に凪裏たちの姿は消えていた。

 もう少し、早く取り出せていれば、なんて考えてから、


(使えるはずもないだろ)


 手に取った『杯』を見て、思い直した。

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