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神殺しの後日談  作者: 雑魚宮
第三章 敵襲
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仮天真

最初からくり抜いていれば幸せだったろうにね。

『昨日ぶりですね、心逆くん』

「確か、仮天先輩」


 昼食を終え校舎まで戻ると、校門の前に彼女が待っていた。


「うんうん、予想通り。めっちゃ強いじゃんこの子」


 その横には彼女よりも小柄な少女、その子は僕を見て愉快そうに笑った。


「知り合い?」

「知り合い、と言っても、昨日ちょっと話したくらいだけど」


 十二単さんの問いに答えながら、彼女たちに先に行ってもらう様に促す。


『彼らも良いですねえ』

「何か、用ですか?」


 彼女らの背中を眺めながら恍惚とした表情を浮かべた仮天さんに、少しだけ警戒して問う。梶谷先輩の言葉、というよりも自分の直感から。昨日の天然ぶりを目の当たりにしても、やはりこの人から漂う慮外の匂いは無視できない。


『いえ、用という程のことではないのですが、見かけましたので』


 あっさりと、ばればれの嘘を言ってのける彼女に、呆れと感心を覚える。


『ですが、良い機会ではありますね。単刀直入に言いましょう。貴方、私の下に付きませんか?』

「……」


 彼女の予想外の誘いに、少しだけ沈黙する。

 言っている意味は分かる。奇特な人だとは思うが。だから、問い返しはしない。


「生憎、力にはなれませんね」

『何故?』


 随分と、踏み込んでくれる。が、話は早い。


「今は自分のことで手一杯ですから。他人に力を貸す余力はありません」

『……ああ、嘘つきなんですね、貴方』


 真摯に返答したつもりだった僕の言葉は、そんな彼女の指摘によって容易く流された。


「は?」


 だから、そんな呆けた声を上げてしまう。嘘つき?どこから、そんな言葉が出てきたんだ?


『しかも、自覚なし。救えませんね』

「あの、どういう意味ですか?」


 思わず、聞いた僕に、笑みを向けて彼女は答えた。


『自らの才能を振るうことを恐れている。いえ、もっと正確に言うなら、自分の欠損を認めていない』


 揚々と語る彼女、その言葉に思い至ることがある僕は、ただ押し黙って続きを聞く。


『才能とは言わば、欠損。欠けたが故に、鋭角になった点こそが人を輝かせる。なんて、受け売りですが、中々に賛同できる表現だと思いますよ』

「余計なお世話ですね。出会って間もない貴女に、僕を語られる謂れはない」


 彼女の発言は些か、嫌大分極論めいた物だとは思ったが、先程よりもより自分のことを指しているかのようで、苛立ちを覚えた。


『ええ、そうですね。顔を合わせたのも僅か、ですが案外貴方のことは知ってるつもりですよ?』


 悪戯っぽく言う、彼女を僕はどこか空恐ろしく思った。そしてそれは、杞憂ではなく。


『心逆夢、16歳。父親の影響で、六歳の頃から元【管理局】NO.5破虎に師事。NO.8【人類最強】近衛司、NO.5【三代目虎】黒虎との親交はこの頃から、兄弟弟子にあたるのですかね?実力はNO.10七ツ星はてなは言わずもがな、NO.7【龍血】ユンスを凌ぎ、近衛司や黒虎とほぼ同等。三代目の名が貴方に与えられていた可能性も非常に高い』


 無論、NO.5の座も。続けた彼女に、僕は実感を伴った恐怖を覚えた。

 情報を握られているというのは、どうにもいい気分ではない。


『昨年の【征服者】の一件では黒虎を差し置いて、他のナンバー持ちと共に前線に立っていたらしいですね。そして、その戦いで師匠が戦死した時も間近にいた。師匠の死を看取らずに、後方でのうのうとしていた兄弟子に怒りがあるのでは?』

「は、はははははは!」


 したり顔で問うた彼女に、思わず、大きな声で笑ってしまった。流石に、僕の心まで理解できているわけではないらしいと知って。


「仮天さん。あんた、それは的外れだ」

『え?』

「僕が黒に怒りを覚えている?そんなことがある訳がない。あいつがいてくれたから、僕は人間になれたのに。あいつのおかげで僕は、立つことが出来たのに。そんなことより、むしろ、ずっと、僕は、黒に謝らなくちゃ、って?」


 感情のままに僕は、黒についての心情を吐露して、気づいた。


「あ、そっか」


 こんな、ことをしている場合じゃ、なかった。早く、黒に伝えなきゃ。早く、黒と、話をしなきゃ。


「ありがとうございました、仮天先輩。貴女のおかげで、ようやく思い出せた」

『は、はい?それは、良かったんです、が』


 僕が礼を言うと、仮天先輩はイマイチ状況を理解できていないようで、歯切れの悪い返事がきた。


「あははははははは!仮天ってほんと面白い!」


 そんな先輩の様子を見て、隣の少女が腹を抱えて笑っている。なんか、申し訳ないな。


「さっきの誘い、まだ有効でしたら、今日の放課後にでも返答させてください」


 それの罪滅ぼしというわけでもないが、彼女が束ねる面々には興味が湧いた。これだけ僕の情報を集めた主にも、そしてそこの少女の実力にも。


『……!ええ、もちろん有効です。是非、前向きに検討してください!』


 心底嬉しそうに何度も頷く仮天さんに、少しだけ罪悪感を覚えながら僕はオリエンテーションへ向かった。

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