秋の二重奏(又は二重螺旋)
きみは優しい人だから 恨むことなど辛すぎて
芒の原に、ただひとり わたしの「きみ」を野辺おくり
夕日の赤で、焼き尽くす
秋が実りの時ならば 実らぬ枝には、火をつけて
燃やすことこそ似つかわし
きみは綺麗な人だから 汚すことなど辛すぎて
月の下にて、ただひとり わたしの「愛」を凍らせて
降りくる星で、うち砕く
秋が想いの時ならば 無限螺旋を我が胸の
きみに向かいて降りるだけ
きみは明日の人だから 捕らえる「いま」の辛すぎて
いばらの蔓に、ただひとり わたしは「我」を閉じ込めて
虚ろとなりて、蹲る
秋を終わりとするならば 終わらぬものを胸のうち
閉じ込めて、ただ、去るばかり