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解体戦士スパイナー  作者: 船上机
第2話 ヒーローの精神
8/57

2-4*

再び、戦場。修行を終えた直後にハグルマダークから呼び出しを受けたコウジは、北部開発エリアの採石場へと出向いていた。眼前で待ち構えるは、多数のネジーを従えたハグルマダークの姿。


「ギギギギギ!勝ち目もないのによく戻ってきたなスパイナーよ。今度こそお前の最後だ!」

「ハグルマダーク、倒されるのは貴様の方だ!」

「いいだろう。お望み通り地獄に送ってやる!」

合図と共に、ネジー達がコウジに一斉に襲いかかる。少し遅れて多数のミニギアが上空に放たれ、時間差で彼を襲撃しようとしていた。


「マインド・イン!」

即座にスパイナーへと変身したコウジは、洗練された動きでネジーの攻撃を躱し、カウンターでアームを叩きつけていく。次々と吹き飛ばされていくネジー達。間髪入れず、大量のミニギアが弾幕となって彼の頭上に降り注ぐ。しかし、スパイナーは近くに残っていたネジー達を空中にカチ上げ、即席のバリアを作った。

「「ネジジー!」」


ネジーとミニギアが激突し、次々と爆発を起こす。スパイナーは静かにそれを見届け、ハグルマダークに向き直る。

「これで終わりか?」

「ギギ、少しは頭を冷やしたようだな。だが、これを見ても冷静でいられるかな?」


ハグルマダークが合図すると、戦いに参加していなかったネジー達が岩陰から出てくる。そして、彼らに肩を掴まれ連行されているのは、やはりシャインシティ中学校の制服を着た少女だった。スパイナーの怒りを煽るため、卑怯にも先程の少女、ひいては彼の妹と同じ年代の市民を人質にしたのである。


「ギギギギ!さあスパイナーよ、こいつがどうなってもいいのかな?」

ハグルマダークは右手の巨大歯車をギュンギュンと回転させながら言い放つ。

奴の挑発に乗っては駄目だ。冷静に、心を落ち着かせるんだ。怪人を睨みつけながら、コウジは自分に何度も言い聞かせる。修行で身に付けたことを思い出せ。理性と感情は切り離すべし。しかし今の状況では、冷静になったところで……


怒りを見せる代わりに動きを止めてしまったスパイナーを、ハグルマダークは嘲笑う。

「ギギギ!こいつを殺すのは簡単だが、まずはお前から痛めつけてやる!これでも食らえっ!」

スパイナーに向けて再び、数発のミニギアが放たれる。最初の数発はスパナアームで弾き飛ばすも、次から次へと続く歯車弾幕には対処しきれず、スパイナーはその場に倒れ込む。ミニギアの回転も相まって、彼の周囲で砂が巻き上げられ、戦場の視界を奪う。


「くそ、また砂か!だがこれで奴は……何!?」

視界が晴れた後、戦場を確認したハグルマダークは驚愕する。スパイナーが倒れた場所に、彼はいなかった。では、一体どこに……?

「ここだ!」


スパイナーはハグルマダークの横側、ネジー達と少女の間に立っていた。彼が叫ぶと同時に、ネジー達はバタバタと事件に崩れ落ちていく。彼らの額には、漏れなくミニギアが突き刺さっている。

そう、スパイナーは最初のミニギアを正確にネジー達に当たるよう打ち返し、その後わざと地面に倒れ込んで砂を起こして視界を奪い、その隙に少女を救出すべく移動していたのである。感情に流されず、戦況を冷静に観察した上での適切な判断。まさしく今の彼は、パワーのコントロールを完璧なまでに成し遂げていた!


少女を敵のいない方角に逃した後、スパイナーは一気に敵との距離を詰める。スパナアームを振り上げる姿を見てハグルマダークは油断なく身構えるが、スパイナーは敵の眼前で停止し、アームを地面に向けて振り下ろした。スパナによって巻き上げられた砂塵がハグルマダークを襲う。

「な、何ぃ!?」

「あの時、どうして風が吹いただけで貴様の挙動がおかしくなったのか、ずっと不思議に思っていた。だが、修行のおかげで気付いたんだ。風と一緒に飛んできたゴミか何かが、歯車に挟まったんじゃないかってな。貴様はミニギアを存分に飛ばすためにこの場所を選んだんだろうが、完全に墓穴だったな!」

今やハグルマダークの上半身にある歯車には、至る所に砂が挟まっていた。怪人は力を込めてギアを動かそうとするも、一つも回転させることができない!

「ギギ、ス、スパイナァー!」


「その野望、ここで解体する!」

スパイナーは叫び、スパナアームを、そして自らを回転させ、ハグルマダークの心臓部へ狙いを定める!

「スパイラルブレイク!」

ギアを動かせないハグルマダークはスパナの一撃をまともに食らい、エネルギーコアは砕け散った。

「ギギ〜!い、命の回転が、止まる……」


そう言い残し、ハグルマダークは爆散した。


スパイナーは背後に爆風を感じながらスパナアームを降ろす。今回も手強い敵だった。だが戦闘を通して、博士の語るような本物のヒーローの精神に一歩近付けた筈だ。ダークフォースを倒すため、これからも研鑽を積まなければ。夕焼けの中、コウジは決意を新たにするのだった。



一方、シャインシティ某所。ハグルマダークの爆発は、ダークフォース基地内でもモニターを通じて3人の幹部達に観察されていた。

「なーんだよハグルマの奴。少しはやるかと思ってたのにな」

落胆を隠そうとせず、破壊闘士がその場を去っていく。それを微笑しながら見送る参謀。そして、沈黙を貫く守護騎士。

「ある意味当然の結果ですねぇ。さて、守護騎士殿はどうします?」

再び問いかけを黙殺するかと思われた守護騎士だったが、今回は珍しく口を開いた。

「貴様に聞かれるまでもない。奴は私が始末する」





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