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解体戦士スパイナー  作者: 船上机
プロローグ
1/57

最終決戦 メテオリオンVSダークフォース

 人類社会の裏で暗躍し、機械による世界掌握を企む秘密結社「ダークフォース」。その本拠地である巨大地下建造物の廊下を、駆け抜けていく人影の姿があった。その男の名は流星戦士メテオリオン。ダークフォースの魔の手から、平和なシャインシティをたった1人で守り続けていた彼は、遂に敵の本拠地の場所を突き止め、正面突破を強行したのである。


 事前情報通り、重大な任務とやらで一部の幹部は不在で、警備は手薄になっていた。だが、それを差し引いてもここまで来るのは決して楽な道のりではなかった。特に、直前の部屋で戦ったあの幹部、確か「破壊闘士」という称号を持っていたが、今までの機械怪人とは比較にならない実力者だった。先ほどの戦闘で負った傷は、まだ回復している訳ではない。だが、彼には休息している時間など無かった。ダークフォースを壊滅させる千載一遇のチャンス。この機を逃さず、基地の最奥部まで一気に駆け抜ける!


 両側の扉から飛び出てくる戦闘員共を片手間に蹴散らしつつ、彼は通路を全速力で疾走する。通路の端が近付いても速度を緩めず、その勢いで突き当たりの扉を蹴り飛ばし、とうとう彼は目的の部屋に到達する。


 本拠地の心臓部に位置する大広間。その最奥に佇む巨大な玉座に君臨していた人影が、彼の到着と同時に立ち上がった。

 仁王像を思わせる巨大な黒色の素体に鈍色の甲冑、円盤状の肩当てとマント。遠くからでも押し潰されそうなほどの威圧感を放つその男こそ、この広間の主にしてダークフォースの首領、ハルマ将軍その人であった。


「メテオリオンか」

「ハルマ将軍……!」

「たった一人でここまで辿り着いたことは褒めてやろう。だが、生きて帰れるとは思っていまいな?」

「お前を倒せばダークフォースは崩壊したも同然。お前たちの悪行もここまでだ!」

「そうだな、これまで数多くの同胞が貴様に葬られてきた。だがそれも今日で終わりだ。今ここで、私が直接貴様を叩き潰す」


 英雄と将軍、対峙する二人の人影。__僅かな静寂の後、二つの影は激突し、最終決戦が幕を開けた。



 戦いの口火を切ったのはメテオリオンだった。一瞬で将軍との間合いを詰め、高く跳び上がると、メテオエナジーを宿した右腕から高速の拳を叩き込む。これこそが彼の得意技、「メテオナックル」だ。

 流星の如き一撃は甲冑の肩当て部分にクリーンヒットするが、将軍は微動だにしない。それどころか、その巨体からは想像もつかないほどの俊敏な動きで上体を動かし、戦士に向かって掌を突き出した。

「!!」

 空中のメテオリオンが防御姿勢を取るのと、掌から衝撃波が放たれるのはほぼ同時だった。防御姿勢のおかげで衝撃波の直撃は免れたが、避けきれなかった余波を受けて彼は上方に吹き飛ばされる。だが、あの攻撃をいなすにはこの方法しかない。そう、ハルマ将軍の奥義「ハルマプレッシャー」の直撃を受ければ、彼といえども後方に吹き飛び、壁に激突してそのまま押し潰されるであろう。恐ろしい力だが、まともに受けなければ勝機はある。メテオリオンは空中で姿勢を制御し、天井を蹴って再度将軍に跳びかかる。


 ハルマ将軍の衝撃波を避けながら、高速で拳を放ち続けるメテオリオン。その拳を受け流しつつ衝撃波を乱発するハルマ将軍。二人の戦闘は、常人どころか他の機械怪人でさえも殆ど視認できない程、高次元なステージに達していた。


 宇宙嵐の中を駆け巡る流星群を思わせる神速の応酬は、意外にも短時間で終焉を迎える事となる。何十発も打ち合う内、メテオリオンは相手の挙動が僅かに変わったことを鋭く見抜いていた。恐らく、別の奥義の準備動作に入ろうとしている。ハルマプレッシャーの対処で精一杯なのに、更なる大技など受けたら敗北必至だ。撃たれる前に速攻でケリを付けなければ。そのためには、どうすればいい?__今までに何十発のメテオナックルを受けても無傷の様子を見せる将軍の甲冑。だが、何度も同じ場所に被弾するうち、その表面に僅かなヒビが入り始めたのをメテオリオンは見逃さなかった。

 意を決して彼は将軍の懐深くに飛び込み、衝撃波が来るまでの僅かな時間、全身全霊をかけて流星拳を連打する!


「食らえっ!「メテオレイン」!!」

 小惑星をも破壊する流星の連撃は、とうとう鈍色の岩盤を貫通し、将軍の躯体内へと届く。ダークフォース怪人の心臓部に存在するエネルギーコア。メテオリオンの拳は、確かにそのコアへと強烈な一撃を突き立てていた。


 直後、真横からハルマプレッシャーをまともに受け、彼は広間の反対側へ吹き飛ばされる。

「ば、馬鹿な……」

 衝撃波を直撃させることに成功した将軍だったが、残念ながら一手遅かった。ヒビ割れたコアから迸るエネルギーが全身を駆け巡り、瞬く間に熱暴走を引き起こす。

「おのれ、おのれメテオリオォォン……!」

 ハルマ将軍は雄叫びと共に爆風に呑まれていった。


 メテオリオンは、壁の向こうで静かにその咆哮を聞き届けていた。ハルマプレッシャーは確かに直撃したものの、一瞬早くコアを破壊したことでその威力は僅かに減衰していたらしい。加えて激突した壁が薄かった事もあり、奇跡的にメテオリオンは圧殺を免れていた。とはいえ、残念ながら彼に、再び立ち上がるだけの力は残されていなかった。電算室として使われていたらしい、ケーブルだらけの小部屋の床に横たわるメテオリオン。しかし、ハルマ将軍の最期を聞き届けた彼の心は大きな安堵感に包まれていた。相打ちとはいえ、ダークフォース最大の脅威を排除することに成功したのだから。


 唯一の懸念は、シャインシティを守る者が不在になることだ。彼の意志を引き継ぎ、ダークフォースの残党と戦う者はまだ見つかっていない。とはいえ、メテオリオンには奥の手があった。残った力を振り絞り、最後のメテオエナジーを上空へと飛ばす。小さな尾を引きながら闇を切り裂き、闇の彼方に遠ざかっていく光の球。あの光が、彼の遺志を引き継ぐ者をきっと見つけだしてくれるだろう。


「…………メテオスプラウト!……シャインシティを……頼んだぞ……」

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