同調
RPG通貨と言えば金貨、ゴールドなどと呼ばれる事が多い。
本来のRPGであればモンスターを倒した際に一定量の金貨を得る事ができるのだか、リアリティを追求したこのゲームではいくらウサギを倒しても金貨を得る事はできない。
ならば、ウサギ以上に価値のある物。
牛の肉ならばどうだろうか、ウサギが存在するようにこの世界の動物は現実世界に存在する物が多い。
ウサギ肉の単価は日本だと1羽辺り3000〜5000円、1/4カット1000円...半身で2000円と言った所か。
大抵のゲームの買取金額は販売価格の半額だろうから、今から2羽食べるとして、18羽だと36000円か...日本円で計算すると6人分の宿泊費にはギリギリと言ったとこか。
「マッキーどうした。」
「足りない。」
「は?」
牛1頭の価格は和牛で100〜60万、一部ブランドで400万以上の値が付く物もある...しかしアメリカなどの大量生産国では1頭辺り10万円以下で取引されている。
初期マップという事もあり、下手したら買取が1頭5万円以下になる可能性もある。
それに都合良く牛がその辺りを散歩してるとも限らない...。
「お前どんだけウサギ食うつもりだよ。」
「ちげーよ、おそらくこのウサギ18羽では6人分の宿泊費は持って1日だ。」
「マジか。」
他に単価の高い肉となると、豚は3〜4万...ブランド肉でもそう高くはならない。
馬肉は...確かに日本では高額だが、大して期待はできそうにないな。
ウサギのようなジビエ系の物は食用としては珍しく値段が付きづらい、まあ町の相場を見てからじゃないと詳しくはわからないか。
「これ食ったら1度アライパで情報収集かな...太陽の位置から推測するに今は午前10時か11時頃だと思う。」
俺は先程から空を見ながら太陽の位置、移動する方角を見ていた。
「へー、そんなんわかるんか。」
山塚...脳みそまで筋肉なお前には無理だろうが。
「涼介、このウサギ達を運びたいんだけど涼介の能力で何とかならないか?」
「そーだな...針金なら出せるぞ。」
「察しが良くて助かる。」
「針金なんか出してどーすんだ?」
「針金...あー理解した。」
「なら俺は木の枝取ってくる。」
山塚以外は理解したらしく、寛人は木へ向かうと太めの枝を何本か持ってくる。
涼介が針金を能力で出現させると、がっちくんがウサギの足を木の枝に括り付けた。
「そういう事か!」
山塚がやっと気付いたらしい。
そしてがっちくんの手伝いを始めたようだ。
「馬鹿やろ、それじゃ落ちるだろ!」
「あ、すまん!」
相変わらずの筋肉バカだな......。
さて...矢藤の奴はというと。
「もう食えるかな?」
「まだはえーよ。」
焼いてるウサギ肉の前でジロジロとその様子を見ていた、さっきまでへたり込んでた奴が元気な事。
まあ、彼の生き甲斐は美少女ゲームと食事だからな。
「そーいえばマッキー、このスマホ色々調べたンゴ。」
「ほう、収穫は?」
「まずクエスト、これは女の子達を強化するアイテムが手に入るンゴ。」
「へえー完全にスマホゲーだな。」
「ちなみにさっき初期キャラの女の子が手に入ったンゴ。」
矢藤が育成画面を開くとカナエと書かれた女の子が部屋で寛いでいた。
「あれ、召喚するにはガチャをしないといけないって言ってなかったか?」
「育成を押した時に無料ガチャでこのキャラが貰えたンゴ...ただレアリティも低くて性能も弱そうだし使えそうにないンゴ。」
「まあ初期キャラだしな。」
彼女は名前の横にCと書かれていた、おそらくCランクという意味だろう。
「そんな事ないよ!?」
「へ?」
「私、ニロリンの為に頑張るから...だから捨てないで!」
「おっまじか...。」
まるで俺達の会話を聞いていたかのように、画面に向かって走ってきたカナエが涙目で見ている。
「カナエさん初めまして。」
「あら?...あなたはマスターのお友達ですか?」
「そうですよ。」
「へえー結構かっこいいですね、マスターとは大違いです。」
この子さりげなくすっごい失礼な事言ってるぞ。
「ンゴ...。」
「あっ!マスター落ち込まないでください!?...私のマスターはニロリンだけですからっ!」
「てか、カナエさんにはこっちの状況が見えてるの?」
「あっ...はい!」
「へーなら、最初はぐー...。」
「ジャンケンポン。」
「ジャンケン、パー!...あらら負けちゃいました。」
俺がチョキを出したとちゃんと認識できている。
どうやら本当に見えているらしい...これもうゲームというよりビデオ通話だな。
......何て神ゲーだ羨ましい。
...ん?
そーいや俺の能力で矢藤の能力をコピーできたな。
3分間だけって縛りがあったけど、使ってみるか...。
確か発動条件はその本人に触れる事だ。
俺は矢藤の肩に触れると、全身から青色のオーラが湧き出す。
「ちょ、マッキーどうしたンゴ!?」
「いやちょっとな。」
そして俺は矢藤の能力である"プロデューサー"に3分間だけ変身する事に成功した。